19 / 56
18
しおりを挟む
アル様がお城に戻られてから、あっという間に半年が過ぎた。
アル様は定期的に来てくれる。頻度は減ったけど、歌やダンスも見せてくれる。けど、足りない。特に最近は、あまり会えていない。もう1ヶ月、お顔を拝見していない。
ずっと一緒に暮らしたせいで、寂しくて仕方ない。
「アマンダ、準備は出来た?」
「はい。完璧ですわ」
「相変わらず可愛いわ」
お母様がニコニコ笑って部屋に入って来た。お母様は厳しくて、優しい。自分の都合で怒ったりしないし、わたくしの意志を尊重して下さる。結婚式のドレスは最高の物を用意すると譲らなかったけど、それもわたくしを可愛がって下さっているから。以前の母親ならきっと結婚式をやるお金があるなら金を渡せって言うだろう……。
……っと、いけない。ついつい比べてしまっていたわ。あんな人とお母様を比べるなんて、お母様に失礼だ。
わたくしの家族は、テイラー公爵家。わたくしは貴族。自分の役目を果たさなければ。
隣国の王女様が訪問する事になり、歓迎の宴が開かれる事になった。我が家は、お父様とお母様、お兄様夫婦、そしてわたくしが参加する。
弟や妹達も参加したがっていたが、まだ成人していないので残念ながら不参加。
本来であればわたくしは婚約者のアル様にエスコートして頂くのだが、彼は王族。主催者側なので会場でお会いする事になっている。
最近は、王女様の案内があるからとお会い出来ていないから楽しみだ。……大丈夫よね。きっと今日は、アル様に会えるわよね。
「アマンダ、寂しいのは分かるけどしっかりしなさい。貴女がそんな顔をしていたら、アルフレッド殿下は全ての役目を放り出して貴女をエスコートしに来てしまうわよ」
「アル様はご自分の役目を放り出したりする方ではありませんわ」
「分かってないわね。貴女は……。っと、わたくしが言う事ではないわね。とにかく、アルフレッド殿下の妻に相応しい態度を取りなさい。今の貴女じゃ、連れて行けないわ」
そうだ。わたくしはアル様の妻になるんだから、もっとしっかりしないと。
「いい顔になったわね。男性にエスコートを申し込まれても、ダンスを申し込まれても、アルフレッド殿下以外の男性は断りなさい」
「もちろんですわ」
これは、お父様からもお兄様からも何度も言われた。例え王族が誘ってきても、いやむしろ王族だからこそ断れと。アル様の立場は決して良いものではない。もしわたくしが一度でも他の男性の手を取れば、それだけで婚約が解消されてしまうかもしれない。
断り方は、100パターンは頭に入っている。
わたくしの役目は、お家の為に社交をする事。そして、アル様の味方を増やす事。散々アル様の魅力を吹聴してきたから、同年代の令嬢はみんなアル様のファンになった。
けど、アル様と同世代の方はまだまだアル様を馬鹿にしている人が多い。だから今日は、アル様をファンを増やす。男性とはあまり話すなと言われているから、女性から攻略する。
へっぽこでも、営業してたんだ。
アル様の魅力なら、1000個は余裕で言える。アル様が冷遇されてるなんて許せない。みんなもっと、アル様の魅力を知るべきだわ。
アル様は定期的に来てくれる。頻度は減ったけど、歌やダンスも見せてくれる。けど、足りない。特に最近は、あまり会えていない。もう1ヶ月、お顔を拝見していない。
ずっと一緒に暮らしたせいで、寂しくて仕方ない。
「アマンダ、準備は出来た?」
「はい。完璧ですわ」
「相変わらず可愛いわ」
お母様がニコニコ笑って部屋に入って来た。お母様は厳しくて、優しい。自分の都合で怒ったりしないし、わたくしの意志を尊重して下さる。結婚式のドレスは最高の物を用意すると譲らなかったけど、それもわたくしを可愛がって下さっているから。以前の母親ならきっと結婚式をやるお金があるなら金を渡せって言うだろう……。
……っと、いけない。ついつい比べてしまっていたわ。あんな人とお母様を比べるなんて、お母様に失礼だ。
わたくしの家族は、テイラー公爵家。わたくしは貴族。自分の役目を果たさなければ。
隣国の王女様が訪問する事になり、歓迎の宴が開かれる事になった。我が家は、お父様とお母様、お兄様夫婦、そしてわたくしが参加する。
弟や妹達も参加したがっていたが、まだ成人していないので残念ながら不参加。
