33 / 56
32
しおりを挟む
「レベッカ様! 大丈夫ですか?!」
「アマンダ!!! ようやく、捕まえたわ。ああもう、こんなに痩せて! ちゃんと食べているの?!」
へ?
レベッカ様はわたくしをしっかりと抱きしめ、離さない。ってか、離れられない。
「さすがレベッカ様だ。安心しろ。もうすぐアルフレッドが来るからな」
お兄様が力強く微笑んだ。
「アマンダ! 良かった! 良かったわ無事で!」
「アマンダ……。生きてる……良かったわ……」
お母様とお姉様が泣いてる。
「「姉様!!!」」
弟や妹が、必死で抱きついて来る。
「アマンダ……つらい思いをさせてすまなかった」
どうしてお父様が謝るの?
お父様は何も悪くないのに。
「お嬢様……ご無事でようございました……」
アンリを始め、使用人達がみんな泣いてる。
「レベッカ様……困ってらっしゃるんじゃ……」
「そうよ! 困ってるわ! 親友が引き篭もってるって聞いて、生きた心地がしなかったわ! けど、わたくしが無理に尋ねたらもっとアマンダの負担になるんじゃないかって思って……けど、アルフレッド殿下から手紙が来て、わたくしが困ってるって言えばアマンダは出て来るって書いてあったの。だから一か八か来てみたのよ!」
「アル様が……?」
「もうすぐアルフレッドが来る。会えなくて寂しかったんだろう? その上、あんな訳の分からない噂まで立って。安心しろ。アルフレッドは下らない噂なんかに惑わされない」
「……けど、アル様はもう……」
「アマンダ!」
懐かしい声がした。
ずっと聞きたかった声が。
「アル様?」
息を切らして、髪はボサボサ。髭も伸びてる。服だって擦り切れてる。それでもやっぱり、アル様が世界一かっこいい。
「ごめん。こんな姿で……かっこわるいよな」
「いいえ! アル様は世界一かっこいいですわ!」
「汚れてるし、汗臭いし……こんなのアイドルじゃない。それでも良いならその……抱きしめても良い?」
「はい……勿論です……」
「アマンダ、愛してる」
初めて聞いたアル様の愛の告白。
そうか、今までの事は……所詮噂だったんだ。
何度違うと呟いたか分からない。
たくさんの人に誤解され、家族や大切な友人は違うと否定してくれた。
だけどわたくしは、アル様と王女様の仲の良い様子を見て……全て諦めてしまっていた。
そんな数々の不安は、たった一言で全て霧散した。良かった、わたくしはアル様のお側に居られる。あれ……? そういえば……この世界にアイドルなんて言葉はない。わたくしも、一度も口にした事がない。
どうして、アル様はアイドルじゃないなんて言ったの?
「アル様、アイドルって……?」
「ようやく気が付いた? さぁ、最高の時間をプレゼントするよ。全て忘れて、今夜は騒げ!」
耳元で誰にも聞こえないように呟いた台詞は。
前世で何度も聞いたユナ様のライブの決め台詞。
まさか、まさか、まさか……!
「アマンダは以前はなんて名前だった? 俺はね、ユナって名前でアイドルやってたんだ」
そう言って笑うアル様の笑顔は、ユナ様にそっくりだった。
「アマンダ!!! ようやく、捕まえたわ。ああもう、こんなに痩せて! ちゃんと食べているの?!」
へ?
レベッカ様はわたくしをしっかりと抱きしめ、離さない。ってか、離れられない。
「さすがレベッカ様だ。安心しろ。もうすぐアルフレッドが来るからな」
お兄様が力強く微笑んだ。
「アマンダ! 良かった! 良かったわ無事で!」
「アマンダ……。生きてる……良かったわ……」
お母様とお姉様が泣いてる。
「「姉様!!!」」
弟や妹が、必死で抱きついて来る。
「アマンダ……つらい思いをさせてすまなかった」
どうしてお父様が謝るの?
お父様は何も悪くないのに。
「お嬢様……ご無事でようございました……」
アンリを始め、使用人達がみんな泣いてる。
「レベッカ様……困ってらっしゃるんじゃ……」
「そうよ! 困ってるわ! 親友が引き篭もってるって聞いて、生きた心地がしなかったわ! けど、わたくしが無理に尋ねたらもっとアマンダの負担になるんじゃないかって思って……けど、アルフレッド殿下から手紙が来て、わたくしが困ってるって言えばアマンダは出て来るって書いてあったの。だから一か八か来てみたのよ!」
「アル様が……?」
「もうすぐアルフレッドが来る。会えなくて寂しかったんだろう? その上、あんな訳の分からない噂まで立って。安心しろ。アルフレッドは下らない噂なんかに惑わされない」
「……けど、アル様はもう……」
「アマンダ!」
懐かしい声がした。
ずっと聞きたかった声が。
「アル様?」
息を切らして、髪はボサボサ。髭も伸びてる。服だって擦り切れてる。それでもやっぱり、アル様が世界一かっこいい。
「ごめん。こんな姿で……かっこわるいよな」
「いいえ! アル様は世界一かっこいいですわ!」
「汚れてるし、汗臭いし……こんなのアイドルじゃない。それでも良いならその……抱きしめても良い?」
「はい……勿論です……」
「アマンダ、愛してる」
初めて聞いたアル様の愛の告白。
そうか、今までの事は……所詮噂だったんだ。
何度違うと呟いたか分からない。
たくさんの人に誤解され、家族や大切な友人は違うと否定してくれた。
だけどわたくしは、アル様と王女様の仲の良い様子を見て……全て諦めてしまっていた。
そんな数々の不安は、たった一言で全て霧散した。良かった、わたくしはアル様のお側に居られる。あれ……? そういえば……この世界にアイドルなんて言葉はない。わたくしも、一度も口にした事がない。
どうして、アル様はアイドルじゃないなんて言ったの?
「アル様、アイドルって……?」
「ようやく気が付いた? さぁ、最高の時間をプレゼントするよ。全て忘れて、今夜は騒げ!」
耳元で誰にも聞こえないように呟いた台詞は。
前世で何度も聞いたユナ様のライブの決め台詞。
まさか、まさか、まさか……!
「アマンダは以前はなんて名前だった? 俺はね、ユナって名前でアイドルやってたんだ」
そう言って笑うアル様の笑顔は、ユナ様にそっくりだった。
16
お気に入りに追加
2,112
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる