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番外編

マリオン視点 3

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僕がアマンダに近寄ったら、黒歴史を暴く程度で済む訳ない。なにせ、僕は前科があるのだから。

油断しては駄目だ!
あの悪魔は、何をしてくるか分からない。

とにかく兄上の忠告を守る。絶対に自分からアマンダに話しかけない。

そう、思っていたのに。

久しぶりに会ったアマンダは、ますます美しくなっていた。まるで可憐な天使のようだ。

儀式が終わり、我々の仕事は終了した。参加している貴族達と話す者も多いが必須ではない。僕はすぐにでも逃げようと思っていた。

それなのに、アマンダから目が離せない。

思わず、声をかけたくなる。しかし次の瞬間、アマンダの隣にいる悪魔が微笑んだ。

「久しぶりだな。マリオン」

恐怖で身体が動かない。悪魔は、ますます美しくなっていた。人間離れした美しさだ。やはり悪魔だ。

悪魔はアマンダの腰を抱き、離れようとしない。くっつきすぎだろ!

「婚約者が出来たんだろう? 今度紹介してくれよ」

笑顔が怖い!
物凄い圧があるんだが?!

何故アマンダは悪魔をうっとりと眺めているんだ!

駄目だ。怖くて、声が出ない。

「今度騎士団に来る予定がある。アルフレッドが慰問に来る日だ。その時に紹介したらどうだ?」

兄上が、助けてくれた。ありがとうございます兄上! 一生ついて行きます!

「ああ……そういえばマリオンの婚約者は騎士団長の妹さんでしたね」

悪魔は面白くなさそうに目を伏せる。くっそ、そんな姿も美しい! やっぱりこの男は悪魔だ!

「とっても可愛らしい方なんですよ。この間、レベッカに紹介して頂きましたの。レベッカに鍛えられてるから、刺繍がとってもお上手なんです。マリオン様への……あっ」

「アマンダ、それは内緒なんじゃないの?」

「あぅ……ごめんなさい。マリオン様、今のは聞かなかった事にして下さいまし」

か、可愛い。
頬を染め、申し訳なさそうに目を伏せるアマンダ。なんだこれ、めちゃくちゃ可愛いじゃないか。アマンダは元々可愛かった。けど今は美しい。完璧なスタイルに可憐な顔立ち。

ああ……どうして僕ではなく……。

「マリオン、後で話がある」

低く、美しい声がした。

まずい!
悪魔が微笑んでいる!!!

僕は何をやっているんだ!
あれほど駄目だと言われたのに!

せっかくフォローしようとしてくれた兄も呆れた顔をしている。そりゃそうだよ! 何やってんだ僕!

絶体絶命かと思われたが、僕には天使がついていた。

「アル様。今日はお仕事の後はずっと一緒にいて下さるのではなかったのですか?」

アマンダぁぁ……!
君はやっぱり天使だっ……!

悪魔はアマンダが頬を膨らませると僕の事など忘れてしまったようだ。良かった……良かった……ありがとうアマンダ!
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