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第七話
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「滅んだ原因は分からないけど……、イオスは私を助けようとしてくれてたんでしょう? 私が後宮に行かなくて済んだのもイオスのおかげだって聞いたよ」
「金がないのが問題なだけなら、オレの私財を渡せば済むからな」
「嬉しくてみんなで喜んでたら、内乱が起きてあっという間に城は制圧されたわ。王族しか知らないエリアも、隠し部屋もあっさり見つかってみんな捕まった。私は、フォス様が助けてくれたの。……そう……思ってたの」
「隠し部屋……まさか、幼い頃セーラが内緒だって教えくれた部屋か?!」
「そう、そこ。家族以外は、イオスとフォス様しか知らないし、あっさり見つかったのはイオスが情報を流したからだってフォス様に言われたわ。私財をほとんど提供したのに、すぐ私を差し出さなかったからイオスが怒ったって」
「んな訳あるかよ! あの時は皇帝から視察の仕事が済んだらセーラと婚約出来るって聞いて、必死で仕事してたんだよ。手紙は送ったぜ。返事来ねえから2回送った。1ヶ月しても、音沙汰ねぇからおかしいと思って調べようとしたら、オレの送った手紙と、セーラからの助命嘆願の手紙が同時に来たんだよ」
「うそ……」
「確かにセーラの字なのに、まるでオレを恐れてるような文章だったから、読んですぐにセーラの国に行ったけど、間に合わなかった。ごめん……」
「ううん、私こそごめんなさい……イオスはこんな事した私にも優しくしてくれるし、怒って人殺しなんてする人じゃないのに……なんで、なんで疑ったのかなぁ。私、馬鹿だね……」
セーラの目からは、涙が溢れている。イオスはハンカチでセーラの涙を拭きながら苦しそうに言った。
「オレはセーラが思ってる程優しくねぇぞ。階段で聞いてたんなら分かるかもしれねぇけど、暗殺者は何人も殺してる。話が分かる奴は解放してるけど、兄貴に心酔してまったく会話が通じない奴はさっきみたいに跡形もなく焼き尽くしてるぞ。セーラに見せかけた遺体だって、ちょっと前に襲ってきた暗殺者だ。オレのどこが優しいんだよ」
「でも、イオスは私を助けてくれたよ。さっきだって、なんで私を殺さなかったの?」
「セーラを殺せる訳ねぇだろ」
「そうじゃなくて、私の服を切った時、イオスならすぐ私を殺せたよね? いつもああやって、最初は力の差を見せつけて、追い返してるんじゃないの?」
「何人も殺すのは面倒だからな。それでも向かって来る奴は容赦なく始末してるぞ」
「やっぱりイオスは優しいよ」
「オレを優しいなんて言うのはセーラだけだ。オレはみんなから恐れられてるからな。優しい兄貴と、怖い弟。皇帝陛下の跡を継ぐのは兄貴が相応しいってな」
「そんな事ない! イオスは、イオスは優しいよ……。私が、イオスを信じられたら……何か違ったのかなぁ……」
「これからはオレが守るから。今は泣きたいだけ泣いてくれ。オレこそ、セーラがいちばんつらい時に側に居なくてごめんな。……なぁ、セーラを抱きしめても良いか?」
「うん……うん……」
イオスは、恐る恐るセーラを抱きしめた。セーラは泣き崩れながらも、もっと強く抱きしめてと懇願する。
「悪りぃ、まだあんまり力が入らねぇや。毒が抜けたらもっと強く抱きしめられるのになぁ。なぁ、セーラがオレを抱きしめてくれよ」
「イオス……イオス……」
強く抱きしめる事が出来ないイオスに、セーラが力いっぱい抱きつく。イオスも嬉しさのあまり涙が止まらない。セーラが泣き疲れて眠るまで、ふたりは泣きながら抱きしめ合っていた。
「金がないのが問題なだけなら、オレの私財を渡せば済むからな」
「嬉しくてみんなで喜んでたら、内乱が起きてあっという間に城は制圧されたわ。王族しか知らないエリアも、隠し部屋もあっさり見つかってみんな捕まった。私は、フォス様が助けてくれたの。……そう……思ってたの」
「隠し部屋……まさか、幼い頃セーラが内緒だって教えくれた部屋か?!」
「そう、そこ。家族以外は、イオスとフォス様しか知らないし、あっさり見つかったのはイオスが情報を流したからだってフォス様に言われたわ。私財をほとんど提供したのに、すぐ私を差し出さなかったからイオスが怒ったって」
「んな訳あるかよ! あの時は皇帝から視察の仕事が済んだらセーラと婚約出来るって聞いて、必死で仕事してたんだよ。手紙は送ったぜ。返事来ねえから2回送った。1ヶ月しても、音沙汰ねぇからおかしいと思って調べようとしたら、オレの送った手紙と、セーラからの助命嘆願の手紙が同時に来たんだよ」
「うそ……」
「確かにセーラの字なのに、まるでオレを恐れてるような文章だったから、読んですぐにセーラの国に行ったけど、間に合わなかった。ごめん……」
「ううん、私こそごめんなさい……イオスはこんな事した私にも優しくしてくれるし、怒って人殺しなんてする人じゃないのに……なんで、なんで疑ったのかなぁ。私、馬鹿だね……」
セーラの目からは、涙が溢れている。イオスはハンカチでセーラの涙を拭きながら苦しそうに言った。
「オレはセーラが思ってる程優しくねぇぞ。階段で聞いてたんなら分かるかもしれねぇけど、暗殺者は何人も殺してる。話が分かる奴は解放してるけど、兄貴に心酔してまったく会話が通じない奴はさっきみたいに跡形もなく焼き尽くしてるぞ。セーラに見せかけた遺体だって、ちょっと前に襲ってきた暗殺者だ。オレのどこが優しいんだよ」
「でも、イオスは私を助けてくれたよ。さっきだって、なんで私を殺さなかったの?」
「セーラを殺せる訳ねぇだろ」
「そうじゃなくて、私の服を切った時、イオスならすぐ私を殺せたよね? いつもああやって、最初は力の差を見せつけて、追い返してるんじゃないの?」
「何人も殺すのは面倒だからな。それでも向かって来る奴は容赦なく始末してるぞ」
「やっぱりイオスは優しいよ」
「オレを優しいなんて言うのはセーラだけだ。オレはみんなから恐れられてるからな。優しい兄貴と、怖い弟。皇帝陛下の跡を継ぐのは兄貴が相応しいってな」
「そんな事ない! イオスは、イオスは優しいよ……。私が、イオスを信じられたら……何か違ったのかなぁ……」
「これからはオレが守るから。今は泣きたいだけ泣いてくれ。オレこそ、セーラがいちばんつらい時に側に居なくてごめんな。……なぁ、セーラを抱きしめても良いか?」
「うん……うん……」
イオスは、恐る恐るセーラを抱きしめた。セーラは泣き崩れながらも、もっと強く抱きしめてと懇願する。
「悪りぃ、まだあんまり力が入らねぇや。毒が抜けたらもっと強く抱きしめられるのになぁ。なぁ、セーラがオレを抱きしめてくれよ」
「イオス……イオス……」
強く抱きしめる事が出来ないイオスに、セーラが力いっぱい抱きつく。イオスも嬉しさのあまり涙が止まらない。セーラが泣き疲れて眠るまで、ふたりは泣きながら抱きしめ合っていた。
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