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あれから、会場に戻り何食わぬ顔で笑顔を振り撒く夫と共に自宅へ帰宅した。
「あら、今日は早かったわね」
自宅では義理の母が寛いでいた。
わたくしの両親が他界してから入り浸るようになったのだ。平気な顔で泊まっていくし、使用人をこき使うし、母の遺品を漁ろうとするしで個人的にはあまり好きではない。
母の遺品は、ひとつ盗られた後に全て地下の宝物庫に移した。夫も知らない部屋だからバレる事はない。返せと泣いたら、故人の遺品は寄付するものよ。全てわたくしが貰ってあげると言い出したからやり返す事にしたの。
母の遺品を漁ろうとまた現れた時、何も無いと大騒ぎしたわ。お義母様のアドバイス通り全て寄付いたしました。隣国の孤児院に送りましたのと言ったら口をあんぐり開けていたのは面白かった。
流石に、他国まで追いかける事はなかったわ。まさか、義理の娘の母親の遺品を盗みそこなったから返せなんて言えないわよね。
誰があんたなんかに寄付するものですか。
「母さん、来てたのか!」
「おかえりロバート! 今日もかっこいいわ。それなのに貴女は地味ねぇ。ロバートと釣り合わないわ」
始まったわね。
ロバートは見た目はいいけど中身は空っぽ。わたくしの事を気に入らないお母様の言葉を聞いて、どんどんわたくしを蔑むようになった。
うちの両親が生きていた頃はまだ良かったんだけど、今は酷いわね。
絶対証拠を集めて離婚してやるわ。
その為には、この男をもっと調子に乗らせて泳がせないと。
「では、地味なわたくしはこれで失礼致しますわ。あなた、どうか親子で仲良くなさって下さいませ。そうそう、わたくしは明日から領地の視察に参ります。ご一緒にいかがですか?」
「いや、母さんが来てるからやめておくよ」
「承知しました。では親子水入らずでゆっくりなさって下さい」
「あら、アンタ居ないの?」
「ええ、仕事がありまして」
「ふん、女のくせに仕事、仕事って……もっとロバートを支えなさい」
貴女の息子が全く働かないからでしょう?!
当主はわたくしだから良いけど、あ、いや、やっぱり良くないわ。
大丈夫、離婚すればこの母親ともおさらばよ。
あー……それが一番嬉しいかも。
とにかく、月のものが来るまではこの家から出るわ。万が一妊娠していたら面倒な事になる。ま、子が出来てたら出来てたでやりようはあるけど……妊娠してない方がスムーズなのは確かだ。
離婚の時、お腹に子が居るか魔法で調べられる。子が居るともう一度話し合いましょうと裁定され、離婚が厳しくなるわ。
それでも離婚できるくらい証拠を集めるつもりだけどね。
幸い、結婚した時に交わした婚姻契約書には不倫をしたら即離婚と書かれてる。もちろん、慰謝料もたっぷり設定されてるから貰うわ。
あの男の家は同じ侯爵家だけど、資産は少ない。領地経営が下手なだけだと思うけど、歴史はある家だから地位は高いのよね。
うちは歴史は浅いが資産はある。だから、政略結婚するにはちょうど良かった。こんなクズな性格だって分かってたらお父様が結婚を決める筈がない。結婚してすぐ、両親は事故で死んでしまった。
それから、コイツらは我が家を自分達のものだと勘違いしている。
今までは腹が立ってケンカしていたけど、今はどうぞこのままボロを出し続けてって思う。
「母さん、そんな事言わないで。ナタリアは領民の為、僕の為に働いてるんだから」
「ロバートは優しいわねぇ! なんて素敵なの! さすが当主だわ!」
「……なら、旦那様が当主として視察をなさいますか」
「あ、いや、僕はやめておく。今回はナタリアに任せるよ」
わたくしが本当は当主だと分かっているのでしょうか。この男の本心がわかりません。
ふと、パーネル男爵の魔法が羨ましくなりましたわ。ずっと人の本心を聞いたら辛いですけど、好きな時に使えるのは良いなと思いました。
けど、彼の辛そうなお顔を思い出すと……やはり、心を覗けるのは良い事ばかりではないのでしょうね。
