腹黒公爵の狩りの時間

編端みどり

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公爵様の求婚【最終話】

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「マチルダ様、とってもお似合いですわ!」

「エミリー様、毎回思うのですがわたくしのドレス、豪華過ぎませんか?」

「これも、お仕事ですわよ」

「そうか、そうですね、エミリー様が着る方が人気が出そうですが、わたくしで良いのでしょうか?」

「マチルダ様でないといけませんわ。今日はお兄様が公爵になる披露目ですもの。マチルダ様に注目が集まりますわ」

「なんで、わたくしに?」

「すぐわかりますわ」

……………………

「サイモンが、カートライト家の当主と認められましたので、ここにご報告したします。サイモン、挨拶を」

「はい、この度カートライト家の当主となりました。サイモン・ド・カートライトです。今後ともよろしくお願い致します。そうそう、先程ご挨拶に回らせて頂きましたが、お叱りを受けてしまいました。当主なのに伴侶がいないなどけしからんと。仰る通りです」

「そ、そうです! ですからぜひうちの娘を……」

「サイモン様! わたくしは生涯サイモン様をお支えしますわ!」

羽虫が、うるさい。後日駆除をしよう。

「ですので、今この場で私の伴侶となる方をお伝え致します」

エミリーと共にいる、マチルダを見る。キラキラした目で誰が選ばれるのか考えているのか、周りを確認している。自分が呼ばれるとは、微塵も思っていない様子だ。だが、聡い者達はさりげなく道を空けてくれる。あれだけ夜会に連れて行けば、気がつかない方がおかしい。

「マチルダ・ドゥ・シヴィル様、私と結婚して下さい。既に父上と兄上の御許可は頂いています」

マチルダに跪き、手の甲にキスをする。みるみるマチルダの顔が赤くなるのが可愛らしい。私は、マチルダの性格をよく知っている。ここで断る度胸はマチルダにはない。父上や兄上に聞くという逃げ道も塞いである。これが嫌いな相手なら、マチルダはうまく逃げるだろうが……

「私の求婚なら、すぐ受けて頂けるのでしょう?」

彼女にしか聞こえない声で囁けば、答えはひとつだ。

「……喜んでお受けしますわ。よろしくお願いします。サイモン様」
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