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8【アルフレッド視点】

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公爵の機転で婚約はせずに済んだが、顔合わせは必ず行えと命令されてしまった。幸い日程の約束はしなかったので、帰って来たばかりの父を捕まえて事情を説明し、王妃が不在の時に顔合わせをする事にした。

顔合わせさえしちまえば気が合わなかったと断りゃ良いと思っていたが、父は婚約を歓迎した。その手があったか、なんて呟いてやがった。俺を公爵家に避難させたいみたいだ。婚約者なら、滞在しても問題ねえ。アマンダ嬢はまだ幼いからなおさらだ。批判される事なく、俺を守れると言っていた。まぁ確かに、最近は城に居ても落ちつかねぇもんな。

国から逃げようと思って留学の準備をしていたが、王妃にバレて潰されたからなぁ。

俺の立場は結構危うい。留学も出来ねえなら、アマンダ嬢と婚約するのがベストだと分かってる。けどよぉ、10歳のガキは無理だって。

そりゃ、この世界では問題ねぇって分かってるよ。テイラー公爵の人柄も信用出来る。けど、俺はロリコンじゃねぇんだ。どちらかっつーとボンキュッボンな美女が好みなんだよ。

せめて15歳……この世界で成人してる子を連れて来てくれよ……。

だからわざと時間に遅れて行き、心象を悪くする事にした。公爵がアマンダ嬢を溺愛しているのは有名だ。こんな男に娘は任せられない。そう思って貰えるよう振る舞うつもりだった。

なのに、アマンダ嬢は出会った瞬間俺の昔の名を呼んだ。なるほど、10歳なのに大人びていてしっかりしているという評判はそういう事かと理解した。

この子は俺と同じだ。しかも、以前はどうやら俺のファンだったらしい。

わざと一人称を戻すと、目を輝かせていた。

必死で違う、別人だと心で言い聞かせているのが分かる。オタオタとしている姿が愛らしい。

わざとアイドルらしく話すと耳まで真っ赤に染まった。前世の事がバレると面倒だから、混乱しているアマンダ嬢を言いくるめて夢の中で会った人に似ている事にした。嘘は吐きたくない、そんな顔をしていたから彼女に嘘を吐かせないように振る舞った。

俺は嘘を吐くのはお手のものだ。

背筋を伸ばし、ユナという仮面を被る感覚。久しぶりだったが、目の前にファンが居るなら演じられる。

ああ、俺はやっぱりアイドルという仕事が好きだったんだな。生まれ変わってから初めての充足感を味わいながら、完全にパニックになっている少女を言いくるめて婚約を整えた。

10歳のガキは対象外だが、中身が大人なら話は別だ。

パーフェクトな礼儀作法、妙に落ち着いた様子から察するにアマンダ嬢になる前はそこそこ歳はいってただろ。すげー年上の女性だったとしてもそれはそれでアリだ。今の見た目はガキだしな。身体の成長を待てば良いだけだ。

何が起きているか理解していない可愛らしい少女に今のところ恋愛感情はないが、せっかく見つけたファンを逃したくはない。

そのうち、大人になりゃ良い感じになるだろ。

彼女の前なら俺はユナに戻れる。それはつまらない今の人生で見つけた、唯一の楽しみだと思えた。その為には、彼女の事をもっと知りたい。
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