気弱ドワーフと転生エルフの産業革命

編端みどり

文字の大きさ
上 下
63 / 74
第二章

13.キュビさんの癒しパワー

しおりを挟む
「レナさん?」

「……マイス?」

レナさんの顔色は真っ青だ。これは放っておけない。とにかく休ませないと!

「うちに帰りましょう!」

急いで転移の魔道具を発動させて家に帰る。家では、いつものようにたくさんの動物がのんびり遊んでいる。レナさんの異変に気が付いたキュビさんが風のように飛んで来た。

「レナ? ドウシタ?」

「レナさん、どこか体調が悪いんですか? 部屋で休みますか? そうだ、すぐアオイさん達にも連絡しますね」

「待って! 大丈夫! 大丈夫だから連絡しなくて良いから!!!」

「全く大丈夫って感じではありませんよ。本当に連絡しなくて良いんですか?」

「うん……大丈夫。アオイとカナなら、きっと大丈夫……」

なんだかあんまり大丈夫じゃなさそうだな。どうしよう。

「僕じゃ癒しの魔法は使えませんし……ポーション飲みます?」

そう言って、昨日買ったばかりのポーションを取り出すと、レナさんが吹き出した。

「高級ポーション飲むような事態じゃないから大丈夫だよ」

あ、ようやく笑ってくれた。さっきまで床にペタンと着いてた尻尾も、いつもみたいにゆらゆら動き始めた。ちょっとは元気になってくれたかな?

「レナ! イッショ ネルカ?! フワフワ、イヤサレルゾ」

そう言ってキュビさんがレナさんの首にまとわりつく。キュビさんの言葉を翻訳したら、レナさんが嬉しそうにキュビさんに頬擦りした。

みんなキュビさんが大好きだけど、特にレナさんは幸せそうにキュビさんを撫でる事が多い。フワフワ、癒されるーっていつも言ってるし、よく一緒に寝ている。

「キュビちゃん、ありがとう」

「レナさん、昨日のアイス残ってます! 食べますか?」

僕とキュビさんは、必死でレナさんが好きそうな事を次から次へと提案しはじめた。

「レナ イッショ オフロ ハイル」

「キュビさんはオスでしょう?! ダメに決まってます! ああでも、お風呂は良いですね。準備しますから、ゆっくりしたらどうですか?」

「ふふっ、マイスもキュビちゃんもありがとう。お風呂は今はいいかな。ね、キュビちゃん撫でさせて! あと、アイス食べたいな」

「ワカッタ」「任せて下さい!」

キュビさんがレナさんと戯れている間に、僕はアイスの用意をする。キュビさんも食べるから、たくさん用意した。無くなってきたから、また作らないと。

急いでアイスの材料を混ぜて、冷凍庫に仕込んでおいた。美味しい苺を手に入れたので混ぜてストロベリーアイスにする。これでまたいつでも食べられる。

いつもはこんなに急いで仕込まないけど、レナさんが元気がないから、すぐ出せるように好きな物は用意しておきたい。

「お待たせしました! アイスですよ」

「レナ ネタ」

どうやら準備に時間がかかってしまったらしく、レナさんはキュビさんを抱きしめたままソファで眠ってしまった。

「ベッドに運びますか?」

「オコサナイホウガ イイ カラ コノママデ」

「分かりました。キュビさんアイス食べますか?」

「タベル ウゴケナイ カラ タベサセロ」

キュビさんにアイスを食べさせていたら、不機嫌な様子のカナさんが帰って来た。

「おかえりなさい。カナさん、どうしました?」

「良かった……レナはここに居たのね。なら、きっとあいつらには会ってませんね」

あいつらって……多分レナさんが真っ青になってた原因だよね?

「それが、レナさんは道で真っ青な顔をしてうずくまっていたんです。なんであいつらが居るんだって呟いてました。家に連れて帰って、キュビさんのおかげで落ち着いたみたいです」

「何か、言ってましたか?」

「いえ、特に何も。ただ、おふたりなら大丈夫だから連絡はしなくて良いと……でも、やっぱり連絡すべきでしたね」

「いいえ、連絡すればレナは余計気にしたでしょうから。マイスさん、キュビちゃん、しばらくレナを頼んで良いですか?」

「もちろんです!」「マカセロ!」

「アオイの所に行って来ます!」

そう言ってカナさんは転移して行った。
レナさんだけじゃなくて、カナさんもあんなに嫌な顔をするなんて、あいつらって何なんだろう。

会ってもいない筈のあいつらに、感じた事のない怒りが湧いてきた。

「マイス カオ コワイ レナ オキタラ コワガル」

「ごめんなさい、キュビさん。もう、大丈夫です」

こんな時は、何か作るに限る。レナさんが起きるまでに、静かに作れる物がないかな。

そうだ、この間ルフォール伯爵からクズ石だから要らないと分けて貰った宝石があったよね。魔道具じゃないけど、たまにはアクセサリーも良いかもしれない。レナさんに、こんな事で街歩きを嫌いになって欲しくない。

僕は久しぶりに、アクセサリー作りをする事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...