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第一章 離婚

5.素晴らしい国王(嫌味)

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「いつ側妃を娶ったんだ。私は何も聞いてないぞ」

お父様の声に、頷く王族たち。幼い頃から親しかった王妃様が、涙を流しながらわたくしを抱きしめてくれたり、お母様を慰めていたりする。

側妃を認めている国は少ない。側妃を取るなら正妃の実家に必ずお伺いをたてる。特に、他国の王族と結婚したのなら、実家に何度も相談してようやく側妃を認める。それが我々の世界の常識。王族だけが知る、不文律。

そして、側妃であってもお披露目をするのも常識。

やっぱりあの女は側妃だったのね。あまりに下品だから愛人かとも思っていたんだけど、愛人の子なら王位継承権はない。わざわざわたくしの子と偽る理由がない。

ビオレッタを大事にしないと処刑だと脅していたから、きっと側妃なんだろうと思っていたわ。

会場にいる警備の騎士や貴族達が逃げようとしている。けどね、そんな卑怯な真似、お父様が許すわけないじゃない。

「素晴らしい国王ではないか。さぁ、みんなで存在すら知らなかった側妃殿を讃えよう! みなも、初めて会うのだろう?」

逃げる者たちの足が、止まる。

ここまで言われて、逃げられる訳ないわよねぇ。ここにいるのは、お父様だけじゃない。多くの国の王族がいる。逃げたら、どれだけの国を敵に回す事になると思う?

国王陛下が上手くやる事を祈るしかできない可哀想な貴族の皆様、頑張ってちょうだい。

見覚えのある女性達に、にっこりと微笑むと真っ青な顔で震えだした。あれは、わたくしの侍女なのに世話もせず、見張りだけして笑っていた令嬢達ね。やっぱり、貴族だったのね。

「お父様、あちらの女性達が震えてらっしゃいます。もしかして寒いのかしら?」

「それは良くないな。会場の隅は寒いだろう。どうかこちらへ」

「お母様、ビオレッタをお願い。絶対に、誰にも預けないで」

ビオレッタをお母様に預けて、彼女達を連れて来る。親らしき人が震えて逃げようとしたけど、逃がさない。まとめて連れて来たわ。

もちろん、敵だけを近くに呼ぶつもりはない。親しくしていた王族の皆様も近くに来てもらう。各自が連れて来ていた優秀な護衛もしっかりついてくる。

令嬢達が震えてるけど知らないわ。貴族でしょう。上手く誤魔化してごらんなさい。

「ビオレッタちゃん、お祖母様よ。よろしくね」

お母様は、ビオレッタから離れない。ここから国を出るまで、ビオレッタを多くの人の目に晒す。ごめんなさいビオレッタ、少し頑張ってちょうだい。おむつはさっき変えたし、しばらくは大丈夫だと思うけど……。

「お、お召し物が汚れてしまいます!」

必死でビオレッタを連れて行こうとする男は、宰相ね。結婚式以来だわ。

「五年ぶりですね。宰相様。大丈夫、可愛い孫が服を汚してもお母様は許して下さいますわ。お母様は初めて会えた孫に夢中なの」

「そうよ! 孫が汚すなら大歓迎よ! ……でも、やっぱり心配ね」

お母様が、チラリとわたくしを見る。こんなやりとりも久しぶりね。優しい口調で敵を追い詰めるのは、わたくしの得意技よ。
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