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待ちに待った日が来た。
「な……ななななな……なぜ……ここに……!」
「はーい、裁定人の皆様。ご覧下さいませ。こちらが、婚姻時の契約を破ったわたくしのクズ夫ですわ。あ、数分後には元夫になりますわね。ご覧下さい」
言い訳できないように、シーツを引っぺがす。うわぁ……生々しい……。けど、コレが一番早いのよね。裁定人の方々は、目の前で証拠を突き付けるのが一番良い。
「妻以外と子作りをした動かぬ証拠ですね。ウールウォード侯爵と、パーネル男爵の訴えを認めます。婚姻時の契約に基づき、速やかに両名の離婚を認めます。これにて、2組の夫婦の絆が絶たれました」
「やった! やりましたわ! ありがとうございます!」
「こんなに離婚で喜んでる方は初めて見ましたよ。おや? パーネル男爵もスッキリした顔をなさっておられますね。離婚が成立したら彼くらいの態度が普通です。そんなんだから……」
「それ以上、夫に裏切られたばかりの女性を傷付ける必要はありますか? それも裁定人のお仕事ですか?」
「……失礼。パーネル男爵の離婚も成立しましたよ。これでナターシャ様は平民となります。身分が変わりますので、くれぐれも無礼な言動はしないように。場合によっては、即刻不敬罪で逮捕となります。まぁ、貴女は他の罪状がありそうですけどね」
「なんで……なんでよ……! なんでわたくしが平民になるの?!」
「貴女はとっくに貴族令嬢ではなくなっていた。夫が男爵だから、男爵夫人になれただけです」
「じゃあ、ロバートぉ……わたくしを妻にして。貴方さっき捨てられたでしょ? わたくしを、侯爵夫人にしてよ!」
「ふざけんな! 離れろ! ナタリア! 悪かった! どうかやり直しさせてくれ」
土下座する元夫。土下座も早い。顔を上げるのも早い。あー……このつむじをハイヒールで踏み潰したい。けど、お気に入りの靴が傷付くのは嫌ね。やめましょう。
いけない。余計な事を考えてたらパーネル男爵が困っているわね。今回は彼に心を読む魔法を使って頂いている。わたくしからご提案した。アイツらが言い逃れ出来ないように、不貞の瞬間を抑えたかったからだ。嫌かもしれないと思って恐る恐る提案したんだけど、快く受けて頂けた。
まさか土下座して許しを乞うとはね。一応、自分の立場は理解してるみたいね。
「無理ですわ。父の作成した婚姻契約をよーくご覧下さい。一度縁を切ったら、2度と縁を結ぶ事はないと書かれているでしょう? だから、離婚が成立した今、貴方とわたくしが結婚する事は不可能なのです」
「……そ……そんな……」
「ありえませんけど、わたくしがロバートを愛していて、結婚したいと思っても不可能なんです」
「その通りです。結婚時に約束した事すら守れない人と再び無理矢理縁結びされないようにウールウォード侯爵のお父上が入れた文言ですね。この婚姻誓約書は私も一緒に作りました。彼の娘への愛が溢れていましたよ」
「そうだったのですね」
「ええ、ですから離婚を強く反対してしまって……申し訳ありませんでした。こんな不誠実な男だとはね。離婚して正解ですよ。もっと素晴らしい男性はたくさん居ます」
そうね。少なくともここにいらっしゃるのはうちの夫より素晴らしい男性ばかりだわ。裁定人の方々は嫌味も言われるけど、公平な判断を下そうとしてくれる。年配の男性が多いからか、多少男尊女卑な気もするけど……それでもここまで分かりやすく証拠を出されてなお、わたくしが悪いなんて言う人はいらっしゃらない。
パーネル男爵も素敵な方だしね。
「ありがとうございます。悪い縁を切って頂きましたし、より良いご縁がある事を祈りますわ。そうだ、昨日もお話ししたんですけど元夫の……」
「ああ、母親ですね。子どもが出来ない事を責める割に、自分の息子がどんな非道をしたかは分かってなかったようだ。接見禁止と慰謝料、どちらがお好みですか?」
「接見禁止です」
慰謝料も捨てがたいけど、顔を見なくて済む方が良い
「では、接見禁止で。ほら、早く書いて下さい。書かないなら、城に来て頂いて書くまで部屋から出しませんよ」
裁定人は、やると言ったらやる。
夫は諦めて離婚届に記入した。
「な……ななななな……なぜ……ここに……!」
「はーい、裁定人の皆様。ご覧下さいませ。こちらが、婚姻時の契約を破ったわたくしのクズ夫ですわ。あ、数分後には元夫になりますわね。ご覧下さい」
言い訳できないように、シーツを引っぺがす。うわぁ……生々しい……。けど、コレが一番早いのよね。裁定人の方々は、目の前で証拠を突き付けるのが一番良い。
「妻以外と子作りをした動かぬ証拠ですね。ウールウォード侯爵と、パーネル男爵の訴えを認めます。婚姻時の契約に基づき、速やかに両名の離婚を認めます。これにて、2組の夫婦の絆が絶たれました」
「やった! やりましたわ! ありがとうございます!」
「こんなに離婚で喜んでる方は初めて見ましたよ。おや? パーネル男爵もスッキリした顔をなさっておられますね。離婚が成立したら彼くらいの態度が普通です。そんなんだから……」
「それ以上、夫に裏切られたばかりの女性を傷付ける必要はありますか? それも裁定人のお仕事ですか?」
「……失礼。パーネル男爵の離婚も成立しましたよ。これでナターシャ様は平民となります。身分が変わりますので、くれぐれも無礼な言動はしないように。場合によっては、即刻不敬罪で逮捕となります。まぁ、貴女は他の罪状がありそうですけどね」
「なんで……なんでよ……! なんでわたくしが平民になるの?!」
「貴女はとっくに貴族令嬢ではなくなっていた。夫が男爵だから、男爵夫人になれただけです」
「じゃあ、ロバートぉ……わたくしを妻にして。貴方さっき捨てられたでしょ? わたくしを、侯爵夫人にしてよ!」
「ふざけんな! 離れろ! ナタリア! 悪かった! どうかやり直しさせてくれ」
土下座する元夫。土下座も早い。顔を上げるのも早い。あー……このつむじをハイヒールで踏み潰したい。けど、お気に入りの靴が傷付くのは嫌ね。やめましょう。
いけない。余計な事を考えてたらパーネル男爵が困っているわね。今回は彼に心を読む魔法を使って頂いている。わたくしからご提案した。アイツらが言い逃れ出来ないように、不貞の瞬間を抑えたかったからだ。嫌かもしれないと思って恐る恐る提案したんだけど、快く受けて頂けた。
まさか土下座して許しを乞うとはね。一応、自分の立場は理解してるみたいね。
「無理ですわ。父の作成した婚姻契約をよーくご覧下さい。一度縁を切ったら、2度と縁を結ぶ事はないと書かれているでしょう? だから、離婚が成立した今、貴方とわたくしが結婚する事は不可能なのです」
「……そ……そんな……」
「ありえませんけど、わたくしがロバートを愛していて、結婚したいと思っても不可能なんです」
「その通りです。結婚時に約束した事すら守れない人と再び無理矢理縁結びされないようにウールウォード侯爵のお父上が入れた文言ですね。この婚姻誓約書は私も一緒に作りました。彼の娘への愛が溢れていましたよ」
「そうだったのですね」
「ええ、ですから離婚を強く反対してしまって……申し訳ありませんでした。こんな不誠実な男だとはね。離婚して正解ですよ。もっと素晴らしい男性はたくさん居ます」
そうね。少なくともここにいらっしゃるのはうちの夫より素晴らしい男性ばかりだわ。裁定人の方々は嫌味も言われるけど、公平な判断を下そうとしてくれる。年配の男性が多いからか、多少男尊女卑な気もするけど……それでもここまで分かりやすく証拠を出されてなお、わたくしが悪いなんて言う人はいらっしゃらない。
パーネル男爵も素敵な方だしね。
「ありがとうございます。悪い縁を切って頂きましたし、より良いご縁がある事を祈りますわ。そうだ、昨日もお話ししたんですけど元夫の……」
「ああ、母親ですね。子どもが出来ない事を責める割に、自分の息子がどんな非道をしたかは分かってなかったようだ。接見禁止と慰謝料、どちらがお好みですか?」
「接見禁止です」
慰謝料も捨てがたいけど、顔を見なくて済む方が良い
「では、接見禁止で。ほら、早く書いて下さい。書かないなら、城に来て頂いて書くまで部屋から出しませんよ」
裁定人は、やると言ったらやる。
夫は諦めて離婚届に記入した。
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