11 / 17
11【アレックス・デュ・パーネル視点】
しおりを挟む
ナターシャは、処刑は免れたけど強制労働をさせられているらしい。体力を要る強制労働はナターシャにはつらいだろう。不倫した女性は軽蔑されるし、ナターシャは見た目だけは可愛らしい。囚人や看守が、彼女を放っておかないだろう。
どう考えても、処刑よりつらい。
彼女のプライドはズタズタだろうな。僕は、一度も肌を重ねなかった妻に一切の感情がなくなってしまった。あんなに、好きだったのに。あんなに、愛してたのに。
ウォールロード侯爵は、離婚が成立したら嬉しそうに笑った。彼女が、眩しかった。羨ましかった。
僕に縋ったナターシャの本音は酷かった。僕を利用するつもりだった。反省してくれれば……そう思った自分が馬鹿だった。
不安になるとついつい魔法で人の気持ちを読んでしまう。僕の悪い癖だ。
表向き僕に優しくしてくれる人でも、内心は分からない。嫌な事を知る事も多かったけど、そうやって生きてきたし、それでいいと思ってた。
「パーネル男爵の魔法は便利ですけど、多用しない方がよろしいですわよ。特に貴族なんて、本音と建前が反対の事も多いのですから」
僕と正反対の女性は、僕の魔法を便利だと言った。それだけだ。怯えもしないし、怖がりもしない。気持ち悪いとも、言わなかった。彼女の前では紳士なふりをしてるけど、黙って気持ちを読んでしまった事もある。でも、彼女は一度も僕を馬鹿にしなかったし、怖がらなかったし、気持ち悪いとも思ってなかった。
僕の事を、評価して下さっていた。
彼女は、本音と建前があまりない。多少はあるけど正反対の事を思ってたりなんかしない。こんな貴族、初めて会った。
みんな僕の事を見た目が悪いって思ってるのに、彼女は普通だと思ってくれた。その時からナターシャの事はどうでも良くなった。僕を殺す事を躊躇してたのは知ってた。だけど、知らん顔して彼女を訴えた。
ナターシャが、邪魔だったから。
ウールウォード侯爵に嘘を吐きたくなくて恐る恐る僕の気持ちを伝えると、あっさりと肯定してくれた。怖くて、魔法も使ったけど本音も同じ。
僕は優しくないんです。ただ、臆病なだけなんだ。そう言わなきゃいけなかったのに、言えなかった。彼女は僕を好意的に見てくれてる。それを崩したくなかった。
彼女は身分が高いからあまり男性は寄ってこない。僕は男爵だから、気楽にみんな話しかけてくれる。彼女は僕がモテると勘違いしてるけど、僕に声をかけてくる人の大半はウールウォード侯爵の話を聞きたがってるんだ。僕らが手を組んで、伴侶を訴えたのは有名になってしまったから。彼女は凛としていて美しい。侯爵家当主として優秀な実績がある。女性達の憧れだ。
だから……僕がモテてる訳ではないんです。
そう伝えなきゃいけないのに、言えなかった。何か言わなきゃと思ったら、彼女に馬鹿な提案をしてしまった。
戸惑っておられる。
そりゃそうだよ! 男爵と侯爵じゃ行くパーティーも違う。被る事も多いけど、被らないパーティーも多い。
なのに、ウールウォード侯爵は笑顔で受け入れてくれた。しかも、楽しみだと思って下さってる。
嬉しい。
我ながら変わり身が早いと思うけど、僕はウールウォード侯爵が好きだ。だけど、彼女は侯爵様。僕とは身分が違い過ぎる。だったらせめて、彼女の役に立とう。僕の魔法を使えば、心の底から彼女を大切に思ってる人を見分けられるから。
どう考えても、処刑よりつらい。
彼女のプライドはズタズタだろうな。僕は、一度も肌を重ねなかった妻に一切の感情がなくなってしまった。あんなに、好きだったのに。あんなに、愛してたのに。
ウォールロード侯爵は、離婚が成立したら嬉しそうに笑った。彼女が、眩しかった。羨ましかった。
僕に縋ったナターシャの本音は酷かった。僕を利用するつもりだった。反省してくれれば……そう思った自分が馬鹿だった。
不安になるとついつい魔法で人の気持ちを読んでしまう。僕の悪い癖だ。
表向き僕に優しくしてくれる人でも、内心は分からない。嫌な事を知る事も多かったけど、そうやって生きてきたし、それでいいと思ってた。
「パーネル男爵の魔法は便利ですけど、多用しない方がよろしいですわよ。特に貴族なんて、本音と建前が反対の事も多いのですから」
僕と正反対の女性は、僕の魔法を便利だと言った。それだけだ。怯えもしないし、怖がりもしない。気持ち悪いとも、言わなかった。彼女の前では紳士なふりをしてるけど、黙って気持ちを読んでしまった事もある。でも、彼女は一度も僕を馬鹿にしなかったし、怖がらなかったし、気持ち悪いとも思ってなかった。
僕の事を、評価して下さっていた。
彼女は、本音と建前があまりない。多少はあるけど正反対の事を思ってたりなんかしない。こんな貴族、初めて会った。
みんな僕の事を見た目が悪いって思ってるのに、彼女は普通だと思ってくれた。その時からナターシャの事はどうでも良くなった。僕を殺す事を躊躇してたのは知ってた。だけど、知らん顔して彼女を訴えた。
ナターシャが、邪魔だったから。
