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「さてと……だいぶ証拠が集まったわね」
領地に行くついでに人を雇い、夫の不貞の証拠を集めた。
そしたら出るわ出るわ。
パーネル男爵夫人のナターシャ様だけじゃなくて、多くの下位貴族のご婦人と浮名を流していた。付き合ってた女性のリストが出来るってどういうことよ。
「これで証拠は充分ね。妊娠してない事を確認したらすぐ離婚を申し立てましょう」
絶対妊娠してないけどね。
だって最近一緒に寝てないもの。
けど、しばらく物理的に離れてないと子どもがいるかもって言われると離婚が遅れる。魔法で子どもの有無を確認出来るのは2ヶ月後からだもの。とりあえず1ヶ月は離れて過ごして、証拠を集めるわ。離婚がすんなり出来るとは思えないから、1ヶ月くらい揉めるだろうし……離婚を申し立てるまで夫と会うつもりはない。
はぁ……離婚を裁定するのはあの嫌味な方々なのよね。文句を言われない証拠を集めて、契約通り離婚してやるわ。
あー! モヤモヤするわっ!!!
こんな時は領地を視察するに限る。
幼い頃から父にくっついて領地で過ごす事が多かった。馬を飛ばせば2日で領地に着くから、今でも月に一度は様子を見に行く。今回は長くなると伝えてあるから、しばらく領地で過ごすつもりだ。
領民の様子を見るのはわたくしの大事な仕事だ。領民は色んな事が出来る。料理の得意な人、苦手な人、頭のいい人、頭を使うのが苦手な人、手先の器用な人、不器用な人、力の強い人、弱い人、良いところもあれば、悪いところもある。けど、なにかしら出来る事はある。向いている役割を見つけてあげれば、みんな生き生きと過ごしてくれる。
身体の大きな男性が実は裁縫が得意だったりするのよね。才能を発掘する為、様々なイベントを定期的に行っている。この間は凄かった。優勝者に店が与えられるファッションショーで審査員全員から満点の評価を叩き出したのは、ゴツい男性だったわ。男が裁縫なんて、と最初は反対していたご両親は先月泣いてわたくしにお礼を言いに来た。いつもつまらなそうにしていた息子が笑うようになったと聞いて嬉しかったわ。イベントは性別も年齢も不問としているから、ダイヤモンドの原石が見つけやすい。人を型にはめるなんてつまらないもの。
よーく観察すると、色んな事が見えてくるの。だから楽しくてついつい領地をウロウロしてしまう。わたくしの顔は知られてるから、みんな気さくに話しかけてくれるわ。街中の人々が見守ってくれるから、護衛も不要だ。もちろん、危ない場所には近寄らない。けど……いずれは領地の全てを安全にしたいと思ってる。
半月ほど夢中で働いていると、パーネル男爵が訪ねて来た。先触れは来たけど、急な訪問だ。
「ウールウォード侯爵、お久しぶりです。今は魔法は使ってませんのでご安心下さい」
「分かりました。わざわざありがとうございます。ご用件は、うちの夫の件でしょうか」
「はい。そうです。言い難いのですが、妻が旦那様と旅行に行くそうです。僕には実家にしばらく帰ると言ってましたけど、目が泳いでたから魔法を使ったんです。侯爵様にとってはチャンスだと思い、お知らせに参りました。最初は手紙を出そうと思ったのですが、証拠が残ると良くないと思い訪ねさせて頂きました。突然の訪問、申し訳ございません」
りょ、旅行?!
不倫旅行って事? 誰かに見られたらどうするのよ!
ああ、そうか。ママが帰ったし、わたくしもしばらく不在だし、ハメを外そうと思ったのね。屋敷の使用人はわたくしの味方だから、誰にも邪魔されない所でイチャイチャしようと思ったんだろう。
「先触れも頂きましたし、問題ありませんわ。貴重な情報をありがとうございます。ちょうどいいので、締め上げて離婚を突き付けますわ」
現行犯で捕まえられれば、話は早い。裁定人を連れて行ってやるわ。
世の中は男性が優位。女性でも爵位を継ぐ事は出来るけど、少数派だ。わたくしも、両親が死んで爵位を継いだら、どうして夫に継がせないのかと聞かれた事もある。だからわたくしは、夫の心を繋ぎ止められなかったと馬鹿にされるだろう。だけど、構わないわ。
ずっとあの男と暮らすくらいなら、多少の批判は覚悟の上よ。お父様とお母様が守ってきた領地をあんな男に食い潰されてたまるか。
それに、貴族の噂は消えるのも早い。
わたくしに非はない。堂々としていればそのうち噂なんてなくなるわ。
「あの……僕もその場に連れて行って頂けませんか?」
領地に行くついでに人を雇い、夫の不貞の証拠を集めた。
そしたら出るわ出るわ。
パーネル男爵夫人のナターシャ様だけじゃなくて、多くの下位貴族のご婦人と浮名を流していた。付き合ってた女性のリストが出来るってどういうことよ。
「これで証拠は充分ね。妊娠してない事を確認したらすぐ離婚を申し立てましょう」
絶対妊娠してないけどね。
だって最近一緒に寝てないもの。
けど、しばらく物理的に離れてないと子どもがいるかもって言われると離婚が遅れる。魔法で子どもの有無を確認出来るのは2ヶ月後からだもの。とりあえず1ヶ月は離れて過ごして、証拠を集めるわ。離婚がすんなり出来るとは思えないから、1ヶ月くらい揉めるだろうし……離婚を申し立てるまで夫と会うつもりはない。
はぁ……離婚を裁定するのはあの嫌味な方々なのよね。文句を言われない証拠を集めて、契約通り離婚してやるわ。
あー! モヤモヤするわっ!!!
