27 / 56
26
しおりを挟む
「困るよお嬢ちゃん! 金払ってくれよ!」
ん? 泥棒?
ふと店主の大声を聞いて振り向くと、可愛らしい少女がオルゴールを抱えて店を出ようとしていた。
ってぇ! アレは!
「……キャサリン王女……」
まずい! まずいまずいまずい!
なんでここに王女様が居るか知らないけど、このままじゃ店主の首が物理的に飛ぶ!
「ごめんなさい。彼女は私の連れなの。私の支払いが済んだと勘違いしていて。アンリ、あのオルゴールを買うわ」
「かしこまりました」
「貴女は……アル……」
「しー! 今は黙っておいて下さいまし。とにかく、ここを出ます。穏便に」
店主に謝罪して、商品の代金を払い、ついでにいくつか高価な品も買い、多めに支払いをする。
「彼女の勘違いを、これで許して頂けるかしら? 店は出ていなかったんだから、厳密には泥棒ではないでしょう?」
高価な品を買い、チップも払った事で店主はキャサリン王女が高貴な方だと気が付いたみたいだ。周りを見渡すけど、キャサリン王女の護衛は居ない。
もう! どうなってんのよ!
「……けど、泥棒だろ?」
まだ搾り取れると思ったか。それも正しい。
「なら、これでどう? 忠告しておくわ。死にたくなければ、これで納めなさい。でないと、1時間後にこの店は無くなるわ。物理的にね」
本格的に脅す。わたくしにこっそり付いていた護衛を呼び、ニッコリ笑う。脅しだけど、許して。さすがに王女様はヤバいんだって!
「わ、分かった。これで良い」
「ありがとう。そうそう。貴方の作るオルゴールは素晴らしかったわ。今度是非、テイラー公爵家で購入させてね」
「は……。こ、公爵家……。し、失礼しました!」
「失礼したのはこちらだから。本当にごめんなさい。支払いはいつも任せきりだったから失敗してしまって。許して下さって嬉しいわ。次は、わたくしが望む曲をオルゴールにして下さる? もちろん、対価はしっかりお支払いするわ」
「はい! 喜んで!」
「後日伺うわ。きっとこの子が来るから覚えておいて。アンリ、お願いね。アル様の曲をオルゴールにして貰うの」
「それは素敵ですね! すぐ譜面をお届けします」
店主の怒りは収まった。キャサリン王女の護衛や影が見てるかどうかは分からないけど、後日うちが利用すると分かってる店は潰せないだろう。ちょっとがめつい所はあるが、この店のオルゴールは素晴らしかった。
会話を店主に聞かれる訳にいかないから、キャサリン王女の母国語で話す。
「キャサリン王女様、お一人ですか?」
「そうよ」
「お買い物は済みましたか?」
「ええ」
「城にお送りします」
「やだ!」
やだって……子どもかよ。
あーもー! 貴女のせいでアル様と会えないのに!
夜会の時のしっかりした様子はなく、むすっとしておられるキャサリン王女。
これ、放っておくのは無しよね。
「では、我が家にお越し下さい。護衛も付けずに街中を歩くのは危険です」
「分かったわ。アルフレッドの婚約者の家なら大丈夫だろうし」
チクリ。
胸が痛い。キャサリン王女は、アル様の婚約者だからわたくしを信じてくれた。それって……アル様がキャサリン王女に信頼されている証なのでは?
ああもう、ネガティブ禁止だってば!
わたくしはキャサリン王女の気が変わる前に急いで馬車に乗せ、家に連絡を入れた。
お忍びは終わりね。良いオルゴールの店が見つかったから良しとしましょう。
ん? 泥棒?
ふと店主の大声を聞いて振り向くと、可愛らしい少女がオルゴールを抱えて店を出ようとしていた。
ってぇ! アレは!
「……キャサリン王女……」
まずい! まずいまずいまずい!
なんでここに王女様が居るか知らないけど、このままじゃ店主の首が物理的に飛ぶ!
「ごめんなさい。彼女は私の連れなの。私の支払いが済んだと勘違いしていて。アンリ、あのオルゴールを買うわ」
「かしこまりました」
「貴女は……アル……」
「しー! 今は黙っておいて下さいまし。とにかく、ここを出ます。穏便に」
店主に謝罪して、商品の代金を払い、ついでにいくつか高価な品も買い、多めに支払いをする。
「彼女の勘違いを、これで許して頂けるかしら? 店は出ていなかったんだから、厳密には泥棒ではないでしょう?」
高価な品を買い、チップも払った事で店主はキャサリン王女が高貴な方だと気が付いたみたいだ。周りを見渡すけど、キャサリン王女の護衛は居ない。
もう! どうなってんのよ!
「……けど、泥棒だろ?」
まだ搾り取れると思ったか。それも正しい。
「なら、これでどう? 忠告しておくわ。死にたくなければ、これで納めなさい。でないと、1時間後にこの店は無くなるわ。物理的にね」
本格的に脅す。わたくしにこっそり付いていた護衛を呼び、ニッコリ笑う。脅しだけど、許して。さすがに王女様はヤバいんだって!
「わ、分かった。これで良い」
「ありがとう。そうそう。貴方の作るオルゴールは素晴らしかったわ。今度是非、テイラー公爵家で購入させてね」
「は……。こ、公爵家……。し、失礼しました!」
「失礼したのはこちらだから。本当にごめんなさい。支払いはいつも任せきりだったから失敗してしまって。許して下さって嬉しいわ。次は、わたくしが望む曲をオルゴールにして下さる? もちろん、対価はしっかりお支払いするわ」
「はい! 喜んで!」
「後日伺うわ。きっとこの子が来るから覚えておいて。アンリ、お願いね。アル様の曲をオルゴールにして貰うの」
「それは素敵ですね! すぐ譜面をお届けします」
店主の怒りは収まった。キャサリン王女の護衛や影が見てるかどうかは分からないけど、後日うちが利用すると分かってる店は潰せないだろう。ちょっとがめつい所はあるが、この店のオルゴールは素晴らしかった。
会話を店主に聞かれる訳にいかないから、キャサリン王女の母国語で話す。
「キャサリン王女様、お一人ですか?」
「そうよ」
「お買い物は済みましたか?」
「ええ」
「城にお送りします」
「やだ!」
やだって……子どもかよ。
あーもー! 貴女のせいでアル様と会えないのに!
夜会の時のしっかりした様子はなく、むすっとしておられるキャサリン王女。
これ、放っておくのは無しよね。
「では、我が家にお越し下さい。護衛も付けずに街中を歩くのは危険です」
「分かったわ。アルフレッドの婚約者の家なら大丈夫だろうし」
チクリ。
胸が痛い。キャサリン王女は、アル様の婚約者だからわたくしを信じてくれた。それって……アル様がキャサリン王女に信頼されている証なのでは?
ああもう、ネガティブ禁止だってば!
わたくしはキャサリン王女の気が変わる前に急いで馬車に乗せ、家に連絡を入れた。
お忍びは終わりね。良いオルゴールの店が見つかったから良しとしましょう。
15
お気に入りに追加
2,100
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
さこの
恋愛
婚約者の侯爵令嬢セリーナが好きすぎて話しかけることができなくさらに近くに寄れないジェフェリー。
そんなジェフェリーに嫌われていると思って婚約をなかった事にして、自由にしてあげたいセリーナ。
それをまた勘違いして何故か自分が選ばれると思っている平民ジュリアナ。
あくまで架空のゆる設定です。
ホットランキング入りしました。ありがとうございます!!
2021/08/29
*全三十話です。執筆済みです
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる