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「あああ、あの、王妃様がウールウォード侯爵をお呼びです」
パーネル男爵が、声をかけて下さった。すぐ近くで王妃様が手を振っていらっしゃる。
「……卑怯だぞ……」
王子が、パーネル男爵を睨む。だけど、パーネル男爵は涼しい顔で微笑んだ。
「僕は王妃様のご命令を遂行しただけです」
「母上め……」
そう呟いて、王子は去って行った。
「あり……」
お礼を言おうとすると、パーネル男爵が小声で囁いた。
「しっ、聞き耳を立ててる方も多いので余計な事は仰らない方が良いです。僕は王妃様に依頼されて動いただけですから」
「承知しました」
口ではそう言ってらっしゃるけど、パーネル男爵がわたくしを気遣って下さったのは間違いない。
どうして王妃様がわたくしをお呼びなのか、パーネル男爵とどんなご関係なのか、気になるけど余計な事は言わない方が良いわね。
そういえば、庭園でお会いした時も見張りは無粋だと王妃様が仰っていたと聞いたわ。あの時はスルーしてしまったけど、よく考えたら王妃様と男爵が直接話す機会など滅多にない。
あの時は……。
「あ、あの、ウールウォード侯爵はお花はお好きですか?」
「花ですか? ええ、好きですけど……」
あ、ああ!
わたくし、なんて事を考えようとしてたのかしら。パーネル男爵と初めてお会いした時の事は、秘密でしたわね。
「そ、そうです。秘密です!」
「あら? 何が秘密なの?」
王妃様が優雅に微笑まれた。
「なんでもありません。それでは、僕は失礼致します」
「あら、逃げられてしまったわね。まぁ良いわ。お久しぶりね。ナタリア」
「お久しぶりです」
「助かったでしょう? 正直に言って良いわよ」
正直に言えば、助かった。パーネル男爵が来て下さった時は嬉しかった。けど、それを王子の母親である王妃様に言うのは憚られる。だけど、正直に言えという命令に逆らうのもまずいし……。
そうだわ!
「高貴なお方とお話しするのは緊張致しますから、パーネル男爵が来て下さって安心しましたわ」
ど、どうよ!
嘘は一切言っていないわよ!
「ぷっ……ふふっ……確かに嘘は一切言ってないわね」
え?
ま、まさか王妃様も……?!
って事は、パーネル男爵って実は王家と関わりのある高貴なお方なのかしら?
いけない。今はとにかく、王妃様とお話ししないと。
「ええ、王妃様に嘘をついたりしませんわ。ところで、どうしてわたくしをお呼びなのでしょうか?」
「お話ししたかったの。貴方の離婚騒ぎは有名じゃない。どうして、アレックスと2人で離婚を突きつけたのかしら?」
「元夫と、ナターシャ様の逢瀬を見てしまいましたの。ですから、パーネル男爵と協力して離婚をしましたわ」
「へぇ。どこで見たのかしら?」
「……申し訳ありません。あんなに堂々と離婚を突き付けたのですが、夫の裏切りが辛くて……。あの日の事は考えないようにしているのです」
「そう。嫌な事を聞いたわね。ごめんなさい。お詫びに今度茶会に招待するわ」
「承知しました。光栄です」
短い王妃様との会談を終えた頃、お開きとなったので帰宅した。色々あったせいで寝込んでしまい、ベッドの中で様々な事を考えた。
思考をコントロールするのは、予想以上に疲れる。パーネル男爵なら、多少心を読まれても困らないのに。
王妃様との茶会か……名誉だけど今は勘弁して欲しい。王子と会うのは嫌だし、しばらくは城に近寄りたくない。
だけど、招待をお断りする訳にいかない。渋々準備を進めていたら、パーネル男爵が迎えに来て下さった。
パーネル男爵が、声をかけて下さった。すぐ近くで王妃様が手を振っていらっしゃる。
「……卑怯だぞ……」
王子が、パーネル男爵を睨む。だけど、パーネル男爵は涼しい顔で微笑んだ。
「僕は王妃様のご命令を遂行しただけです」
「母上め……」
そう呟いて、王子は去って行った。
「あり……」
お礼を言おうとすると、パーネル男爵が小声で囁いた。
「しっ、聞き耳を立ててる方も多いので余計な事は仰らない方が良いです。僕は王妃様に依頼されて動いただけですから」
「承知しました」
口ではそう言ってらっしゃるけど、パーネル男爵がわたくしを気遣って下さったのは間違いない。
どうして王妃様がわたくしをお呼びなのか、パーネル男爵とどんなご関係なのか、気になるけど余計な事は言わない方が良いわね。
そういえば、庭園でお会いした時も見張りは無粋だと王妃様が仰っていたと聞いたわ。あの時はスルーしてしまったけど、よく考えたら王妃様と男爵が直接話す機会など滅多にない。
あの時は……。
「あ、あの、ウールウォード侯爵はお花はお好きですか?」
「花ですか? ええ、好きですけど……」
あ、ああ!
わたくし、なんて事を考えようとしてたのかしら。パーネル男爵と初めてお会いした時の事は、秘密でしたわね。
「そ、そうです。秘密です!」
「あら? 何が秘密なの?」
王妃様が優雅に微笑まれた。
「なんでもありません。それでは、僕は失礼致します」
「あら、逃げられてしまったわね。まぁ良いわ。お久しぶりね。ナタリア」
「お久しぶりです」
「助かったでしょう? 正直に言って良いわよ」
正直に言えば、助かった。パーネル男爵が来て下さった時は嬉しかった。けど、それを王子の母親である王妃様に言うのは憚られる。だけど、正直に言えという命令に逆らうのもまずいし……。
そうだわ!
「高貴なお方とお話しするのは緊張致しますから、パーネル男爵が来て下さって安心しましたわ」
ど、どうよ!
嘘は一切言っていないわよ!
「ぷっ……ふふっ……確かに嘘は一切言ってないわね」
え?
ま、まさか王妃様も……?!
って事は、パーネル男爵って実は王家と関わりのある高貴なお方なのかしら?
いけない。今はとにかく、王妃様とお話ししないと。
「ええ、王妃様に嘘をついたりしませんわ。ところで、どうしてわたくしをお呼びなのでしょうか?」
「お話ししたかったの。貴方の離婚騒ぎは有名じゃない。どうして、アレックスと2人で離婚を突きつけたのかしら?」
「元夫と、ナターシャ様の逢瀬を見てしまいましたの。ですから、パーネル男爵と協力して離婚をしましたわ」
「へぇ。どこで見たのかしら?」
「……申し訳ありません。あんなに堂々と離婚を突き付けたのですが、夫の裏切りが辛くて……。あの日の事は考えないようにしているのです」
「そう。嫌な事を聞いたわね。ごめんなさい。お詫びに今度茶会に招待するわ」
「承知しました。光栄です」
短い王妃様との会談を終えた頃、お開きとなったので帰宅した。色々あったせいで寝込んでしまい、ベッドの中で様々な事を考えた。
思考をコントロールするのは、予想以上に疲れる。パーネル男爵なら、多少心を読まれても困らないのに。
王妃様との茶会か……名誉だけど今は勘弁して欲しい。王子と会うのは嫌だし、しばらくは城に近寄りたくない。
だけど、招待をお断りする訳にいかない。渋々準備を進めていたら、パーネル男爵が迎えに来て下さった。
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