ウールウォード侯爵に嘘を吐きたくなくて恐る恐る僕の気持ちを伝えると、あっさりと肯定してくれた。怖くて、魔法も使ったけど本音も同じ。
僕は優しくないんです。ただ、臆病なだけなんだ。そう言わなきゃいけなかったのに、言えなかった。彼女は僕を好意的に見てくれてる。それを崩したくなかった。
彼女は身分が高いからあまり男性は寄ってこない。僕は男爵だから、気楽にみんな話しかけてくれる。彼女は僕がモテると勘違いしてるけど、僕に声をかけてくる人の大半はウールウォード侯爵の話を聞きたがってるんだ。僕らが手を組んで、伴侶を訴えたのは有名になってしまったから。彼女は凛としていて美しい。侯爵家当主として優秀な実績がある。女性達の憧れだ。
だから……僕がモテてる訳ではないんです。
そう伝えなきゃいけないのに、言えなかった。何か言わなきゃと思ったら、彼女に馬鹿な提案をしてしまった。
戸惑っておられる。
そりゃそうだよ! 男爵と侯爵じゃ行くパーティーも違う。被る事も多いけど、被らないパーティーも多い。
なのに、ウールウォード侯爵は笑顔で受け入れてくれた。しかも、楽しみだと思って下さってる。
嬉しい。
我ながら変わり身が早いと思うけど、僕はウールウォード侯爵が好きだ。だけど、彼女は侯爵様。僕とは身分が違い過ぎる。だったらせめて、彼女の役に立とう。僕の魔法を使えば、心の底から彼女を大切に思ってる人を見分けられるから。
61
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
【完結】 嘘と後悔、そして愛
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪魔な娘の政略結婚
夕立悠理
恋愛
悪魔と名高いバーナード家の娘マリエラと、光の一族と呼ばれるワールド家の長男ミカルドは婚約をすることになる。
婚約者としての顔合わせの席でも、夜会でもマリエラはちっとも笑わない。
そんなマリエラを非難する声にミカルドは、笑ってこたえた。
「僕の婚約者は、とても可愛らしい人なんだ」
と。
──見た目が悪魔な侯爵令嬢×見た目は天使な公爵子息(心が読める)の政略結婚のはなし。
※そんなに長くはなりません。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~
ともどーも
恋愛
伯爵令嬢シャティアナは幼馴染みで五歳年上の侯爵子息ノーランドと兄妹のように育ち、必然的に恋仲になり、婚約目前と言われていた。
しかし、シャティアナの母親は二人の婚約を認めず、頑なに反対していた。
シャティアナの父は侯爵家との縁続きになるのを望んでいたため、母親の反対を押切り、シャティアナの誕生日パーティーでノーランドとの婚約を発表した。
みんなに祝福され、とても幸せだったその日の夜、ベッドで寝ていると母親が馬乗りになり、自分にナイフを突き刺そうとしていた。
母親がなぜノーランドとの婚約をあんなに反対したのか…。
母親の告白にシャティアナは絶望し、ノーランドとの婚約破棄の為に動き出す。
貴方を愛してる。
どうか私を捨てて下さい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全14話です。
楽しんで頂ければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の落ち度で投稿途中にデータが消えてしまい、ご心配をお掛けして申し訳ありません。
運営の許可をへて再投稿致しました。
今後このような事が無いように投稿していく所存です。
ご不快な思いをされた方には、この場にて謝罪させていただければと思います。
申し訳ありませんでした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?
R.K.
恋愛
結婚式まで数日という日──
それは、突然に起こった。
「婚約を破棄する」
急にそんなことを言われても困る。
そういった意味を込めて私は、
「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」
相手を試すようにそう言った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
この作品は登場人物の名前は出てきません。
短編の中の短編です。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。
音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。>
婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。
冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。
「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる