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ポンコツな公爵様
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「サイモン、お前に公爵を継がせようと思うのだが、マチルダ嬢はまだ捕まらんか」
「……父上、どうやって母上を口説いたのか教えて下さい」
「そりゃあ、プレゼントを贈ったり、夜会で常に一緒にいたり、ドレスなどを全て私の色にしたり、愛の言葉を囁いたり……出来ることは全てしたぞ」
「私も全てやりましたよ! でも、プレゼントは商会の新商品、夜会に一緒にいても単なる虫除け、ドレスは他国の風習、愛の言葉だけは顔を赤くして聞いて頂けましたけど、私はときめきましたがお相手はどなたですかと言われました! 何故です?!」
マチルダは、手強すぎた。マチルダは私が他に好きな人が居ると思い込んでしまっている。
「もう5年経ってしまう! 商会が無くなればマチルダと会う理由がないではないか!!!」
「お兄様は回りくどいのですわ。マチルダ様はお兄様がとても大変な恋をしていると思っておりますし、お相手が羨ましいなどと言っておりましたのよ。お兄様に好意はあるようですが、自分は相手にされないと思い込んでいます。何度か修正しようとしましたが、お兄様への評価が高すぎて無理でしたわ」
「何故だ! マチルダより素晴らしい令嬢などおらんだろう!」
「お兄様が、夜会に連れて行き過ぎましたわね。嫉妬したご令嬢の言葉を鵜呑みにしてしまわれて、マチルダ様の自己評価は底辺、お兄様の評価は頂点ですわ」
くそっ、カテリーナ達のせいか! しかしカテリーナもようやく先月結婚したから、もう夜会に出る事はないだろうに。既に病弱な王子妃として後宮に閉じ込められている。王子が全ての仕事を引き受けているから誰も文句は言わない。もう、邪魔者はいない、それに……
「……ようやくジョセフ様との勝負に勝ったというのに……」
何度もプロポーズしたが、全て他の方への予行演習として、採点されてしまう始末だ。
「こうなったらさっさと公爵になってしまわれれば宜しいわ。披露目の時にマチルダ様との婚約を決めてしまいましょう。ジョセフ様へ正式に婚約を申し込みなさいまし」
「そんな、マチルダの意思を無視した行動はダメだ!」
「でしたらわたくしがマチルダ様のお気持ちを確認致しますわ! お兄様は、クローゼットにでも隠れて聞いてなさい!」
………………
「マチルダ様、商会はもうすぐ解散ですわ。あなたは、これからどうなさるの?」
「そうですねえ、兄が来月結婚するので、わたくしもお相手を探したいのですが、なかなか見つからなくて。いっそこのまま独身かなって思ってるんです。エミリー様、何かいいお仕事ございます?」
「あるわ! とーってもいいお仕事が!」
マチルダに婚約が来ないのは当然だ。全て私が潰しているのだから。最初は数が多くて大変だった。
「だけど、わたくしの国に来ていただかないといけないの。それは可能かしら?」
「父に確認いたしますわ」
「相変わらず慎重ね。わたくし、あなたのそういうところ、大好きよ」
「光栄です」
「ところでマチルダ様、兄について、どう思う?」
「サイモン様ですか? うちの兄ですか?」
「どちらもよ」
「そうですね、うちの兄は頼り甲斐があってわたくし大好きですわ。今度お姉さまが増えるのですが、お優しくてセンスもいい、素晴らしい方です。だからこそ、わたくしはお邪魔虫になりたくないのですわ。サイモン様は、お優しくてお仕事も出来て、素晴らしいお方です」
「そう……兄は男として魅力的かしら?」
「もちろんですわ! わたくしの理想の男性ですもの。強くて、賢くて、優しい。何より腹黒いのが良いですわ」
「マチルダ様は腹黒い男性がお好きなの?」
「腹黒いとは失礼しましたわ。わたくし、貴族の腹の探り合いが苦手なんですの。ですのでそのようなやりとりを卒なくこなして、裏できちんと情報を集めている方に憧れるのですわ。それを腹黒いと表現するのはあんまりですわね。申し訳ありません」
「マチルダ様、あなたはお兄様がお好き?」
「憧れはありますけど、サイモン様には想い人がおられるでしょう? わたくし、横恋慕はいたしませんの」
「そう、マチルダ様が兄に求婚されたらどうします?」
「ありえませんが、喜んでお受けすると思いますよ? エミリー様、サイモン様のお相手はそんなに難しい方なのですか? サイモン様なら求婚した瞬間にお受けして貰えるのでは?」
「それがね、とっても手強い相手なの」
「わたくしならすぐお受けしますのに」
「そうよねぇ、お兄様の魅力が伝わらないのかしら。マチルダ様が我が国に来て頂けたら、道が開けると思うのよね」
「そうなんですか? なら兄にも頼んでみます。兄は家に居れば良いと言ってくれるのですが、あまり迷惑もかけられませんし、エミリー様に呼ばれたので行きたいと言ってみますね」
「ぜひ前向きに検討して下さいまし!」
「わかりました」
