上 下
35 / 56

34 【アルフレッド視点】

しおりを挟む
王妃は自分のお気に入りのマリオンに王位を継がせようとしてた。勉強嫌いで、見た目ばっか拘るようなヤツ、王になれる訳ねーだろ。

最初は兄を王にして、王妃を大人しくさせるだけにしようと思った。けど、アマンダとマリオンを婚約させようとしてるって聞いて気が変わった。

隠しておいたアマンダの実力も、調べ尽くしてやがった。

邪魔になる俺を国外に出す為に、キャサリン王女と俺の婚約を狙っていると知った時は一瞬だけ殺意が湧いた。

俺は本気で、王妃とその実家を潰す事にした。俺がアマンダを離さないと分かった王妃の実家からそこそこ脅されたが、身体は鍛えてたし、騎士団やキャサリン王女の影の手助けもあり、なんとか無事に過ごせた。

そのついでに、アマンダと仲良くなったレベッカ嬢の件で騎士団長と密約を交わした。騎士団長は俺に負けず劣らずレベッカ嬢を溺愛していたから、話は簡単に済んだ。まだ証拠は揃ってねぇが、王妃の実家は不正をしている可能性が高い。それでもレベッカ嬢と結婚するのか? そう聞いただけだけど、騎士団長はレベッカ嬢自身が不正をしていないのなら気にしないと言ってた。騎士団長はすっげえかっこよかった。俺もアマンダに何があっても守ろう。そう思った。

王妃の実家は没落するだろうけど、不正の額もあんまり多くねえから当主の挿げ替えと爵位の降格、王妃の幽閉くらいで済むだろう。

……このまま1年くらい放っておけば、全員処刑くらい出来るだろうけど。アマンダがレベッカ嬢と親しくならなければそうするつもりだった。

アマンダはいつも無自覚に人を救うんだな。レベッカ嬢もあんまり評判は良くなかったのに、今じゃ厳しくも優しい騎士団長夫人として大人気だ。

それも全部、アマンダが社交の場でレベッカ嬢と親しく話すようになってから。

アマンダが褒める人なら、きっと良い人なんだろう。そう思わせる魅力がアマンダにはある。王妃やマリオンがどうしてもアマンダを欲しがるのもその為だ。

めんどくせぇゴタゴタにアマンダを巻き込みたくなくて、接触を絶った。けど、まさかあんな形でアマンダと会うとは思わなかった。

「感謝してるわ。アマンダにも世話になったし、今度お礼に行くわね」

恋人に会えず情緒不安定になったキャサリン王女は、俺を婚約者にとしつこく勧める王妃が嫌になり城を無断で抜け出した。

たまたま見つけて保護してくれたのがアマンダだ。アマンダじゃなければ、もっと大騒ぎになっていただろう。下手したら責任を取って俺は廃嫡。アマンダとの婚約も解消だ。

王子の身分は要らねぇが、アマンダだけは譲れねぇ。王妃の不興を買うのは承知で、堂々と宣戦布告をした。そしたら、王位を狙うつもりかって激昂された。

王妃を追い詰めるには、キャサリン王女の協力は必要不可欠だった。だから嫌な噂を王妃が触れ回っても、放置した。アマンダなら、こんな噂に惑わされる訳ねぇって思ってた。

キャサリン王女を迎えに行った日も、いつものように優しく笑っていた。だから、あまり説明もせずに帰った。

けど、あの後くらいから俺とキャサリン王女が恋仲だという噂が市民にまで回るようになってしまった。

「結婚してから来い。でねーとまた変な噂が立つ」

「そうね。わたくしもアルフレッドも、婚約者一筋ですもの」

「ああ、その通りだ。悪いけどアマンダの方が大事だ。俺は充分やっただろ。万が一の時は、亡命させろ。それで恩返しは終わりだ」

「分かってる。お父様にも話は通してあるから困ったらいつでも言って。我が国はアルフレッドを支持するわ」

「別に俺が王になる訳じゃねぇし、そこは適当にやってくれよ。頼むから、俺を支持するなんて言うなよ。めんどくせぇ事になる。とにかく、今後も平和に過ごせる事を願ってるぜ」

戦争なんて勘弁だ。
今のところ揉めてる国はねぇが、いつ何が起こるか分からねえ。

アマンダは平和な国で生きてたんだ。怖い思いをさせてたまるか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?

イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」 私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。 最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。 全6話、完結済。 リクエストにお応えした作品です。 単体でも読めると思いますが、 ①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】 母主人公 ※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。 ②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】 娘主人公 を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。

初夜をボイコットされたお飾り妻は離婚後に正統派王子に溺愛される

きのと
恋愛
「お前を抱く気がしないだけだ」――初夜、新妻のアビゲイルにそう言い放ち、愛人のもとに出かけた夫ローマン。 それが虚しい結婚生活の始まりだった。借金返済のための政略結婚とはいえ、仲の良い夫婦になりたいと願っていたアビゲイルの思いは打ち砕かれる。 しかし、日々の孤独を紛らわすために再開したアクセサリー作りでジュエリーデザイナーとしての才能を開花させることに。粗暴な夫との離婚、そして第二王子エリオットと運命の出会いをするが……?

ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして

夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。  おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子  設定ゆるゆるのラブコメディです。

処理中です...