浮気は契約違反です

編端みどり

文字の大きさ
上 下
4 / 17

4

しおりを挟む
あれから、会場に戻り何食わぬ顔で笑顔を振り撒く夫と共に自宅へ帰宅した。

「あら、今日は早かったわね」

自宅では義理の母が寛いでいた。
わたくしの両親が他界してから入り浸るようになったのだ。平気な顔で泊まっていくし、使用人をこき使うし、母の遺品を漁ろうとするしで個人的にはあまり好きではない。

母の遺品は、ひとつ盗られた後に全て地下の宝物庫に移した。夫も知らない部屋だからバレる事はない。返せと泣いたら、故人の遺品は寄付するものよ。全てわたくしが貰ってあげると言い出したからやり返す事にしたの。

母の遺品を漁ろうとまた現れた時、何も無いと大騒ぎしたわ。お義母様のアドバイス通り全て寄付いたしました。隣国の孤児院に送りましたのと言ったら口をあんぐり開けていたのは面白かった。

流石に、他国まで追いかける事はなかったわ。まさか、義理の娘の母親の遺品を盗みそこなったから返せなんて言えないわよね。

誰があんたなんかに寄付するものですか。

「母さん、来てたのか!」

「おかえりロバート! 今日もかっこいいわ。それなのに貴女は地味ねぇ。ロバートと釣り合わないわ」

始まったわね。

ロバートは見た目はいいけど中身は空っぽ。わたくしの事を気に入らないお母様の言葉を聞いて、どんどんわたくしを蔑むようになった。

うちの両親が生きていた頃はまだ良かったんだけど、今は酷いわね。

絶対証拠を集めて離婚してやるわ。

その為には、この男をもっと調子に乗らせて泳がせないと。

「では、地味なわたくしはこれで失礼致しますわ。あなた、どうか親子で仲良くなさって下さいませ。そうそう、わたくしは明日から領地の視察に参ります。ご一緒にいかがですか?」

「いや、母さんが来てるからやめておくよ」

「承知しました。では親子水入らずでゆっくりなさって下さい」

「あら、アンタ居ないの?」

「ええ、仕事がありまして」

「ふん、女のくせに仕事、仕事って……もっとロバートを支えなさい」

貴女の息子が全く働かないからでしょう?!
当主はわたくしだから良いけど、あ、いや、やっぱり良くないわ。

大丈夫、離婚すればこの母親ともおさらばよ。

あー……それが一番嬉しいかも。

とにかく、月のものが来るまではこの家から出るわ。万が一妊娠していたら面倒な事になる。ま、子が出来てたら出来てたでやりようはあるけど……妊娠してない方がスムーズなのは確かだ。

離婚の時、お腹に子が居るか魔法で調べられる。子が居るともう一度話し合いましょうと裁定され、離婚が厳しくなるわ。

それでも離婚できるくらい証拠を集めるつもりだけどね。

幸い、結婚した時に交わした婚姻契約書には不倫をしたら即離婚と書かれてる。もちろん、慰謝料もたっぷり設定されてるから貰うわ。

あの男の家は同じ侯爵家だけど、資産は少ない。領地経営が下手なだけだと思うけど、歴史はある家だから地位は高いのよね。

うちは歴史は浅いが資産はある。だから、政略結婚するにはちょうど良かった。こんなクズな性格だって分かってたらお父様が結婚を決める筈がない。結婚してすぐ、両親は事故で死んでしまった。

それから、コイツらは我が家を自分達のものだと勘違いしている。

今までは腹が立ってケンカしていたけど、今はどうぞこのままボロを出し続けてって思う。

「母さん、そんな事言わないで。ナタリアは領民の為、僕の為に働いてるんだから」

「ロバートは優しいわねぇ! なんて素敵なの! さすが当主だわ!」

「……なら、旦那様が当主として視察をなさいますか」

「あ、いや、僕はやめておく。今回はナタリアに任せるよ」

わたくしが本当は当主だと分かっているのでしょうか。この男の本心がわかりません。

ふと、パーネル男爵の魔法が羨ましくなりましたわ。ずっと人の本心を聞いたら辛いですけど、好きな時に使えるのは良いなと思いました。

けど、彼の辛そうなお顔を思い出すと……やはり、心を覗けるのは良い事ばかりではないのでしょうね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】 嘘と後悔、そして愛

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢ソニアは15歳。親に勝手に決められて、一度も会ったことのない10歳離れた侯爵リカルドに嫁ぐために辺境の地に一人でやってきた。新婚初夜、ソニアは夫に「夜のお務めが怖いのです」と言って涙をこぼす。その言葉を信じたリカルドは妻の気持ちを尊重し、寝室を別にすることを提案する。しかしソニアのその言葉には「嘘」が隠れていた……

悪魔な娘の政略結婚

夕立悠理
恋愛
悪魔と名高いバーナード家の娘マリエラと、光の一族と呼ばれるワールド家の長男ミカルドは婚約をすることになる。  婚約者としての顔合わせの席でも、夜会でもマリエラはちっとも笑わない。  そんなマリエラを非難する声にミカルドは、笑ってこたえた。 「僕の婚約者は、とても可愛らしい人なんだ」 と。  ──見た目が悪魔な侯爵令嬢×見た目は天使な公爵子息(心が読める)の政略結婚のはなし。 ※そんなに長くはなりません。 ※小説家になろう様にも投稿しています

愛しい人へ~愛しているから私を捨てて下さい~

ともどーも
恋愛
 伯爵令嬢シャティアナは幼馴染みで五歳年上の侯爵子息ノーランドと兄妹のように育ち、必然的に恋仲になり、婚約目前と言われていた。  しかし、シャティアナの母親は二人の婚約を認めず、頑なに反対していた。  シャティアナの父は侯爵家との縁続きになるのを望んでいたため、母親の反対を押切り、シャティアナの誕生日パーティーでノーランドとの婚約を発表した。  みんなに祝福され、とても幸せだったその日の夜、ベッドで寝ていると母親が馬乗りになり、自分にナイフを突き刺そうとしていた。  母親がなぜノーランドとの婚約をあんなに反対したのか…。  母親の告白にシャティアナは絶望し、ノーランドとの婚約破棄の為に動き出す。  貴方を愛してる。  どうか私を捨てて下さい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 全14話です。 楽しんで頂ければ幸いです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 私の落ち度で投稿途中にデータが消えてしまい、ご心配をお掛けして申し訳ありません。 運営の許可をへて再投稿致しました。 今後このような事が無いように投稿していく所存です。 ご不快な思いをされた方には、この場にて謝罪させていただければと思います。 申し訳ありませんでした。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑 side story

岡暁舟
恋愛
本編に登場する主人公マリアの婚約相手、王子スミスの物語。スミス視点で生い立ちから描いていきます。

婚約破棄ですか?それは死ぬ覚悟あっての話ですか?

R.K.
恋愛
 結婚式まで数日という日──  それは、突然に起こった。 「婚約を破棄する」  急にそんなことを言われても困る。  そういった意味を込めて私は、 「それは、死ぬ覚悟があってのことなのかしら?」  相手を試すようにそう言った。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  この作品は登場人物の名前は出てきません。  短編の中の短編です。

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

処理中です...