浮気は契約違反です

編端みどり

文字の大きさ
上 下
6 / 17

6

しおりを挟む
「わたくしは裁定人を連れて行くつもりですわよ」

「はい。分かってます」

「良いのですか? 奥様の事が知られたらお困りになるのでは?」

「大丈夫です。妻とは別れます。貴女を見ていたら目が覚めました。それに、妻は僕を殺そうとしてるんです」

は?

はあぁ?

「あの……何故そんな事に?」

上手い言葉が見つからない。パーネル男爵はお話しした限り誠実なお人柄だし、念のため調査もしたけど真面目な仕事ぶりで誠実だと調査結果が上がっている。悪い噂なんてひとつも……ああ、いや……妻選びを間違ったとは言われてたわね。でも、彼自身の悪い話はひとつもない。

しかも、うちの夫と不倫してる奥様はパーネル男爵が死んでしまったら貴族の地位を失う。夫を大事にしようとするなら分かるけど、殺そうとするなんて考えられない。

ましてや、こんなに良い人なのに。
うちの夫と交換したいくらいよ。って、失礼な事を考えてしまったわ。彼の奥様は中身はともかく外見は清楚。わたくしは派手な顔立ちと女性の中では高めな身長。わたくしなんかより余程相応しい方がいらっしゃるでしょう。

……何が不満か、全く分からないわ。うちの夫の不満点なら1時間は語れるのに。

「妻は……僕が嫌いなんです……気持ち悪い……そうです」

「え、どこがですの?」

「ウールウォード侯爵はお優しいですね。僕は、友人達からも見目があまり良くないと言われるのですよ。まぁ、正確にはつい使用してしまう魔法で本音を知ってしまうのです。面と向かって失礼な事は言われないのですが……。やはり気になってしまって……」

「パーネル男爵の魔法は便利ですけど、多用しない方がよろしいですわよ。特に貴族なんて、本音と建前が反対の事も多いのですから」

「……そう……ですね……すいません」

「謝らなくて良いですわ。それより、殺そうとするなんて穏やかじゃありませんわね。証拠を集めて、離婚する事をお勧めしますわ」

彼はしきりに見た目を気にするけど、どこが悪いか分からない。確かに男爵の中でも質素な装いだけど、ちゃんとマナーは守ってるし、清潔感のある服装や髪型をなさってる。

お顔も別に……普通よね?
特筆した欠点があるとも思えないけど……?

「……はい。僕、妻の不倫を証明して離婚します」

真っ直ぐわたくしを見つめながら決意なさるお姿は、素敵だと思うけど……?

「婚姻の際、不倫した場合の取り決めをなさいましたか?」

「しました。父が、彼女と結婚するなら必ず入れろと譲らなかったので」

「先見の明があるお父様で羨ましいですわ」

わたくしは、彼と協力して夫を追い詰める事にしたわ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~

ともどーも
恋愛
 伯爵令嬢シャティアナは幼馴染みで五歳年上の侯爵子息ノーランドと兄妹のように育ち、必然的に恋仲になり、婚約目前と言われていた。  しかし、シャティアナの母親は二人の婚約を認めず、頑なに反対していた。  シャティアナの父は侯爵家との縁続きになるのを望んでいたため、母親の反対を押切り、シャティアナの誕生日パーティーでノーランドとの婚約を発表した。  みんなに祝福され、とても幸せだったその日の夜、ベッドで寝ていると母親が馬乗りになり、自分にナイフを突き刺そうとしていた。  母親がなぜノーランドとの婚約をあんなに反対したのか…。  母親の告白にシャティアナは絶望し、ノーランドとの婚約破棄の為に動き出す。  貴方を愛してる。  どうか私を捨てて下さい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 全14話です。 楽しんで頂ければ幸いです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私の落ち度で投稿途中にデータが消えてしまい、ご心配をお掛けして申し訳ありません。 運営の許可をへて再投稿致しました。 今後このような事が無いように投稿していく所存です。 ご不快な思いをされた方には、この場にて謝罪させていただければと思います。 申し訳ありませんでした。

婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?

R.K.
恋愛
 結婚式まで数日という日──  それは、突然に起こった。 「婚約を破棄する」  急にそんなことを言われても困る。  そういった意味を込めて私は、 「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」  相手を試すようにそう言った。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  この作品は登場人物の名前は出てきません。  短編の中の短編です。

初恋の結末

夕鈴
恋愛
幼い頃から婚約していたアリストアとエドウィン。アリストアは最愛の婚約者と深い絆で結ばれ同じ道を歩くと信じていた。アリストアの描く未来が崩れ……。それぞれの初恋の結末を描く物語。

悪魔な娘の政略結婚

夕立悠理
恋愛
悪魔と名高いバーナード家の娘マリエラと、光の一族と呼ばれるワールド家の長男ミカルドは婚約をすることになる。  婚約者としての顔合わせの席でも、夜会でもマリエラはちっとも笑わない。  そんなマリエラを非難する声にミカルドは、笑ってこたえた。 「僕の婚約者は、とても可愛らしい人なんだ」 と。  ──見た目が悪魔な侯爵令嬢×見た目は天使な公爵子息(心が読める)の政略結婚のはなし。 ※そんなに長くはなりません。 ※小説家になろう様にも投稿しています

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

恋愛に興味がない私は王子に愛人を充てがう。そんな彼は、私に本当の愛を知るべきだと言って婚約破棄を告げてきた

キョウキョウ
恋愛
恋愛が面倒だった。自分よりも、恋愛したいと求める女性を身代わりとして王子の相手に充てがった。 彼は、恋愛上手でモテる人間だと勘違いしたようだった。愛に溺れていた。 そんな彼から婚約破棄を告げられる。 決定事項のようなタイミングで、私に拒否権はないようだ。 仕方がないから、私は面倒の少ない別の相手を探すことにした。

婚約破棄~さようなら、私の愛した旦那様~

星ふくろう
恋愛
 レオン・ウィンダミア子爵は若くして、友人であるイゼア・スローン卿と共に財産を築いた資産家だ。  そんな彼にまだ若い没落貴族、ギース侯爵令嬢マキナ嬢との婚約の話が持ち上がる。  しかし、新聞社を経営するイゼア・スローン卿はレオンに警告する。  彼女には秘密がある、気を付けろ、と。  小説家になろう、ノベリズムでも掲載しています。

処理中です...