本来であればわたくしは婚約者のアル様にエスコートして頂くのだが、彼は王族。主催者側なので会場でお会いする事になっている。
最近は、王女様の案内があるからとお会い出来ていないから楽しみだ。……大丈夫よね。きっと今日は、アル様に会えるわよね。
「アマンダ、寂しいのは分かるけどしっかりしなさい。貴女がそんな顔をしていたら、アルフレッド殿下は全ての役目を放り出して貴女をエスコートしに来てしまうわよ」
「アル様はご自分の役目を放り出したりする方ではありませんわ」
「分かってないわね。貴女は……。っと、わたくしが言う事ではないわね。とにかく、アルフレッド殿下の妻に相応しい態度を取りなさい。今の貴女じゃ、連れて行けないわ」
そうだ。わたくしはアル様の妻になるんだから、もっとしっかりしないと。
「いい顔になったわね。男性にエスコートを申し込まれても、ダンスを申し込まれても、アルフレッド殿下以外の男性は断りなさい」
「もちろんですわ」
これは、お父様からもお兄様からも何度も言われた。例え王族が誘ってきても、いやむしろ王族だからこそ断れと。アル様の立場は決して良いものではない。もしわたくしが一度でも他の男性の手を取れば、それだけで婚約が解消されてしまうかもしれない。
断り方は、100パターンは頭に入っている。
わたくしの役目は、お家の為に社交をする事。そして、アル様の味方を増やす事。散々アル様の魅力を吹聴してきたから、同年代の令嬢はみんなアル様のファンになった。
けど、アル様と同世代の方はまだまだアル様を馬鹿にしている人が多い。だから今日は、アル様をファンを増やす。男性とはあまり話すなと言われているから、女性から攻略する。
へっぽこでも、営業してたんだ。
アル様の魅力なら、1000個は余裕で言える。アル様が冷遇されてるなんて許せない。みんなもっと、アル様の魅力を知るべきだわ。
25
お気に入りに追加
2,098
あなたにおすすめの小説
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜
悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜
嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。
陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。
無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。
夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。
怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
初夜をボイコットされたお飾り妻は離婚後に正統派王子に溺愛される
きのと
恋愛
「お前を抱く気がしないだけだ」――初夜、新妻のアビゲイルにそう言い放ち、愛人のもとに出かけた夫ローマン。
それが虚しい結婚生活の始まりだった。借金返済のための政略結婚とはいえ、仲の良い夫婦になりたいと願っていたアビゲイルの思いは打ち砕かれる。
しかし、日々の孤独を紛らわすために再開したアクセサリー作りでジュエリーデザイナーとしての才能を開花させることに。粗暴な夫との離婚、そして第二王子エリオットと運命の出会いをするが……?
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
【完】婚約者には好きな人がいるようなので身を引いて婚約解消しようと思います
咲貴
恋愛
「…セレーネ、大事な話が…」
「ヴァルフレード様、婚約を解消しましょう」
「…は?」
ヴァルフレード様はプレスティ伯爵家の嫡男で、モルテード子爵家の娘である私セレーネ・モルテードの婚約者だ。
精悍な顔立ちの寡黙な方で、騎士団に所属する騎士として日々精進されていてとても素敵な方。
私達の関係は良好なはずだったのに、どうやらヴァルフレード様には別に好きな人がいるみたいで…。
わかりました、私が悪役になりましょう。
※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる