前世の推しが婚約者になりました

編端みどり

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あれからどこに行っても、マリオン殿下との婚約を祝福される。
違うと否定しても、誰も信じない。

お父様が国王陛下に説明に行き、わたくしに非が無い事は分かっているとお言葉は頂いた。わたくしはまだ、アル様の婚約者だと。けど、状況は変わらなかった。

しかも、毎日のようにマリオン殿下が訪ねてくる。

いつ来るか分からないから、レベッカ様ともお会い出来ない。

そんな日々が3ヶ月続き……わたくしは心労で倒れてしまった。

家族がみんな心配してくれる。とても幸せな事だ。それなのに、わたくしの心は晴れなかった。

最近は、お兄様の顔を見ない。

こんな情けない妹、愛想を尽かされたかなぁ。いや……お兄様に限ってそんな事ないか……。

あんなに楽しかった読書も、文字を追うだけで頭に入ってこない。美味しかったケーキも、味がしない。

心配して毎日見舞いに来てくれる弟や妹の前で無様な姿は見せられない。そう思っているのに、身体がついていかない。

遂にわたくしは、誰とも会えなくなり部屋に引き篭もるようになった。部屋に鍵をかけ、誰とも会わない日々。

食事は窓から差し入れて貰っている。部屋にお風呂もトイレもあるから、完璧な引きこもりだ。

ずーっとベッドの上でぼんやりとする日々。

食器を返す時に、ありがとうとメモを書くのが精一杯。

ごめんなさい。
でももう無理なの。

貴族、怖い。
みんな笑顔なのに、怖い。

「アマンダ! アマンダ!」

毎日家族が扉の前から声を掛けてくれる。
嬉しいのに、幸せなのに……返事をする気力がない。

ドアを叩いて、生きてる事を伝える事しか出来ない。

ごめんなさい……。役に立たなくて……ごめんなさい。

毎日泣いているのに、涙が枯れる事はない。

そんな引きこもりの日々が、何日過ぎたか分からなくなった頃……ドアの前から懐かしい声がした。

「アマンダ! 助けて! 助けて下さいまし! お願い……開けて……わたくしもう……無理なのですわ……」

この、声は。

「レベッカ様……」

「アマンダ! アマンダよね! お願い! アマンダの力が必要なの! わたくしを……助けてちょうだい! このままではわたくしは……うっ……」

大変!
レベッカ様をお助けしなきゃ!

わたくしは鍵を開け、急いでドアを開けた。
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