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番外編

王太子視点 3

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「王妃様が不正を働いておられます。このまま罪を重ねれば処刑されるでしょう。その前に止めたいのです。今なら、命は助かります。協力して下さい」

アルフレッドの話は信憑性があった。何故私に話をするのかと聞いたら、アルフレッドは王に相応しいのは私だと断言した。それなら、アルフレッドはなにを望むのかと聞けば、信じられない答えが返って来た。

「アマンダです」

「確かにアマンダは優秀だと聞いてる。マリオンがアマンダとの婚約を狙っているそうじゃないか。アルフレッドもアマンダを離したくないのは王位を狙っているからじゃないのか?」

「要りませんよそんなの。アマンダだってテイラー公爵家だって俺が王になる事なんて望んでません。俺が欲しいのは、アマンダ自身です。アマンダと結婚する為に王族の地位が必要だから王子をやってるだけですよ」

「なんで、そこまで……」

「アマンダを愛しているからです。あの子は俺の婚約者だ。誰にも渡すつもりはありませんよ。それで、協力するんですか? しないんですか? さっさと決めて下さい。一応言っておきますけど、この事を王妃様に密告しても無駄ですからね。兄上はそこまで王妃様に信用されていないでしょう? それに、母親の不正を泣く泣く暴く息子、王に相応しい振る舞いだと思いませんか?」

「アルフレッドは、王になりたくないのか?」

「絶対嫌です。兄上は王になりたい、俺は王になりたくない。利害関係は一致してますよね? 俺と組む方が、得だと思いませんか?」

堂々と言い切るアルフレッドに逆らえない。それは、私にはない王者の風格。

弟を恐ろしいと思った。アルフレッドが王になりたくないと言ってくれて良かったと思った。

アマンダが倒れて馬を飛ばして隣国から帰国したと聞いた時は、弟としてではなくひとりの人間としてアルフレッドの事を凄いと思った。

私はアルフレッドのように婚約者を愛せるのだろうか?

そんな不安を払拭してくれたのは、アルフレッドが溺愛しているアマンダだった。アマンダが間に入ると、なぜか私達の関係はうまくいった。妻はアマンダと話すと優しい気持ちになり幸せだと褒めた。その笑顔が可愛くて、妻を好きになった。アルフレッドには敵わないが、妻を心から愛せるようになった。王だけは側妃が認められている。アルフレッドが王になりたくない理由のひとつを知った気がした。

今のところ側妃を娶るつもりはないが、父達のような例もある。私は妻に毎日毎日、愛してると伝え続けた。

父はきっと、言葉が足りなかったのだろう。私が王になってからは、今までのすれ違いを埋めるように幽閉された母の元に通い続けているそうだ。

使用人達も、怯えず楽しそうに働くようになった。

母は2度と外に出せないが、父が通うのは自由だ。両親の関係が良くなる事を願っている。
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