なんて事だ。マチルダも私が好きなのだな。これは、もうさっさと囲い込んでしまおう。マチルダは鈍いようだから、周りから追い込んでやる。
「……父上、どうやって母上を口説いたのか教えて下さい」
「そりゃあ、プレゼントを贈ったり、夜会で常に一緒にいたり、ドレスなどを全て私の色にしたり、愛の言葉を囁いたり……出来ることは全てしたぞ」
「私も全てやりましたよ! でも、プレゼントは商会の新商品、夜会に一緒にいても単なる虫除け、ドレスは他国の風習、愛の言葉だけは顔を赤くして聞いて頂けましたけど、私はときめきましたがお相手はどなたですかと言われました! 何故です?!」
マチルダは、手強すぎた。マチルダは私が他に好きな人が居ると思い込んでしまっている。
「もう5年経ってしまう! 商会が無くなればマチルダと会う理由がないではないか!!!」
「お兄様は回りくどいのですわ。マチルダ様はお兄様がとても大変な恋をしていると思っておりますし、お相手が羨ましいなどと言っておりましたのよ。お兄様に好意はあるようですが、自分は相手にされないと思い込んでいます。何度か修正しようとしましたが、お兄様への評価が高すぎて無理でしたわ」
「何故だ! マチルダより素晴らしい令嬢などおらんだろう!」
「お兄様が、夜会に連れて行き過ぎましたわね。嫉妬したご令嬢の言葉を鵜呑みにしてしまわれて、マチルダ様の自己評価は底辺、お兄様の評価は頂点ですわ」
くそっ、カテリーナ達のせいか! しかしカテリーナもようやく先月結婚したから、もう夜会に出る事はないだろうに。既に病弱な王子妃として後宮に閉じ込められている。王子が全ての仕事を引き受けているから誰も文句は言わない。もう、邪魔者はいない、それに……
「……ようやくジョセフ様との勝負に勝ったというのに……」
何度もプロポーズしたが、全て他の方への予行演習として、採点されてしまう始末だ。
「こうなったらさっさと公爵になってしまわれれば宜しいわ。披露目の時にマチルダ様との婚約を決めてしまいましょう。ジョセフ様へ正式に婚約を申し込みなさいまし」
「そんな、マチルダの意思を無視した行動はダメだ!」
「でしたらわたくしがマチルダ様のお気持ちを確認致しますわ! お兄様は、クローゼットにでも隠れて聞いてなさい!」
………………
「マチルダ様、商会はもうすぐ解散ですわ。あなたは、これからどうなさるの?」
「そうですねえ、兄が来月結婚するので、わたくしもお相手を探したいのですが、なかなか見つからなくて。いっそこのまま独身かなって思ってるんです。エミリー様、何かいいお仕事ございます?」
「あるわ! とーってもいいお仕事が!」
マチルダに婚約が来ないのは当然だ。全て私が潰しているのだから。最初は数が多くて大変だった。
「だけど、わたくしの国に来ていただかないといけないの。それは可能かしら?」
「父に確認いたしますわ」
「相変わらず慎重ね。わたくし、あなたのそういうところ、大好きよ」
「光栄です」
「ところでマチルダ様、兄について、どう思う?」
「サイモン様ですか? うちの兄ですか?」
「どちらもよ」
「そうですね、うちの兄は頼り甲斐があってわたくし大好きですわ。今度お姉さまが増えるのですが、お優しくてセンスもいい、素晴らしい方です。だからこそ、わたくしはお邪魔虫になりたくないのですわ。サイモン様は、お優しくてお仕事も出来て、素晴らしいお方です」
「そう……兄は男として魅力的かしら?」
「もちろんですわ! わたくしの理想の男性ですもの。強くて、賢くて、優しい。何より腹黒いのが良いですわ」
「マチルダ様は腹黒い男性がお好きなの?」
「腹黒いとは失礼しましたわ。わたくし、貴族の腹の探り合いが苦手なんですの。ですのでそのようなやりとりを卒なくこなして、裏できちんと情報を集めている方に憧れるのですわ。それを腹黒いと表現するのはあんまりですわね。申し訳ありません」
「マチルダ様、あなたはお兄様がお好き?」
「憧れはありますけど、サイモン様には想い人がおられるでしょう? わたくし、横恋慕はいたしませんの」
「そう、マチルダ様が兄に求婚されたらどうします?」
「ありえませんが、喜んでお受けすると思いますよ? エミリー様、サイモン様のお相手はそんなに難しい方なのですか? サイモン様なら求婚した瞬間にお受けして貰えるのでは?」
「それがね、とっても手強い相手なの」
「わたくしならすぐお受けしますのに」
「そうよねぇ、お兄様の魅力が伝わらないのかしら。マチルダ様が我が国に来て頂けたら、道が開けると思うのよね」
「そうなんですか? なら兄にも頼んでみます。兄は家に居れば良いと言ってくれるのですが、あまり迷惑もかけられませんし、エミリー様に呼ばれたので行きたいと言ってみますね」
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「わかりました」
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