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「わたくしは裁定人を連れて行くつもりですわよ」
「はい。分かってます」
「良いのですか? 奥様の事が知られたらお困りになるのでは?」
「大丈夫です。妻とは別れます。貴女を見ていたら目が覚めました。それに、妻は僕を殺そうとしてるんです」
は?
はあぁ?
「あの……何故そんな事に?」
上手い言葉が見つからない。パーネル男爵はお話しした限り誠実なお人柄だし、念のため調査もしたけど真面目な仕事ぶりで誠実だと調査結果が上がっている。悪い噂なんてひとつも……ああ、いや……妻選びを間違ったとは言われてたわね。でも、彼自身の悪い話はひとつもない。
しかも、うちの夫と不倫してる奥様はパーネル男爵が死んでしまったら貴族の地位を失う。夫を大事にしようとするなら分かるけど、殺そうとするなんて考えられない。
ましてや、こんなに良い人なのに。
うちの夫と交換したいくらいよ。って、失礼な事を考えてしまったわ。彼の奥様は中身はともかく外見は清楚。わたくしは派手な顔立ちと女性の中では高めな身長。わたくしなんかより余程相応しい方がいらっしゃるでしょう。
……何が不満か、全く分からないわ。うちの夫の不満点なら1時間は語れるのに。
「妻は……僕が嫌いなんです……気持ち悪い……そうです」
「え、どこがですの?」
「ウールウォード侯爵はお優しいですね。僕は、友人達からも見目があまり良くないと言われるのですよ。まぁ、正確にはつい使用してしまう魔法で本音を知ってしまうのです。面と向かって失礼な事は言われないのですが……。やはり気になってしまって……」
「パーネル男爵の魔法は便利ですけど、多用しない方がよろしいですわよ。特に貴族なんて、本音と建前が反対の事も多いのですから」
「……そう……ですね……すいません」
「謝らなくて良いですわ。それより、殺そうとするなんて穏やかじゃありませんわね。証拠を集めて、離婚する事をお勧めしますわ」
彼はしきりに見た目を気にするけど、どこが悪いか分からない。確かに男爵の中でも質素な装いだけど、ちゃんとマナーは守ってるし、清潔感のある服装や髪型をなさってる。
お顔も別に……普通よね?
特筆した欠点があるとも思えないけど……?
「……はい。僕、妻の不倫を証明して離婚します」
真っ直ぐわたくしを見つめながら決意なさるお姿は、素敵だと思うけど……?
「婚姻の際、不倫した場合の取り決めをなさいましたか?」
「しました。父が、彼女と結婚するなら必ず入れろと譲らなかったので」
「先見の明があるお父様で羨ましいですわ」
わたくしは、彼と協力して夫を追い詰める事にしたわ。
「はい。分かってます」
「良いのですか? 奥様の事が知られたらお困りになるのでは?」
「大丈夫です。妻とは別れます。貴女を見ていたら目が覚めました。それに、妻は僕を殺そうとしてるんです」
は?
はあぁ?
「あの……何故そんな事に?」
上手い言葉が見つからない。パーネル男爵はお話しした限り誠実なお人柄だし、念のため調査もしたけど真面目な仕事ぶりで誠実だと調査結果が上がっている。悪い噂なんてひとつも……ああ、いや……妻選びを間違ったとは言われてたわね。でも、彼自身の悪い話はひとつもない。
しかも、うちの夫と不倫してる奥様はパーネル男爵が死んでしまったら貴族の地位を失う。夫を大事にしようとするなら分かるけど、殺そうとするなんて考えられない。
ましてや、こんなに良い人なのに。
うちの夫と交換したいくらいよ。って、失礼な事を考えてしまったわ。彼の奥様は中身はともかく外見は清楚。わたくしは派手な顔立ちと女性の中では高めな身長。わたくしなんかより余程相応しい方がいらっしゃるでしょう。
……何が不満か、全く分からないわ。うちの夫の不満点なら1時間は語れるのに。
「妻は……僕が嫌いなんです……気持ち悪い……そうです」
「え、どこがですの?」
「ウールウォード侯爵はお優しいですね。僕は、友人達からも見目があまり良くないと言われるのですよ。まぁ、正確にはつい使用してしまう魔法で本音を知ってしまうのです。面と向かって失礼な事は言われないのですが……。やはり気になってしまって……」
「パーネル男爵の魔法は便利ですけど、多用しない方がよろしいですわよ。特に貴族なんて、本音と建前が反対の事も多いのですから」
「……そう……ですね……すいません」
「謝らなくて良いですわ。それより、殺そうとするなんて穏やかじゃありませんわね。証拠を集めて、離婚する事をお勧めしますわ」
彼はしきりに見た目を気にするけど、どこが悪いか分からない。確かに男爵の中でも質素な装いだけど、ちゃんとマナーは守ってるし、清潔感のある服装や髪型をなさってる。
お顔も別に……普通よね?
特筆した欠点があるとも思えないけど……?
「……はい。僕、妻の不倫を証明して離婚します」
真っ直ぐわたくしを見つめながら決意なさるお姿は、素敵だと思うけど……?
「婚姻の際、不倫した場合の取り決めをなさいましたか?」
「しました。父が、彼女と結婚するなら必ず入れろと譲らなかったので」
「先見の明があるお父様で羨ましいですわ」
わたくしは、彼と協力して夫を追い詰める事にしたわ。
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