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第一章 離婚
4.お父様の包囲網
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「お父様、お母様、お久しぶりでございます!」
いつものように、当たり障りのない会話をする。夫が隣でにこやかに笑っている。
いつもは少し話すだけ。だけど……今日は違う。
「ああ……この子が……なんて利発そうなの!」
孫を溺愛するお母様に、夫はタジタジになっている。さっさと逃げたそうにしてるけど、格上の妻の実家を蔑ろには出来ない。
「もう! なんで里帰りして来ないの?! ようやく孫が生まれたと思ったのに、全く連絡をくれないじゃないの!」
「申し訳ありませんお母様。ビオレッタの育児に忙しくて」
嘘は、吐いてない。
夫の命令通り、子煩悩な王妃を演じているわ。けどね、わたくしの発言の異常さに気が付いた招待客は引いてるわ。
夫が満足そうに微笑んでいられるのも、今のうちよ。
「まぁっ! 乳母はどうしたの?!」
「今は、乳母がおりませんわ。以前はとても優秀な方が付いていたのですけど……」
夫の顔色が変わった。わたくしを睨みつけても無駄よ。ご覧なさい。お父様の顔が真っ赤に染まっているわ。
「……どういうつもりだ。王妃に乳母をつける事が出来ないほど困窮しているのか? 充分援助はしていたはずだろう?」
ゾッとするようなお父様の声が、会場中に響き渡った。第一王女の生誕祝いは、他国の王族がたくさん招待されている。
その場で援助の事を口にしたお父様。
いつもの優しいお父様ではない。為政者の目をした、冷酷なお父様。ふふ、ずーっと穏やかに笑っているお父様しか知らない夫は固まっているわ。
なんとかしろ、目がそう語ってる。
そうね、なんとかしてあげる。可愛いビオレッタの為だもの。
「わたくしが、自分の手でビオレッタを育てたいと我儘を言ったの。だから、乳母は一人だけで……」
「王族なのに、乳母が一人?! まぁ?! そんなところに娘を嫁がせてしまったの?!」
お母様が、大声で叫ぶ。夫の顔色が、どんどん青ざめていく。
「……国王陛下は、いつもお優しいですわ」
命令通りの言葉を吐く、わたくし。だけどね、笑ってわたくしの腰を抱けるのも今のうちよ。
「そうか、夫婦で育児をする事にしたのだな。王族であっても、自らの手で子を育てたい。素晴らしい考えだ。だから里帰りも許されなかったのだな」
穏やかに微笑むお父様。ホッとする夫。お父様の包囲網が完成した。
「そ! そうなんです! 正妃は育児だけしていれば良いですが、私は仕事もあり……忙しい中ビオレッタの世話をしているんです!」
終わりね。さぁ、馬鹿国王様。自分の発言のミスに気が付いて。
「……正妃、か。では側妃の方は寂しい思いをしておられるだろう?」
「そうなんです! 私が正妃にばかり構うから……可愛い側妃との時間が……」
「そうか! 私は側妃様とお会いした事はない。是非お会いしたい。連れてきてくれ。さぞかしお美しいのだろう?」
友好的なお父様に安心したのか、大喜びで側妃を呼びに行った夫。わたくしを正妃と呼ぶのなら、側妃がいると言外に伝えている事になる。そんな事にも気が付かなかったの?
ほんっと、馬鹿国王ね。
会場は、シーンと静まり返っている。
いつものように、当たり障りのない会話をする。夫が隣でにこやかに笑っている。
いつもは少し話すだけ。だけど……今日は違う。
「ああ……この子が……なんて利発そうなの!」
孫を溺愛するお母様に、夫はタジタジになっている。さっさと逃げたそうにしてるけど、格上の妻の実家を蔑ろには出来ない。
「もう! なんで里帰りして来ないの?! ようやく孫が生まれたと思ったのに、全く連絡をくれないじゃないの!」
「申し訳ありませんお母様。ビオレッタの育児に忙しくて」
嘘は、吐いてない。
夫の命令通り、子煩悩な王妃を演じているわ。けどね、わたくしの発言の異常さに気が付いた招待客は引いてるわ。
夫が満足そうに微笑んでいられるのも、今のうちよ。
「まぁっ! 乳母はどうしたの?!」
「今は、乳母がおりませんわ。以前はとても優秀な方が付いていたのですけど……」
夫の顔色が変わった。わたくしを睨みつけても無駄よ。ご覧なさい。お父様の顔が真っ赤に染まっているわ。
「……どういうつもりだ。王妃に乳母をつける事が出来ないほど困窮しているのか? 充分援助はしていたはずだろう?」
ゾッとするようなお父様の声が、会場中に響き渡った。第一王女の生誕祝いは、他国の王族がたくさん招待されている。
その場で援助の事を口にしたお父様。
いつもの優しいお父様ではない。為政者の目をした、冷酷なお父様。ふふ、ずーっと穏やかに笑っているお父様しか知らない夫は固まっているわ。
なんとかしろ、目がそう語ってる。
そうね、なんとかしてあげる。可愛いビオレッタの為だもの。
「わたくしが、自分の手でビオレッタを育てたいと我儘を言ったの。だから、乳母は一人だけで……」
「王族なのに、乳母が一人?! まぁ?! そんなところに娘を嫁がせてしまったの?!」
お母様が、大声で叫ぶ。夫の顔色が、どんどん青ざめていく。
「……国王陛下は、いつもお優しいですわ」
命令通りの言葉を吐く、わたくし。だけどね、笑ってわたくしの腰を抱けるのも今のうちよ。
「そうか、夫婦で育児をする事にしたのだな。王族であっても、自らの手で子を育てたい。素晴らしい考えだ。だから里帰りも許されなかったのだな」
穏やかに微笑むお父様。ホッとする夫。お父様の包囲網が完成した。
「そ! そうなんです! 正妃は育児だけしていれば良いですが、私は仕事もあり……忙しい中ビオレッタの世話をしているんです!」
終わりね。さぁ、馬鹿国王様。自分の発言のミスに気が付いて。
「……正妃、か。では側妃の方は寂しい思いをしておられるだろう?」
「そうなんです! 私が正妃にばかり構うから……可愛い側妃との時間が……」
「そうか! 私は側妃様とお会いした事はない。是非お会いしたい。連れてきてくれ。さぞかしお美しいのだろう?」
友好的なお父様に安心したのか、大喜びで側妃を呼びに行った夫。わたくしを正妃と呼ぶのなら、側妃がいると言外に伝えている事になる。そんな事にも気が付かなかったの?
ほんっと、馬鹿国王ね。
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