「あら、今日は早かったわね」
自宅では義理の母が寛いでいた。
わたくしの両親が他界してから入り浸るようになったのだ。平気な顔で泊まっていくし、使用人をこき使うし、母の遺品を漁ろうとするしで個人的にはあまり好きではない。
母の遺品は、ひとつ盗られた後に全て地下の宝物庫に移した。夫も知らない部屋だからバレる事はない。返せと泣いたら、故人の遺品は寄付するものよ。全てわたくしが貰ってあげると言い出したからやり返す事にしたの。
母の遺品を漁ろうとまた現れた時、何も無いと大騒ぎしたわ。お義母様のアドバイス通り全て寄付いたしました。隣国の孤児院に送りましたのと言ったら口をあんぐり開けていたのは面白かった。
流石に、他国まで追いかける事はなかったわ。まさか、義理の娘の母親の遺品を盗みそこなったから返せなんて言えないわよね。
誰があんたなんかに寄付するものですか。
「母さん、来てたのか!」
「おかえりロバート! 今日もかっこいいわ。それなのに貴女は地味ねぇ。ロバートと釣り合わないわ」
始まったわね。
ロバートは見た目はいいけど中身は空っぽ。わたくしの事を気に入らないお母様の言葉を聞いて、どんどんわたくしを蔑むようになった。
うちの両親が生きていた頃はまだ良かったんだけど、今は酷いわね。
絶対証拠を集めて離婚してやるわ。
その為には、この男をもっと調子に乗らせて泳がせないと。
「では、地味なわたくしはこれで失礼致しますわ。あなた、どうか親子で仲良くなさって下さいませ。そうそう、わたくしは明日から領地の視察に参ります。ご一緒にいかがですか?」
「いや、母さんが来てるからやめておくよ」
「承知しました。では親子水入らずでゆっくりなさって下さい」
「あら、アンタ居ないの?」
「ええ、仕事がありまして」
「ふん、女のくせに仕事、仕事って……もっとロバートを支えなさい」
貴女の息子が全く働かないからでしょう?!
当主はわたくしだから良いけど、あ、いや、やっぱり良くないわ。
大丈夫、離婚すればこの母親ともおさらばよ。
あー……それが一番嬉しいかも。
とにかく、月のものが来るまではこの家から出るわ。万が一妊娠していたら面倒な事になる。ま、子が出来てたら出来てたでやりようはあるけど……妊娠してない方がスムーズなのは確かだ。
離婚の時、お腹に子が居るか魔法で調べられる。子が居るともう一度話し合いましょうと裁定され、離婚が厳しくなるわ。
それでも離婚できるくらい証拠を集めるつもりだけどね。
幸い、結婚した時に交わした婚姻契約書には不倫をしたら即離婚と書かれてる。もちろん、慰謝料もたっぷり設定されてるから貰うわ。
あの男の家は同じ侯爵家だけど、資産は少ない。領地経営が下手なだけだと思うけど、歴史はある家だから地位は高いのよね。
うちは歴史は浅いが資産はある。だから、政略結婚するにはちょうど良かった。こんなクズな性格だって分かってたらお父様が結婚を決める筈がない。結婚してすぐ、両親は事故で死んでしまった。
それから、コイツらは我が家を自分達のものだと勘違いしている。
今までは腹が立ってケンカしていたけど、今はどうぞこのままボロを出し続けてって思う。
「母さん、そんな事言わないで。ナタリアは領民の為、僕の為に働いてるんだから」
「ロバートは優しいわねぇ! なんて素敵なの! さすが当主だわ!」
「……なら、旦那様が当主として視察をなさいますか」
「あ、いや、僕はやめておく。今回はナタリアに任せるよ」
わたくしが本当は当主だと分かっているのでしょうか。この男の本心がわかりません。
ふと、パーネル男爵の魔法が羨ましくなりましたわ。ずっと人の本心を聞いたら辛いですけど、好きな時に使えるのは良いなと思いました。
けど、彼の辛そうなお顔を思い出すと……やはり、心を覗けるのは良い事ばかりではないのでしょうね。
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