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幸せなレベッカ様の結婚式から、1ヶ月が過ぎた。
あれから相変わらずアル様には会えていない。それどころか、アル様は予定より早く帰る事になったキャサリン王女の付き添いで隣国に行ってしまわれた。
まだ婚約解消の申し出はない。でも、覚悟は決めておくべきだろう。
刺繍したハンカチも渡せないままだ。別れるかもしれないわたくしからのハンカチなんて、邪魔になるかもしれないもの。
レベッカ様は、新婚旅行中だ。戻って来たら会おうと手紙が来た。今後は堂々と手紙のやり取りをして良いそうだ。それは嬉しいけど、やっぱり気分が晴れない。
そんな折、わたくしを訪ねて来たのはマリオン殿下だった。家族はみんな外出中。わたくしに用があると言われたら断る術はない。
「アマンダ、僕と結婚してよ」
ストレートな求婚ですね。
なんて素敵なんでしょう。
って、んな訳あるか!
舐めんな!
確かにわたくしはアル様に振られるかもしれないけど、アル様がわたくしとの婚約解消を望む事はあっても逆はない!
マリオン殿下がこんな事言ってくるって事は、アル様とキャサリン王女の婚約は既定路線なのだろう。ここでマリオン殿下の求婚を受ければ、わたくしへのダメージは最小限。でも知らん!
わたくしが信じるのはアル様の言葉だけ!
「わたくしは、アルフレッド殿下の婚約者です」
「婚約者を放っておく男なんてやめて、僕にしときなよ」
「マリオン殿下なら、婚約者になりたいと望む令嬢はたくさんいらっしゃるでしょう?」
「そりゃあね。けど、アマンダ以上に条件の良い令嬢は居ない」
「条件……ですか?」
「まず、筆頭公爵家で年が近く、賢く美しい。君以上に適任な女性は居ないよ。アマンダと婚約すれば、王位に手が届く」
「わたくしは妃教育を僅か半年しか受けておりません。王妃になんて、なれませんわ」
「やっぱりアイツは教えなかったんだね。妃教育をしなかったんじゃない。必要なかったんだよ」
「必要なかった?」
「そ、最近ようやく判明したんだけど、アマンダは妃教育どころか王妃教育の基礎も出来てるんだ。王家だけにしか教えられない事柄もあるけどそれは基礎が出来てればすぐ覚えられる。だってアマンダ、何カ国語喋れる?」
「……」
「黙って誤魔化しても駄目だからね。隣国の言葉は全て通訳無しで話せる事は調査済みだよ。王家の影を舐めないでよね」
「でしたら、わたくしがアルフレッド殿下を心からお慕いしている事もご存知の筈ですわ」
「それが分かんないんだよね。なんでそんなにアルフレッドを慕うの? 良いとこ無いじゃん」
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