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16【アルフレッド視点】
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ある日、アマンダが俺に茶会について来て欲しいと言った。アマンダをエスコートして茶会に行くと、周りは敵だらけだった。アマンダより幼いガキどもが大声で俺を馬鹿にしてきた。名指しじゃねぇし、俺とは言い切れないが確実に俺の事を言っているのはわかる。チッ、ガキでも貴族様か。悔しかったのにどうしても顔が上げられなかった。
その時、アマンダが優雅に微笑んだのだ。
「アルフレッド殿下は素敵でしょう?」
たった一言。そう言って笑っただけ。それだけで茶会の空気が変わった。そうだ、俺はアマンダの婚約者。アマンダに恥をかかせるわけにいかない。演じるのは得意だろう。
瞬きをして、顔を上げる。いつもステージに立つ前にするルーティンをすれば、俺はアイドルになれる。観客はアマンダ1人。それで充分だ。
「光栄だね。アマンダも素敵だよ。さすが、俺の婚約者だ」
顔を上げ、髪をかきあげ、アマンダに微笑むと予想通りアマンダは真っ赤な顔でプルプル震えていた。
その日から、俺の評価は少しずつ変わり始めた。王妃が流した噂は、次第に嘘だと知れ渡るようになった。
アマンダは純粋に俺の魅力を発信しただけだった。まるでアイドルのファンが推しを布教するように。それがどんな意味を持つのか、いくら賢くても、大人の精神を持っていても……分からなかったようだ。リチャードは、アマンダに何度も何度も王妃になりたいのかと聞いたが、アマンダはキョトンとして俺が王になる事はないと聞いているからあり得ないと答えるだけだった。
リチャードは、アマンダなら王妃になれると分かっていた。けど、王妃がどれだけ過酷で大変かも知っていた。あの王妃と関わらせたくないと断言していたし、アマンダが望まないようだから絶対に王になるなと俺に釘を刺しに来た。権力を求める家なら、俺を王にしようと画策するか、婚約を解消して王になる可能性が高い王族の婚約者にする。アマンダをなんとしても王妃にしようとするだろう。アマンダだって貴族として生きている女の子だ。親が決めた事に従うしかない。
しかし、テイラー公爵家は権力を求めず、アマンダの幸せを望んだ。アマンダの幸せを徹底的に考えた結果、俺は認められた。
それからはテイラー公爵家の人達は俺に対する壁がなくなり……本当の家族のように接してくれるようになった。全て、アマンダのおかげだ。
いい事ばかりじゃなかった。貴族達が俺に群がるようになった。アイドルをやってた時も、売れてから親戚が増えたり友達の友達が親友だと嘯いたりしていたが、アイドルと王子じゃ影響力が違い過ぎる。
テイラー公爵がガードしてくれていたが、あまり迷惑もかけられない。誘いも全部断る訳にいかねぇし、有益な付き合いもある。けど、貴族との付き合いには金がかかる。父に相談する為に城に戻れば王妃に絡まれ邪魔される。
その時、アマンダが優雅に微笑んだのだ。
「アルフレッド殿下は素敵でしょう?」
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瞬きをして、顔を上げる。いつもステージに立つ前にするルーティンをすれば、俺はアイドルになれる。観客はアマンダ1人。それで充分だ。
「光栄だね。アマンダも素敵だよ。さすが、俺の婚約者だ」
顔を上げ、髪をかきあげ、アマンダに微笑むと予想通りアマンダは真っ赤な顔でプルプル震えていた。
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