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第二話

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「よぉ、やっぱり来やがったな」

イオスの予想通り、深夜に暗殺者が来た。だが、今までと比べて稚拙な動きをする暗殺者に、拍子抜けだった。

「なんだ? 弱いな。お前」

隠し持っていたナイフで切り捨てようとすると、暗殺者の服が切れて、肌が露わになった。

「……ん? そのアザはまさか……」

暗殺者の左肩に、三日月の形をしたアザを見つけたイオスは、衝撃を覚えた。イオスは、そのアザに見覚えがあった。忘れもしない。自分の唯一の友人で、守る事が出来なかった女性の肩に同じアザがあったのだ。覆面を剥ぎ取り、顔を確認して確信する。

「お前、セーラか?」

「そうだ! 好きだと思っていた私がバカだった! 私の国を滅ぼしたのはイオスだそうだな! 父上も、母上も、兄上も死んだ! 全て貴様のせいだ! 私はフォス様に拾われて、貴様を殺す為だけに生きていたんだ! 死ね!」

そう言って泣きながらナイフを振るうセーラの動きは読み易く、彼女を抑えるのは簡単だった。

「ふざけんな。オレがそんな事するわけねぇだろ! セーラを必死で探してたんだぞ! 今までどこにいたんだよ?!」

「……なんだと……?」

動揺したセーラの意識を奪い、イオスは怒りに震えていた。

「兄貴め……オレがセーラを大事に思ってるのを知ってて暗殺者に仕立てたのか……」

フォスは仕事はしないが、悪巧みに関しては優秀だ。

「あんだけ探しても、セーラが見つからなかったのは兄貴が隠していたからか……」

イオスとセーラは、2年前まで年に数回は会い、お互い文通もする程仲が良かった。イオスは、セーラに淡い恋心を抱いていたし、セーラも満更ではなさそうだった。婚約者を決めるが希望はあるか? 父にそう言われた時、珍しく自分の希望を伝えた。セーラと婚約したいと言った願いは叶えられ、視察の仕事が終われば婚約が決まる。そんな矢先にセーラの国は滅亡した。表向きは、内乱で滅んだ事になっているが、イオスが調べるといくつも怪しい点があった。

イオスはセーラの国が危機に瀕している時に、なにも知らずに仕事で諸外国を回っていた。セーラ宛てに送った筈の外出を知らせる手紙は、助けを求めるセーラからの手紙と共に1ヶ月後にイオスの元に届いた。必死で家族の助命を願う手紙には、イオスが命じれば処刑は回避できると書かれていた。

手紙を読んで急いでセーラの元に向かったイオスが見たのは、荒廃したセーラの国と、処刑され打ち捨てられたセーラの家族だった。必死でセーラを探したが、痕跡すらも見つからなかった。

それ以来、イオスは友人も、恋人も、婚約者も作らない。父に叱責されても、それだけは譲らなかった。

「わりぃ、セーラ、死んでくれ」

そう言ってイオスは、セーラの髪の毛を刈り取った。
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