10 / 32
第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
10.世界一嫌いな旦那様
しおりを挟む
「女王様、国王陛下がお呼びです。ご安心下さい。私も、騎士団長も女王様の味方です。必ず、貴女様をお守り致します」
「ありがとう。宰相が貴方で良かったわ」
「……ありがたき……幸せっ……!」
なんで泣くのよ。最近、宰相も使用人達も騎士も文官も、みんなやたらとわたくしに好意的なのよね。
あんなに警戒したり、意地悪しようとしてた宰相は何処へ消えてしまったのかしら。ま、今の方がやりやすくて良いけど。
……まさか、これって精神操作の魔法? 魅了ってやつ?! わたくし、知らぬ間に魔法を習得したのかしら。
あー鏡の呆れ顔が浮かんだわ。
そんな訳ないわよね。魔法はいつの間にか覚えられたなんて甘いモノじゃない。文字通り血を吐く思いで練習する必要がある。精神操作系の魔法は理論もややこしいし、チャレンジはしたけど諦めた。師匠は人を操るくらいなら壊すっていう人だから習えなかったしね。
師匠に白雪は会わせられないわ。白雪が気に入られたら困る。
しまったわ……! 白雪は美しいんだから守りを固めないといけなかったのに! 狙われるかもしれないなんて考えてなかったわ! 王子を監視してる場合じゃないわ。早急に白雪を守る防護魔法を開発しないと。師匠からも守れる強固な防護魔法の開発が必要よ!
そんな風に白雪の事ばかり考えていたら、目の前の夫の存在を忘れていた。宰相の変わりっぷりに引いてる気がするんだけど、大丈夫かしら?
「……結婚式以来だな……」
「お久しぶりです。国王陛下」
わたくしの発言に、夫も宰相も騎士団長も驚いている。夫婦なのに、役職で呼ぶって事は夫を拒否してる証だもの。宰相や騎士団長はドヤ顔だ。
だから言っただろう。明らかにお前が悪いって目で国王を見てる。すっかりわたくしの味方になってくれたわね。結婚したばかりの時は、2人ともわたくしを警戒していたのに。
「今後は私が仕事をする。今までご苦労だったな。その……女王」
オドオドしている夫を見て気が付いた。この人、わたくしの名を覚えてないんだわ。
「宰相は優秀ですし、騎士達も使用人達もわたくしを助けてくれます。無理をなさらず、今まで通り亡き奥様を偲んでお過ごし下さいませ。フリッツ様」
「……うっ……! そ、そんな訳にはいかない……! いつまでも仕事を放置するなんて……」
「2年も放置しておいて今更では? 宰相はストレスで身体に支障をきたしておりましたのよ? それでも貴方は何もしなかった。わたくしに仕事を任せたのも、信頼していたからではなく都合が良かっただけ。面倒だっただけでしょう?」
「それは……」
「あらあら。国王陛下はまだ本調子ではなさそうですね。この程度の嫌味が返せないのによく仕事をするなんて仰いましたわね」
「君は国の実権を握りたいのか? 私が、邪魔なのか」
失言ね。宰相と騎士団長が殺気立ってるのが分かる。
「実権なんて要りません。今はわたくしがやるのが適任だからやっているだけです。フリッツ様に与えられたもので手放したくないものはひとつだけです」
「……私の愛……か……」
はぁー?
部屋の空気が凍る。
宰相は怒りでプルプル震えてるし、騎士団長は主人である筈の国王を睨みつけている。
わたくしは溜息をひとつ吐き、言った。
「貴方の愛なんて要りません。大体、わたくしを愛してなどおられないでしょう。わたくしの名前も知らないのですから。結婚式で目も合わさず、お会いするのは本日で3回目。そんなクズの愛など要りません。わたくしが欲しいのは、可愛い白雪を養育する権利だけです。貴方の愛は、娘の白雪に与えてくださいませ。言っておきますけど、わたくしはフリッツ様が白雪を放置した事を許しておりません。貴方の事は、国中、いや、世界中で一番嫌いです」
「ありがとう。宰相が貴方で良かったわ」
「……ありがたき……幸せっ……!」
なんで泣くのよ。最近、宰相も使用人達も騎士も文官も、みんなやたらとわたくしに好意的なのよね。
あんなに警戒したり、意地悪しようとしてた宰相は何処へ消えてしまったのかしら。ま、今の方がやりやすくて良いけど。
……まさか、これって精神操作の魔法? 魅了ってやつ?! わたくし、知らぬ間に魔法を習得したのかしら。
あー鏡の呆れ顔が浮かんだわ。
そんな訳ないわよね。魔法はいつの間にか覚えられたなんて甘いモノじゃない。文字通り血を吐く思いで練習する必要がある。精神操作系の魔法は理論もややこしいし、チャレンジはしたけど諦めた。師匠は人を操るくらいなら壊すっていう人だから習えなかったしね。
師匠に白雪は会わせられないわ。白雪が気に入られたら困る。
しまったわ……! 白雪は美しいんだから守りを固めないといけなかったのに! 狙われるかもしれないなんて考えてなかったわ! 王子を監視してる場合じゃないわ。早急に白雪を守る防護魔法を開発しないと。師匠からも守れる強固な防護魔法の開発が必要よ!
そんな風に白雪の事ばかり考えていたら、目の前の夫の存在を忘れていた。宰相の変わりっぷりに引いてる気がするんだけど、大丈夫かしら?
