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番外編 誰が兄上壊したの?
第七話
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「やあ、イオス待ってたよ」
「兄上……お待たせしました。話とは何でしょうか?」
「イオスは、僕に何を隠してるんだい?」
「兄上……」
「怒らないから、教えてくれる? 僕を怖がってるよね? それに……イオスはいつから自分の事をオレと呼ぶようになったの? セーラと会ってからだよね。セーラが悪いのかな?」
イオスは、全身が震える事を抑えられなかった。怖がり、泣き、それでも返事をしないイオスに、フォスは悲しそうに言った。
「イオスは、僕の事が嫌い?」
「いいえ! 兄上の事は大好きです!!!」
「……どうやら、嘘ではなさそうだね。なら、どうしてこんなに怯えてるかちゃんと教えてくれる? でないと、イオスの大事な……」
「オレは、未来の記憶があるのです!!!」
フォスの目を見て、セーラに危害が及ぶと感じたイオスは、全てをフォスに話す事にした。イオスにとって何より大事なのはセーラだったから。セーラの記憶がない事にすれば、自分にしか怒りは向かないだろうと考えた。
「未来の記憶?」
「はい、オレは一度イオスとしての人生は終わりました。老人まで生きて、死んだ後に気が付いたら今の自分になっていました。記憶が戻ったのは、初めてセーラと昼寝をしていた時です。夢と言っていた事は、本当はオレが一度体験した事なのです。そこで、母上が亡くなってしまってからは兄上は……オレを殺そうと暗殺者を仕向けたり、毒を仕込んだりしてきました」
「だから……僕に怯えていたの?」
「今の兄上と、私が過去に接した兄上は別人です。それは分かっていたのですが、幼い身体で恐怖を抑えられませんでした」
「以前のイオスは、僕を憎んでいたの?」
「いいえ。ですが降りかかる火の粉は払わせて頂きました」
「殺されかけたのに、僕を憎まなかったの?」
「オレにした事では、特に憎しみは抱きませんでした」
フォスはイオスの言葉を聞き、自分はイオス以外にも何かをしたんだと気が付いた。自分が、弟が泣き、怯える程の事をした。フォスは怖くてたまらなかった。
「僕は……他に何をしたの? イオスの知ってる僕は、未来で何をしたの?!」
フォスは、真っ青な顔でイオスを問い詰めた。そうか、兄上も怯えていたのか。オレが何も言わずに怯えたりするから。
イオスは、兄が愛しくなり、全てを話す覚悟を決めた。
「兄上……、今の兄上は何もしていません。ですが、私が知っている未来では……兄上は……俺を殺そうとして、父上も殺そうとします。それから……」
「それから?! いいから教えてくれ! 僕はどれだけ残虐な事をするんだ?!」
「裏で手を回して、セーラの国を滅ぼします。セーラ以外の王族は全員殺され、セーラは兄上の指示でフランツから暗殺者に仕立てられて……オレを殺そうとします」
「そんな……残酷な事を……僕が……。だから、降りかかる火の粉を払ったと……イオスは、僕がセーラに手を出したから怒ったんだね。それほど、セーラが大事だったのか」
「そうですね。母上が死んで荒れていたオレを助けてくれたのはセーラだけでしたから。父上はオレに無関心でしたし、兄上は毒を盛るわ暗殺者を仕掛けるわ……味方とは思えませんでした」
「僕は……なんて事を……」
「兄上が失言をした事で貴族の支持を失い、オレが皇帝になりました。兄上は、罪を暴かれフランツと共に生涯幽閉されました。フランツと罵り合いながら幽閉されるのは地獄だったでしょう。しょっちゅう怪我をしていたようですし、最後は……。幽閉を命令したのは皇帝になったオレです」
「僕を処刑しなかったの? 僕の罪を考えたら、公開処刑が妥当だよね。その方がイオスの治世は安定した筈だよ」
「そう……ですね。そんな声があったのは事実です。ですが、オレには出来ませんでした。幽閉は、ギリギリの処罰だったのです。フランツも共に幽閉するなら罰になるだろうと認められました」
