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5.5 追加分 クリステル視点
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わたくしはすぐに少年の服を着替えさせ、死体を偽造したわ。
マリアベルのお父様も手を貸してくれて、少年の妹はすぐに保護された。ステファンと同じくマリアベルを溺愛している伯爵様を説得するのは骨が折れたけど、なんとかなったわ。少年は現在、伯爵家で取り調べを受けている。
荒ぶるステファンを宥めるのは無理だった。そこで、わたくしはマリアベルの家族を巻き込む事にした。マリアベルの家族はうちの家族より余程信用出来る。マリアベルの優しさは親譲りだ。
未遂だったし、マリアベルの口添えで少年は酷い目には遭わず穏やかに取り調べを受けている。……今頃、伯爵家の影を総動員して調査してるでしょうけどね。警備をすり抜けて侵入した少年を怪しむのは当然だもの。
けど、わたくしの見立てでは才能のある何も知らない子どもだと思うわ。マリアベルを殺せるなんて思ってなかった。見つかって殺されるのも予想済み。妹の事を見張っている者が居たら厄介だったけど、そんな事はなかったみたい。少年は賢くて、妹の事を誰にも言わなかったらしいわ。マリアベルを狙った目的は不明だけど、天涯孤独な子どもを利用しただけじゃないかしら。
数日中には、わたくしの予想があっているか分かるでしょう。
マリアベルも、マリアベルのご家族も冷静に対応してくれた。でも、ステファンは納得してない。
荒ぶるステファンを抑えたのは、わたくしの言葉だったわ。
「ステファン、お願いだから落ち着いて」
「いくら姉上の頼みでも聞けん! あの子どもは今すぐ……」
怒りはごもっともだけど、それ以上言ったらマリアベルに嫌われるわよ。仕方ない、特大の砲弾を撃つとしましょうか。どうせ今回の目的はこれだしね。
「ステファン、わたくしは貴方の姉になれないわ。貴方のお兄様はね、わたくしの親友と口付けを交わしておられたの」
本気で話題を逸らしたければ、強烈な印象の残る言葉を使え。ジョゼの教育が役に立ったわ。
「……は?! あのクソ兄貴……! だから今日、急に姉さんが来たのか……!」
「そうよ。わたくしはクリストフ様と結婚しないわ」
「そんな……! お姉様……!」
「すぐに父上に報告して調査する。ごめん、姉さん……いや、ジュベール侯爵令嬢……」
「クリステルで良いですわ。悪いと思って頂けるの?」
「勿論だよ。僕が夢を追いかけてる間、クリステル様はずっと頑張ってくれてた。母上は厳しいのに、文句ひとつ言わずに勉強してるって聞いてる。しかも、吸収した事を分かりやすくマリアベルに教えてくれて……そのおかげで、母上はマリアベルには優しい」
わたくしは侯爵夫人になる予定だった。マリアベルはいつもわたくしを慕ってくれたから、教わった事はマリアベルにも教えていた。結婚してからでないと機密は扱わないのだから全てをマリアベルに教えても問題ない。生きる為の知識は多い方が良いと思っていた。ステファンはいずれ出世するだろうから、結婚して貴族でなくなってもすぐ叙爵される可能性が高いもの。
伯爵家のマリアベルが侯爵夫人の教育を受ける事は普通なら出来ない。けど、わたくしが友人として伝えるくらいなら問題ない。
「わたくしは少し情報をお伝えしただけ。必死で学んだのはマリアベルよ」
「お姉……クリステル様は……あんなにクリストフ様を慕っておられたのに……」
「もう愛は冷めたわ。いえ、枯れたと言った方が正しいかしらね。昨日ジョゼが調べてくれたの。クリストフ様とアリーゼは、2人で宿屋に入ったそうよ。何をしていたか、想像はつくわよね」
「あの馬鹿兄貴……!」
「信じられない。汚らわしいわ」
これが、きちんと婚約者を大事にする人達の反応よね。兄弟でこうも違うものかしら。
「だからね、わたくしはもう無理なの。ねぇステファン、クリストフ様が侯爵になる可能性は?」
「クリステル様の仰っていた事が正しければ、可能性はゼロだ」
「そうよね。そうなれば跡取りはステファンよ。ステファンとマリアベルなら、立派に侯爵家を継げるわ。もちろん、騎士を辞める必要なんてない。夢を諦めなくて良いのよ」
「そんな事出来るかな?」
「出来るわ。だって失礼だけど貴方のお兄様は勉強をサボりがちだったもの。すぐに頭が痛いだのお腹が痛いだの言って離席して帰って来ないし。おかげで、わたくしが2人分学ぶ羽目になったわ。学園の入学試験で上位に入った貴方達の方が優秀よ」
マリアベルのお父様も手を貸してくれて、少年の妹はすぐに保護された。ステファンと同じくマリアベルを溺愛している伯爵様を説得するのは骨が折れたけど、なんとかなったわ。少年は現在、伯爵家で取り調べを受けている。
荒ぶるステファンを宥めるのは無理だった。そこで、わたくしはマリアベルの家族を巻き込む事にした。マリアベルの家族はうちの家族より余程信用出来る。マリアベルの優しさは親譲りだ。
未遂だったし、マリアベルの口添えで少年は酷い目には遭わず穏やかに取り調べを受けている。……今頃、伯爵家の影を総動員して調査してるでしょうけどね。警備をすり抜けて侵入した少年を怪しむのは当然だもの。
けど、わたくしの見立てでは才能のある何も知らない子どもだと思うわ。マリアベルを殺せるなんて思ってなかった。見つかって殺されるのも予想済み。妹の事を見張っている者が居たら厄介だったけど、そんな事はなかったみたい。少年は賢くて、妹の事を誰にも言わなかったらしいわ。マリアベルを狙った目的は不明だけど、天涯孤独な子どもを利用しただけじゃないかしら。
数日中には、わたくしの予想があっているか分かるでしょう。
マリアベルも、マリアベルのご家族も冷静に対応してくれた。でも、ステファンは納得してない。
荒ぶるステファンを抑えたのは、わたくしの言葉だったわ。
「ステファン、お願いだから落ち着いて」
「いくら姉上の頼みでも聞けん! あの子どもは今すぐ……」
怒りはごもっともだけど、それ以上言ったらマリアベルに嫌われるわよ。仕方ない、特大の砲弾を撃つとしましょうか。どうせ今回の目的はこれだしね。
「ステファン、わたくしは貴方の姉になれないわ。貴方のお兄様はね、わたくしの親友と口付けを交わしておられたの」
本気で話題を逸らしたければ、強烈な印象の残る言葉を使え。ジョゼの教育が役に立ったわ。
「……は?! あのクソ兄貴……! だから今日、急に姉さんが来たのか……!」
「そうよ。わたくしはクリストフ様と結婚しないわ」
「そんな……! お姉様……!」
「すぐに父上に報告して調査する。ごめん、姉さん……いや、ジュベール侯爵令嬢……」
「クリステルで良いですわ。悪いと思って頂けるの?」
「勿論だよ。僕が夢を追いかけてる間、クリステル様はずっと頑張ってくれてた。母上は厳しいのに、文句ひとつ言わずに勉強してるって聞いてる。しかも、吸収した事を分かりやすくマリアベルに教えてくれて……そのおかげで、母上はマリアベルには優しい」
わたくしは侯爵夫人になる予定だった。マリアベルはいつもわたくしを慕ってくれたから、教わった事はマリアベルにも教えていた。結婚してからでないと機密は扱わないのだから全てをマリアベルに教えても問題ない。生きる為の知識は多い方が良いと思っていた。ステファンはいずれ出世するだろうから、結婚して貴族でなくなってもすぐ叙爵される可能性が高いもの。
伯爵家のマリアベルが侯爵夫人の教育を受ける事は普通なら出来ない。けど、わたくしが友人として伝えるくらいなら問題ない。
「わたくしは少し情報をお伝えしただけ。必死で学んだのはマリアベルよ」
「お姉……クリステル様は……あんなにクリストフ様を慕っておられたのに……」
「もう愛は冷めたわ。いえ、枯れたと言った方が正しいかしらね。昨日ジョゼが調べてくれたの。クリストフ様とアリーゼは、2人で宿屋に入ったそうよ。何をしていたか、想像はつくわよね」
「あの馬鹿兄貴……!」
「信じられない。汚らわしいわ」
これが、きちんと婚約者を大事にする人達の反応よね。兄弟でこうも違うものかしら。
「だからね、わたくしはもう無理なの。ねぇステファン、クリストフ様が侯爵になる可能性は?」
「クリステル様の仰っていた事が正しければ、可能性はゼロだ」
「そうよね。そうなれば跡取りはステファンよ。ステファンとマリアベルなら、立派に侯爵家を継げるわ。もちろん、騎士を辞める必要なんてない。夢を諦めなくて良いのよ」
「そんな事出来るかな?」
「出来るわ。だって失礼だけど貴方のお兄様は勉強をサボりがちだったもの。すぐに頭が痛いだのお腹が痛いだの言って離席して帰って来ないし。おかげで、わたくしが2人分学ぶ羽目になったわ。学園の入学試験で上位に入った貴方達の方が優秀よ」
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