「……結婚式以来だな……」
「お久しぶりです。国王陛下」
わたくしの発言に、夫も宰相も騎士団長も驚いている。夫婦なのに、役職で呼ぶって事は夫を拒否してる証だもの。宰相や騎士団長はドヤ顔だ。
だから言っただろう。明らかにお前が悪いって目で国王を見てる。すっかりわたくしの味方になってくれたわね。結婚したばかりの時は、2人ともわたくしを警戒していたのに。
「今後は私が仕事をする。今までご苦労だったな。その……女王」
オドオドしている夫を見て気が付いた。この人、わたくしの名を覚えてないんだわ。
「宰相は優秀ですし、騎士達も使用人達もわたくしを助けてくれます。無理をなさらず、今まで通り亡き奥様を偲んでお過ごし下さいませ。フリッツ様」
「……うっ……! そ、そんな訳にはいかない……! いつまでも仕事を放置するなんて……」
「2年も放置しておいて今更では? 宰相はストレスで身体に支障をきたしておりましたのよ? それでも貴方は何もしなかった。わたくしに仕事を任せたのも、信頼していたからではなく都合が良かっただけ。面倒だっただけでしょう?」
「それは……」
「あらあら。国王陛下はまだ本調子ではなさそうですね。この程度の嫌味が返せないのによく仕事をするなんて仰いましたわね」
「君は国の実権を握りたいのか? 私が、邪魔なのか」
失言ね。宰相と騎士団長が殺気立ってるのが分かる。
「実権なんて要りません。今はわたくしがやるのが適任だからやっているだけです。フリッツ様に与えられたもので手放したくないものはひとつだけです」
「……私の愛……か……」
はぁー?
部屋の空気が凍る。
宰相は怒りでプルプル震えてるし、騎士団長は主人である筈の国王を睨みつけている。
わたくしは溜息をひとつ吐き、言った。
「貴方の愛なんて要りません。大体、わたくしを愛してなどおられないでしょう。わたくしの名前も知らないのですから。結婚式で目も合わさず、お会いするのは本日で3回目。そんなクズの愛など要りません。わたくしが欲しいのは、可愛い白雪を養育する権利だけです。貴方の愛は、娘の白雪に与えてくださいませ。言っておきますけど、わたくしはフリッツ様が白雪を放置した事を許しておりません。貴方の事は、国中、いや、世界中で一番嫌いです」
7
お気に入りに追加
284
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
推しの兄を助けたら、なぜかヤンデレ執着化しました
群青みどり
恋愛
伯爵令嬢のメアリーは高熱でうなされている時に前世の記憶を思い出し、好きだった小説のヒロインに転生していると気づく。
しかしその小説は恋愛が主軸ではなく、家族が殺されて闇堕ちし、復讐に燃える推しが主人公のダークファンタジー小説だった。
闇堕ちしない推しと真っ当な恋愛を楽しむため、推しの家族を必ず救うと決意する。
家族殺害の危機を回避するために奮闘する日々を送っていると、推しの兄であるカシスと関わるようになる。
カシスは両親殺害の濡れ衣を着せられ処刑される運命で、何より推しが心から慕う相手。
必ず生きてもらわねば……! と強く願うメアリーはカシスと仲良くなり、さらには協力者となる。
「(推しの闇落ちを防ぐために)カシス様には幸せに生き続けて欲しいのです」
メアリーはカシス相手に勘違い発言を連発する中、ついに推しの家族を守ることに成功する。
ようやく推しとの明るい恋愛を楽しめると思っていたが、何やらカシスの様子がおかしくなり──
「君は弟を手に入れるため、俺に近づいて利用しようとしていたんだね」
「俺に愛されて可哀想に」
これは推しと恋愛するため奮闘していた少女が、気づけば推しの兄の重い愛に囚われてしまったお話。
転生不憫令嬢は自重しない~愛を知らない令嬢の異世界生活
リョンコ
恋愛
シュタイザー侯爵家の長女『ストロベリー・ディ・シュタイザー』の人生は幼少期から波乱万丈であった。
銀髪&碧眼色の父、金髪&翠眼色の母、両親の色彩を受け継いだ、金髪&碧眼色の実兄。
そんな侯爵家に産まれた待望の長女は、ミルキーピンクの髪の毛にパープルゴールドの眼。
両親どちらにもない色彩だった為、母は不貞を疑われるのを恐れ、産まれたばかりの娘を敷地内の旧侯爵邸へ隔離し、下働きメイドの娘(ハニーブロンドヘア&ヘーゼルアイ)を実娘として育てる事にした。
一方、本当の実娘『ストロベリー』は、産まれたばかりなのに泣きもせず、暴れたりもせず、無表情で一点を見詰めたまま微動だにしなかった……。
そんな赤ん坊の胸中は(クッソババアだな。あれが実母とかやばくね?パパンは何処よ?家庭を顧みないダメ親父か?ヘイゴッド、転生先が悪魔の住処ってこれ如何に?私に恨みでもあるんですか!?)だった。
そして泣きもせず、暴れたりもせず、ずっと無表情だった『ストロベリー』の第一声は、「おぎゃー」でも「うにゃー」でもなく、「くっそはりゃへった……」だった。
その声は、空が茜色に染まってきた頃に薄暗い部屋の中で静かに木霊した……。
※この小説は剣と魔法の世界&乙女ゲームを模した世界なので、バトル有り恋愛有りのファンタジー小説になります。
※ギリギリR15を攻めます。
※残酷描写有りなので苦手な方は注意して下さい。
※主人公は気が強く喧嘩っ早いし口が悪いです。
※色々な加護持ちだけど、平凡なチートです。
※他転生者も登場します。
※毎日1話ずつ更新する予定です。ゆるゆると進みます。
皆様のお気に入り登録やエールをお待ちしております。
※なろう小説でも掲載しています☆
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる