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婚約申し込み
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私は早速、シヴィル家に婚約を申し込みに行った。
「お話は伺いました。マチルダの兄のジョセフ・ドゥ・シヴィルです。両親は現在、エミリー様の商会の件で打ち合わせに入っておりますので、私ひとりで申し訳ありません。急なお申し出でしたので」
「サイモン・ド・カートライトです。この度は、急な申し出をして、申し訳ありません」
「ええ、本当に驚きました。妹と婚約したいという申し出はありがたいのですが、妹には内密にして欲しいと書状に書かれていていましたね。サイモン様は妹をどうされたいのでしょうか? 事と次第によっては、例え格上の公爵家であってもお受けできかねます」
ジョセフ様から、僅かな敵意を感じ取れる。わざと敵意をぶつけておられるな。まずい、やり方を間違えた。書状にマチルダ嬢への愛を書くべきだったのだ。それに、日程も急すぎた。他の申し出があってはまずいと、急いでしまったが、冷静になれば日程はかなり無茶なものだった。完全に警戒されている。このままでは、マチルダ嬢に会う事すら許されないかもしれん。
「申し訳ありません、気が急ぎました。私は、マチルダ嬢の事が好きなのです。どうか、マチルダ嬢との婚約を御許可頂きたい」
「何故妹を見初めたのですか?」
「エミリーの件は、ジョセフ様もご存知でしょう? その時にお会いしまして。私の剣を扇子で止める技量、冷静に周りを見て、国内の貴族の名も覚えている聡明さ、それに、泣いていた妹に優しく接する姿も拝見致しました。私は、どうしてもマチルダ様と結婚したいのです。日程が急だった事も改めてお詫びします。此度の事で、マチルダ嬢は注目されるでしょうから、先を越されてはたまらないと急いでしまいました」
「だったら、どうして妹に秘密なのですか?」
ジョセフ様が、若干呆れておられる。まずい、我が家伝統の、恋をしたら能力は上がるが、恋愛はポンコツというやつをやってしまっただろうか。考えてみたら、エミリーも暴走して婚約を申し込んでいたし、他にも失敗エピソードは事欠かない。我が家には、祖先の恋愛失敗エピソードと、成功エピソードがまとめてあるのだが、失敗エピソードを全て読み込んでからにするべきだったか。
しかしあの膨大な量を読んでいては、他の者にマチルダ嬢を取られてしまう。
とにかく、ジョセフ様に嫌われないように立ち回らなければ。
「マチルダ嬢が、私との婚約を望んでくれるまでは内密にして頂きたいのです」
「……それは、何故ですか?」
「無理強いは、したくないので」
「貴族の婚約は家が決めるものでしょう? 我が家がイエスと言えば、マチルダは貴方に嫁ぎますよ」
「それは……そうなのですが、出来るならばマチルダ嬢が望んで頂けるまでお待ち頂けないかと」
「つまり貴方は、マチルダの心も欲しいが、他の者に出し抜かれたくはないから我が家にマチルダへの婚約の申し出を止めておけと仰るのですね。ずいぶんご勝手だ」
……完全に、ジョセフ様を敵に回してしまったようだ。
「お話は伺いました。マチルダの兄のジョセフ・ドゥ・シヴィルです。両親は現在、エミリー様の商会の件で打ち合わせに入っておりますので、私ひとりで申し訳ありません。急なお申し出でしたので」
「サイモン・ド・カートライトです。この度は、急な申し出をして、申し訳ありません」
「ええ、本当に驚きました。妹と婚約したいという申し出はありがたいのですが、妹には内密にして欲しいと書状に書かれていていましたね。サイモン様は妹をどうされたいのでしょうか? 事と次第によっては、例え格上の公爵家であってもお受けできかねます」
ジョセフ様から、僅かな敵意を感じ取れる。わざと敵意をぶつけておられるな。まずい、やり方を間違えた。書状にマチルダ嬢への愛を書くべきだったのだ。それに、日程も急すぎた。他の申し出があってはまずいと、急いでしまったが、冷静になれば日程はかなり無茶なものだった。完全に警戒されている。このままでは、マチルダ嬢に会う事すら許されないかもしれん。
「申し訳ありません、気が急ぎました。私は、マチルダ嬢の事が好きなのです。どうか、マチルダ嬢との婚約を御許可頂きたい」
「何故妹を見初めたのですか?」
「エミリーの件は、ジョセフ様もご存知でしょう? その時にお会いしまして。私の剣を扇子で止める技量、冷静に周りを見て、国内の貴族の名も覚えている聡明さ、それに、泣いていた妹に優しく接する姿も拝見致しました。私は、どうしてもマチルダ様と結婚したいのです。日程が急だった事も改めてお詫びします。此度の事で、マチルダ嬢は注目されるでしょうから、先を越されてはたまらないと急いでしまいました」
「だったら、どうして妹に秘密なのですか?」
ジョセフ様が、若干呆れておられる。まずい、我が家伝統の、恋をしたら能力は上がるが、恋愛はポンコツというやつをやってしまっただろうか。考えてみたら、エミリーも暴走して婚約を申し込んでいたし、他にも失敗エピソードは事欠かない。我が家には、祖先の恋愛失敗エピソードと、成功エピソードがまとめてあるのだが、失敗エピソードを全て読み込んでからにするべきだったか。
しかしあの膨大な量を読んでいては、他の者にマチルダ嬢を取られてしまう。
とにかく、ジョセフ様に嫌われないように立ち回らなければ。
「マチルダ嬢が、私との婚約を望んでくれるまでは内密にして頂きたいのです」
「……それは、何故ですか?」
「無理強いは、したくないので」
「貴族の婚約は家が決めるものでしょう? 我が家がイエスと言えば、マチルダは貴方に嫁ぎますよ」
「それは……そうなのですが、出来るならばマチルダ嬢が望んで頂けるまでお待ち頂けないかと」
「つまり貴方は、マチルダの心も欲しいが、他の者に出し抜かれたくはないから我が家にマチルダへの婚約の申し出を止めておけと仰るのですね。ずいぶんご勝手だ」
……完全に、ジョセフ様を敵に回してしまったようだ。
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