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番外編

第二王子視点 3

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心理ダメージが大きいのはアルフレッドの方だ。

私も一度やられかけた。アマンダから挨拶して来たんだから勘弁してくれと懇願し、公表は免れた。それ以来アマンダと長く話す時は妻を連れて行くよう心がけている。

母が幽閉された事で弟や妹達も少しずつ変わり始めた。マリオンは別人のように勉強するようになった。理由は分からないが、アルフレッドを見ると怯えるのできっと何かやったんだろうなと思う。

マリオンはアマンダを狙っていた。

我が弟ながら凄いと思う。無知とは恐ろしい。知っている者は、絶対にアマンダに手を出さない。私なんて、妻が居ないとアマンダと話すのも怖い。どこでアルフレッドの怒りを買うか分からないからな。だが、妻が一緒なら大丈夫だ。要は、誰であってもアマンダが男と一対一で話すのが許せないらしい。

あんなに歳が離れているのに、アルフレッドはアマンダの事になると心が狭い。まるでアマンダの方が歳上ではないかと思う事もある。だが、アマンダはアルフレッドがどれだけ束縛しても嬉しそうに微笑んでいる。アルフレッドもアマンダが嫌がる事は決してしない。お互い心から愛し合っている理想の夫婦だ。

アルフレッドはアマンダに言い寄った貴族やアマンダを害そうとした者達をきっちり把握している。リストにしてあり、少しずつ報復しているそうだ。リストは見せて貰ったが、自分でやるから手を出さないでくれと頼まれた。何をするか知らないし、知りたくもないから違法にならない範囲で好きにすれば良いと伝えたら、歌う為にも違法な事はしないと笑っていた。歌がなければ違法な事もしたのだろうか? よく分からんがアルフレッドの才能を見抜いたアマンダにこっそり祈りを捧げておいた。

先日ステージに乱入した令嬢も、無事では済まないだろう。

私は王弟だから、高貴な方が相手でも強引な手段を取れる。件の令嬢は早急に排除出来たので滞りなく演奏会は進んだが、アマンダが退席してしまったので新曲の発表を遅らせると突然言い出した時は焦った。新曲を楽しみにしている者達が暴れ出すのではないか。慌てて各所に指示を飛ばした。

だが、それもアルフレッドの作戦だったのだ。

そのタイミングで、身なりを整えたアマンダが帰って来た。それはそれは感動的だった。そしてそのまま、アマンダに捧げるように新曲を歌ったのだ。

観客は感動して泣いている者までいた。

アルフレッドは最後に満面の笑みで観客に言った。

「本日は、ありがとうございました。突然新曲を発表しないなどと言って混乱させて申し訳ありません。初めて歌う歌は緊張するので、妻が見守ってくれないと歌えないのです。アマンダ、帰って来てくれてありがとう。大丈夫かい?」

「怪我はしておりませんし大丈夫ですわ。少し汚れただけですし」

「もし今度同じような事があれば、私はもう歌えないでしょう。アマンダ、無事でよかった。皆様も、心配をかけて申し訳ありませんでした。もうすぐアマンダの誕生日なので、アマンダの為に新曲を準備しました。新曲はこれで終わりの予定でしたが、もう一曲歌います」

大歓声だった。今回の事で改めて観客は理解しただろう。アマンダがいなければ、アルフレッドの素晴らしい歌は聞けないのだと。

アルフレッドの歌は我が国の、いや、世界の宝。新曲は誰もが早く聴きたいと願う。新曲を発表する時の演奏会のチケットは普段の倍の競争率だ。今回はアルフレッドが帰国したばかりということもあり、国を去る訳ではないと示す為多くの王侯貴族を招待していた。

そんな中、アマンダがいないと新曲は歌えないと宣言するとは……相変わらずアルフレッドは恐ろしい。

「兄貴、あの女の正体が分かった!」

アルフレッドが訪ねて来た。

私は妻にこっそりアマンダを連れて来るように頼んだ。アマンダの事になると暴走しがちなアルフレッドを止められるのは、アマンダだけなのだから。
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