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第三章 再婚
6.王族同士【クリス視点1】
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キャシィとの婚姻が発表され、お披露目と式を終えるまで一週間。あっという間の出来事だった。王族としては異例だが、帝国の王妃であるジェニファー様が妹の晴れ姿を見たいと言ったので急いで式が行われる事になった。
式はしたくないと言っていたキャシィも、嬉しそうに微笑んでいたし、ドレス姿はとても可愛く美しかった。
俺はまだまだだな。キャシィが式をしたくないと言ったのは、本心ではなかったんだ。おそらく、俺が目立つのは好きじゃないと言ったせいだ。そんなつもりじゃなかったのに……もっとキャシィと本心で会話すべきだった。
俺がキャシィのドレス姿を見たいと言えば、喜んで式をしたいと言ってくれた。急拵えの式だったが、大勢の国民が祝福してくれた。まさか俺が王族に婿入りする事になるとは思わなかったが、キャシィを守れるなら面倒な地位も受け入れよう。あっという間に名実ともにキャシィの夫となったわけだが……正直言って毎日とても幸せだ。妻と子が可愛くて仕方ない。
俺は王族になり騎士を辞めた。キャシィが不安そうにしていたが、キャシィを守れるなら騎士の仕事に未練はない。王族になれば、キャシィの抱えている重荷を分け合う事もできる。それは、誇りを持っていた騎士の仕事よりも大事な事だと思えた。
そう言うと、キャシィは不安そうにしていたな。じっくり話し合って納得してくれたが、最後まで俺の負担を気にしていた。やはり、キャシィは少し周りを気にしすぎる傾向があるな。王族としての義務と責務を分かっていたキャシィだったから、あんな男が夫でも黙っていたし文句も言わず耐えていたんだろう。キャシィはビオレッタを守りたいと思った時、強くなれたと笑っていた。これからは俺がいる。彼女の心が迷子にならないよう夫としてしっかり見ておかねば。
ビオレッタはすっかり俺に懐いてくれて、毎日抱きついてくる。うん、可愛い。キャシィがビオレッタを大事にする理由が分かる。
正直、子どもがこんなに可愛いとは知らなかった。
ビオレッタはキャシィが産んだ子ではないが、俺とキャシィの大事な娘だ。明日、ジェニファー様達は出立される。その前に二人で話がしたいとビクター様に頼まれた。
人払いをして、二人だけで話す。なんの話が分からないが、ビクター様は以前会った事がある。身分を隠しておられたが誠実な方だったし、大丈夫だろう。
「やぁクリス、隣に座っても良いかい?」
「もちろんです」
ビクター様と以前会った時の俺は騎士団に客員として迎えられただけだったのだが……何故かビクター様に気に入られて騎士団に正式に入らないかと勧誘された。丁重にお断りして以来お会いした事はなかったのだが、あの時よりも意地悪そうな顔をなさっているな。
あんなデカい国の王族なんだから、腹に色んなもん抱えてるんだろう。
「ねぇクリス。もう立場は対等なんだから、ビクターと呼んで欲しいな」
「そんな……ビクター様に失礼な真似はできません」
「つれないなぁ。前と全く同じ事を言うなんて」
「そんな事、言いましたか?」
「言ったよ。あの頃、僕は騎士団に所属していただろ? だから仲間だし呼び捨てにしてよって言ったら今みたいに断られた。あの時はもっと冷たかったかな」
「……それは……その。大変失礼しました」
あちこちを渡り歩いているうちに、勧誘されるのは当たり前になった。そのうち断るのが面倒になり、勧誘されないように淡々と対応するようになった。出会った時のビクター様は身分を隠していたが、俺は彼が王族だと知っていた。
王族に呼び捨てにしてくれと言われて素直に頷けるか。
ビクター様は笑いながら、ワインを渡してきた。
式はしたくないと言っていたキャシィも、嬉しそうに微笑んでいたし、ドレス姿はとても可愛く美しかった。
俺はまだまだだな。キャシィが式をしたくないと言ったのは、本心ではなかったんだ。おそらく、俺が目立つのは好きじゃないと言ったせいだ。そんなつもりじゃなかったのに……もっとキャシィと本心で会話すべきだった。
俺がキャシィのドレス姿を見たいと言えば、喜んで式をしたいと言ってくれた。急拵えの式だったが、大勢の国民が祝福してくれた。まさか俺が王族に婿入りする事になるとは思わなかったが、キャシィを守れるなら面倒な地位も受け入れよう。あっという間に名実ともにキャシィの夫となったわけだが……正直言って毎日とても幸せだ。妻と子が可愛くて仕方ない。
俺は王族になり騎士を辞めた。キャシィが不安そうにしていたが、キャシィを守れるなら騎士の仕事に未練はない。王族になれば、キャシィの抱えている重荷を分け合う事もできる。それは、誇りを持っていた騎士の仕事よりも大事な事だと思えた。
そう言うと、キャシィは不安そうにしていたな。じっくり話し合って納得してくれたが、最後まで俺の負担を気にしていた。やはり、キャシィは少し周りを気にしすぎる傾向があるな。王族としての義務と責務を分かっていたキャシィだったから、あんな男が夫でも黙っていたし文句も言わず耐えていたんだろう。キャシィはビオレッタを守りたいと思った時、強くなれたと笑っていた。これからは俺がいる。彼女の心が迷子にならないよう夫としてしっかり見ておかねば。
ビオレッタはすっかり俺に懐いてくれて、毎日抱きついてくる。うん、可愛い。キャシィがビオレッタを大事にする理由が分かる。
正直、子どもがこんなに可愛いとは知らなかった。
ビオレッタはキャシィが産んだ子ではないが、俺とキャシィの大事な娘だ。明日、ジェニファー様達は出立される。その前に二人で話がしたいとビクター様に頼まれた。
人払いをして、二人だけで話す。なんの話が分からないが、ビクター様は以前会った事がある。身分を隠しておられたが誠実な方だったし、大丈夫だろう。
「やぁクリス、隣に座っても良いかい?」
「もちろんです」
ビクター様と以前会った時の俺は騎士団に客員として迎えられただけだったのだが……何故かビクター様に気に入られて騎士団に正式に入らないかと勧誘された。丁重にお断りして以来お会いした事はなかったのだが、あの時よりも意地悪そうな顔をなさっているな。
あんなデカい国の王族なんだから、腹に色んなもん抱えてるんだろう。
「ねぇクリス。もう立場は対等なんだから、ビクターと呼んで欲しいな」
「そんな……ビクター様に失礼な真似はできません」
「つれないなぁ。前と全く同じ事を言うなんて」
「そんな事、言いましたか?」
「言ったよ。あの頃、僕は騎士団に所属していただろ? だから仲間だし呼び捨てにしてよって言ったら今みたいに断られた。あの時はもっと冷たかったかな」
「……それは……その。大変失礼しました」
あちこちを渡り歩いているうちに、勧誘されるのは当たり前になった。そのうち断るのが面倒になり、勧誘されないように淡々と対応するようになった。出会った時のビクター様は身分を隠していたが、俺は彼が王族だと知っていた。
王族に呼び捨てにしてくれと言われて素直に頷けるか。
ビクター様は笑いながら、ワインを渡してきた。
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