妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり

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妹と婚約者が結婚

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「お姉様、わたくしエドガー様と結婚いたしますわ」

「ぇ…エドガーはわたくしの婚約者よ?!」

「知ってますわぁ、でも、エドガー様はわたくしが良いそうです。それに、わたくしもうエドガー様の子を妊娠してるのですわ。きゃっ」

義理の妹の、エリザベスは可愛らしく言った。はぁー、またかぁ。エリザベスはいつもわたくしのものを欲しがるんですが、まさか婚約者まで欲しがるとは思わなかったわよ。妊娠って本当かしら? 少なくとも、心当たりがある行動はしたって事ね。

まぁ、エリザベスは腹が立つけど生まれた時から自分優先ならこうなるわよね。悪いのはうちの両親と使用人だ。

「ミリィ、エリザベスがこう言ってるし、先方もエリザベスを妊娠させた責任を取れと迫ったらご当主から許可がおりた。来週のお前の結婚式はそのままエリザベスが行う」

「良かったわね、エリザベス。ミリィのドレスを羨ましがっていたもの」

「……そうですか、ではわたくしは今後どうすればよろしいですか?」

「お前の顔を見るとエリザベスの胎教に良くない。エドガーくんも、振った女の顔など結婚式で見たくないだろう。だから、お前は結婚式には出るな」

「かしこまりました」

「かわいい、かわいいエリザベスの式ですから、使用人も皆出かけます。お前は好きになさい。もう家にも戻らなくて良いわ。エリザベスとエドガー様が家を継ぐから。援助もエリザベスを妊娠させた責任を取って頂き多めに頂けたから、貴方はもう要らないわ」

母は、エリザベスが生まれたらエリザベス至上主義になった。父も母につられてから、1ヶ月もするとエリザベスの顔は見にくるがわたしの顔を見ても、無視するようになった。

食事も、いつのまにかわたくしの席はエリザベスの席になり、代わりにエリザベスの席に座るとエリザベスが席を取ったと泣くから、面倒になり行かなくなった。

使用人と一緒に食べようとすると、エリザベス様なら歓迎ですがと言われる。

仕方ないので、こっそり台所からご飯を持って行ったり、料理したりするようになった。

だけど、料理人に見つかり叱られたので、今度は街に出てなんとか食事を手に入れようとした。けど、お金がない。困った時に助けてくれたのは、孤児院だった。後で思えば、かなりラッキーだったなと思う。悪い人に会わなかったのは、運が良かったんだろう。

両親も使用人も、わたくしが居なくなっても気にもしなかった。

娘に気がつかない親なんて要らないし、仕える筈の令嬢を無視する使用人も要らない。

そう思ったので、そのまま孤児院に居た。すぐに貴族の子どもが孤児院にいると噂になった。だけど、うちの両親はクズだった。孤児院の実情を見たいから自分から孤児と交流している娘をでっち上げた。本人は素晴らしい領主様像を作れたと思ってる。実際の町中の噂は娘を育児放棄したクズだけど上の人に噂がいく頃には素晴らしい領主様になるんだから笑える。だってみんな、おべっかは使うじゃない?

しかも、孤児院脅して口止めまでしたのよ! 寄付すらせずに娘を預けるなんて恥だから言うなって。連れ戻そうともしなかったくせに。なら寄付しなさいよ。貴族なのに! だけど、孤児院の人はみんな暖かかったわ。ご飯も貰えたし、色々な事も教えて貰った。少し大きくなったら、デザイナーとして働く事ができたわ。いっつも妹のドレス野暮ったくてイライラしてたのよね。ボロボロのお下がりを綺麗にして着てたから裁縫の知識もあったし、うまく雇って貰えたわ。まぁ、そのきれいにしたドレスもたいてい1週間で取られてましたけどね。

稼ぎは半分は孤児院に、半分は自分のために使っている。貯金もだいぶしてるわ。こっそり貯めているものとわかりやすく貯めているものを用意してある。

案の定、ある程度わたくしのドレスが人気になると、勝手に婚約を決めて連れ戻されたわ。自分の式は自分でお金出せですって。わたくしが決めた結婚でもないし、人気デザイナーのわたくしを抱え込みたい政略結婚だから、両親はさぞ潤ったでしょうにね。

貯金を全部出せと言われたから、見せる用の貯金を半分出した。もっとあるはずだとエリザベスが言うせいで会社の机をひっくり返されたわ。結局隠してた半分も取られたけどこっそり貯めてた方は別の所にあるから大丈夫だった。会社の人にも言ってないから知らないし、わたくしが泣き崩れたからもうないと判断したみたい。

それだけ全部持って行ったくせに、エリザベスのドレスもタダで作れとか馬鹿なのかしら? 結局、花嫁のわたくしのドレスにはお金がまわらなかった。仕方ないので会社と相談して、廃棄予定の余った布を組み合わせて、見栄えの良いものを作ることにしたの。これはこれで、素敵なデザインになったし、今後の良い勉強になったわ。両親には貧乏くさいとバカにされたけど、エリザベスが褒めたら渡せとか馬鹿じゃないの! 白を着れるのは花嫁だけなのに! 

エドガーも、最初は良い人だったんだけど……最近は、屋敷に来てもエリザベスの部屋に直行だったから、婚約破棄できないか法律を調べまくっていたところに、この事態だ。

「では、わたくしはもう戻りませんわ。籍が残っていると、エリザベスも不安でしょう。ふたりの幸せを邪魔してはいけませんし、籍を抜き他人となりましょう。そうすればエリザベスが長子ですもの。書類はこちらです。お父様、お母様、エリザベス、記入してください」

「おお、お前にしては気が利くな! 必要ならお前を養子で戻せば良いからなお前は親子の縁を切ろう」

「ホントね!すぐに書きましょう。エリザベスがずっとお家にいてくれるのね!」

「お姉様、他人になってもお姉様ですからね。また素敵なドレスをよろしくね」

「まあ、なんて優しいのエリザベス!」

茶番か。心がどんどん冷たく冷めていくのが分かる。でも今は我慢だ。こんなチャンス、逃すものか。

確実にサインをもらい、不備がないか確認して自分もサインする。
すぐに貴族院に送る手続きをしたから、明日には籍が抜けているはずだ。両親は気が付いてないが、手続きを撤回することは不可能だし、再会不可・連絡不可という条項を滑り込ませておいたから、接触してきたら訴えることも出来る。控えもこちらにあるから、万が一があればこれを出そう。

「では、わたくしは失礼致します。エリザベス、お幸せにね」

エリザベス、良くやったわ。貴方に感謝したのは初めてよ。
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