こんな時は領地を視察するに限る。
幼い頃から父にくっついて領地で過ごす事が多かった。馬を飛ばせば2日で領地に着くから、今でも月に一度は様子を見に行く。今回は長くなると伝えてあるから、しばらく領地で過ごすつもりだ。
領民の様子を見るのはわたくしの大事な仕事だ。領民は色んな事が出来る。料理の得意な人、苦手な人、頭のいい人、頭を使うのが苦手な人、手先の器用な人、不器用な人、力の強い人、弱い人、良いところもあれば、悪いところもある。けど、なにかしら出来る事はある。向いている役割を見つけてあげれば、みんな生き生きと過ごしてくれる。
身体の大きな男性が実は裁縫が得意だったりするのよね。才能を発掘する為、様々なイベントを定期的に行っている。この間は凄かった。優勝者に店が与えられるファッションショーで審査員全員から満点の評価を叩き出したのは、ゴツい男性だったわ。男が裁縫なんて、と最初は反対していたご両親は先月泣いてわたくしにお礼を言いに来た。いつもつまらなそうにしていた息子が笑うようになったと聞いて嬉しかったわ。イベントは性別も年齢も不問としているから、ダイヤモンドの原石が見つけやすい。人を型にはめるなんてつまらないもの。
よーく観察すると、色んな事が見えてくるの。だから楽しくてついつい領地をウロウロしてしまう。わたくしの顔は知られてるから、みんな気さくに話しかけてくれるわ。街中の人々が見守ってくれるから、護衛も不要だ。もちろん、危ない場所には近寄らない。けど……いずれは領地の全てを安全にしたいと思ってる。
半月ほど夢中で働いていると、パーネル男爵が訪ねて来た。先触れは来たけど、急な訪問だ。
「ウールウォード侯爵、お久しぶりです。今は魔法は使ってませんのでご安心下さい」
「分かりました。わざわざありがとうございます。ご用件は、うちの夫の件でしょうか」
「はい。そうです。言い難いのですが、妻が旦那様と旅行に行くそうです。僕には実家にしばらく帰ると言ってましたけど、目が泳いでたから魔法を使ったんです。侯爵様にとってはチャンスだと思い、お知らせに参りました。最初は手紙を出そうと思ったのですが、証拠が残ると良くないと思い訪ねさせて頂きました。突然の訪問、申し訳ございません」
りょ、旅行?!
不倫旅行って事? 誰かに見られたらどうするのよ!
ああ、そうか。ママが帰ったし、わたくしもしばらく不在だし、ハメを外そうと思ったのね。屋敷の使用人はわたくしの味方だから、誰にも邪魔されない所でイチャイチャしようと思ったんだろう。
「先触れも頂きましたし、問題ありませんわ。貴重な情報をありがとうございます。ちょうどいいので、締め上げて離婚を突き付けますわ」
現行犯で捕まえられれば、話は早い。裁定人を連れて行ってやるわ。
世の中は男性が優位。女性でも爵位を継ぐ事は出来るけど、少数派だ。わたくしも、両親が死んで爵位を継いだら、どうして夫に継がせないのかと聞かれた事もある。だからわたくしは、夫の心を繋ぎ止められなかったと馬鹿にされるだろう。だけど、構わないわ。
ずっとあの男と暮らすくらいなら、多少の批判は覚悟の上よ。お父様とお母様が守ってきた領地をあんな男に食い潰されてたまるか。
それに、貴族の噂は消えるのも早い。
わたくしに非はない。堂々としていればそのうち噂なんてなくなるわ。
「あの……僕もその場に連れて行って頂けませんか?」
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