「兄上……お待たせしました。話とは何でしょうか?」
「イオスは、僕に何を隠してるんだい?」
「兄上……」
「怒らないから、教えてくれる? 僕を怖がってるよね? それに……イオスはいつから自分の事をオレと呼ぶようになったの? セーラと会ってからだよね。セーラが悪いのかな?」
イオスは、全身が震える事を抑えられなかった。怖がり、泣き、それでも返事をしないイオスに、フォスは悲しそうに言った。
「イオスは、僕の事が嫌い?」
「いいえ! 兄上の事は大好きです!!!」
「……どうやら、嘘ではなさそうだね。なら、どうしてこんなに怯えてるかちゃんと教えてくれる? でないと、イオスの大事な……」
「オレは、未来の記憶があるのです!!!」
フォスの目を見て、セーラに危害が及ぶと感じたイオスは、全てをフォスに話す事にした。イオスにとって何より大事なのはセーラだったから。セーラの記憶がない事にすれば、自分にしか怒りは向かないだろうと考えた。
「未来の記憶?」
「はい、オレは一度イオスとしての人生は終わりました。老人まで生きて、死んだ後に気が付いたら今の自分になっていました。記憶が戻ったのは、初めてセーラと昼寝をしていた時です。夢と言っていた事は、本当はオレが一度体験した事なのです。そこで、母上が亡くなってしまってからは兄上は……オレを殺そうと暗殺者を仕向けたり、毒を仕込んだりしてきました」
「だから……僕に怯えていたの?」
「今の兄上と、私が過去に接した兄上は別人です。それは分かっていたのですが、幼い身体で恐怖を抑えられませんでした」
「以前のイオスは、僕を憎んでいたの?」
「いいえ。ですが降りかかる火の粉は払わせて頂きました」
「殺されかけたのに、僕を憎まなかったの?」
「オレにした事では、特に憎しみは抱きませんでした」
フォスはイオスの言葉を聞き、自分はイオス以外にも何かをしたんだと気が付いた。自分が、弟が泣き、怯える程の事をした。フォスは怖くてたまらなかった。
「僕は……他に何をしたの? イオスの知ってる僕は、未来で何をしたの?!」
フォスは、真っ青な顔でイオスを問い詰めた。そうか、兄上も怯えていたのか。オレが何も言わずに怯えたりするから。
イオスは、兄が愛しくなり、全てを話す覚悟を決めた。
「兄上……、今の兄上は何もしていません。ですが、私が知っている未来では……兄上は……俺を殺そうとして、父上も殺そうとします。それから……」
「それから?! いいから教えてくれ! 僕はどれだけ残虐な事をするんだ?!」
「裏で手を回して、セーラの国を滅ぼします。セーラ以外の王族は全員殺され、セーラは兄上の指示でフランツから暗殺者に仕立てられて……オレを殺そうとします」
「そんな……残酷な事を……僕が……。だから、降りかかる火の粉を払ったと……イオスは、僕がセーラに手を出したから怒ったんだね。それほど、セーラが大事だったのか」
「そうですね。母上が死んで荒れていたオレを助けてくれたのはセーラだけでしたから。父上はオレに無関心でしたし、兄上は毒を盛るわ暗殺者を仕掛けるわ……味方とは思えませんでした」
「僕は……なんて事を……」
「兄上が失言をした事で貴族の支持を失い、オレが皇帝になりました。兄上は、罪を暴かれフランツと共に生涯幽閉されました。フランツと罵り合いながら幽閉されるのは地獄だったでしょう。しょっちゅう怪我をしていたようですし、最後は……。幽閉を命令したのは皇帝になったオレです」
「僕を処刑しなかったの? 僕の罪を考えたら、公開処刑が妥当だよね。その方がイオスの治世は安定した筈だよ」
「そう……ですね。そんな声があったのは事実です。ですが、オレには出来ませんでした。幽閉は、ギリギリの処罰だったのです。フランツも共に幽閉するなら罰になるだろうと認められました」
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