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「安心して。アイツはお飾りの妻だから。それに、帰る身内もいない女を放り出したりしたら外聞が悪いだろ? だから……さ。俺が愛してるのは君だけだよ」
わたくしは、侯爵夫人。
みんなそう思ってる。
だけど、違う。
侯爵家の当主はわたくし。あの男は侯爵家当主の配偶者でしかない。わたくしと結婚している限りは侯爵家の関係者だが、別れたらあの男は平民になる。
「ふふっ、悪い男ね。その台詞、何人の女に言ってるの?」
「君だけだよ。まぁ、俺は侯爵家の当主だから女は群がってくるけどね」
……違うわよ。侯爵家の当主は、わたくしよ。
「なら、わたくしを侯爵夫人にしてちょうだいよ。男爵夫人なんてもう真っ平。それに、貴方みたいな素敵な姿じゃなくて、お腹も出てるし、田舎臭いんだもの」
「ふ……君も悪い女じゃないか」
ちょっとぉ! こんな所でおっぱじめないでよ!
ここは、王宮よ?!
しかも、神聖な薔薇のある王妃様の庭園!
バレたらこの猿共は打首だろうし、男爵家は取り潰し、うちだって大ダメージだ。
「とにかく……アイツらの情事が見られないようにしないと……」
幸い、この庭園の入り口と出口は同じ。しかも、一つだけ。狭い庭園だし、他の方が入って来た様子はない。それなら入り口で見張って人が入らないようにすれば良い。
あの男は、色々と早いからすぐに終わる筈だ。
「きゃっ……!」
慌てて入り口に戻ろうとすると、大きな岩にぶつかった。しまった、動揺していたわ。
しかし、岩にぶつかったにしては柔らかい。よく見ると、涙をポロポロ流す男性だった。
これ、きっとあの女の夫よね?
今にも大声で泣きそうな男性を引っ張って、無理矢理庭園の入り口まで戻る。わたくしが居るとバレたら、あの男はまた媚を売ってくるだろう。
あー無理、ほんと無理。
とにかく不貞の証拠を集めて離婚したい。
他の場所でおっぱじめたのなら、人を呼んで現場を押さえてすぐに離婚を突きつけられた。けど、場所が悪すぎる。
あの庭園は、王家が大事にしている神聖な場所。今は王妃様の誕生日記念で公開されてるけど、普段は王族と専属の庭師しか入れない。
もー! 大事な場所なら見張りくらい置いておいてよね!
「あの、それは無粋だと王妃様が仰ったのです。だから、見張りは居なくて……」
「え……わたくし……声に出しておりました?」
「いえ、出しておられません。僕は、人の心が読めるのです」
は……?!
う、嘘でしょ……?
心が読める魔法なんて聞いた事ないわよ?!
わたくしは、侯爵夫人。
みんなそう思ってる。
だけど、違う。
侯爵家の当主はわたくし。あの男は侯爵家当主の配偶者でしかない。わたくしと結婚している限りは侯爵家の関係者だが、別れたらあの男は平民になる。
「ふふっ、悪い男ね。その台詞、何人の女に言ってるの?」
「君だけだよ。まぁ、俺は侯爵家の当主だから女は群がってくるけどね」
……違うわよ。侯爵家の当主は、わたくしよ。
「なら、わたくしを侯爵夫人にしてちょうだいよ。男爵夫人なんてもう真っ平。それに、貴方みたいな素敵な姿じゃなくて、お腹も出てるし、田舎臭いんだもの」
「ふ……君も悪い女じゃないか」
ちょっとぉ! こんな所でおっぱじめないでよ!
ここは、王宮よ?!
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「とにかく……アイツらの情事が見られないようにしないと……」
幸い、この庭園の入り口と出口は同じ。しかも、一つだけ。狭い庭園だし、他の方が入って来た様子はない。それなら入り口で見張って人が入らないようにすれば良い。
あの男は、色々と早いからすぐに終わる筈だ。
「きゃっ……!」
慌てて入り口に戻ろうとすると、大きな岩にぶつかった。しまった、動揺していたわ。
しかし、岩にぶつかったにしては柔らかい。よく見ると、涙をポロポロ流す男性だった。
これ、きっとあの女の夫よね?
今にも大声で泣きそうな男性を引っ張って、無理矢理庭園の入り口まで戻る。わたくしが居るとバレたら、あの男はまた媚を売ってくるだろう。
あー無理、ほんと無理。
とにかく不貞の証拠を集めて離婚したい。
他の場所でおっぱじめたのなら、人を呼んで現場を押さえてすぐに離婚を突きつけられた。けど、場所が悪すぎる。
あの庭園は、王家が大事にしている神聖な場所。今は王妃様の誕生日記念で公開されてるけど、普段は王族と専属の庭師しか入れない。
もー! 大事な場所なら見張りくらい置いておいてよね!
「あの、それは無粋だと王妃様が仰ったのです。だから、見張りは居なくて……」
「え……わたくし……声に出しておりました?」
「いえ、出しておられません。僕は、人の心が読めるのです」
は……?!
う、嘘でしょ……?
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