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第二章

6.兄貴ってなんですか

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「すいません……すいません……」

僕は、ベットでうなっている冒険者さんたちに謝り倒していた。ケーキの効果は絶大で、彼らの除名は取り消された。ただし、無罪放免とはいかなかった。ギルド指定の依頼を、無報酬で10件受けないといけないそうだ。必要経費は出るんだから、しっかり働きなさいとマリカさんは言った。

依頼の達成状況や、仕事ぶりをみて、信頼に足るかを判断するそうだから、酷いと本当に除名らしい。

冒険者の皆さんは、神妙な顔で頷いていた。最後のチャンスをくれてありがとうとマリカさんにお礼を言っていた。

「お礼ならマイスさんに。彼が許したからギルドも処分を撤回出来たの。マイスさんが希望しなければ、こんな温情ありえないわ」

そう言ってマリカさんは部屋を出て行った。

彼らは、まだ身体が動かないらしくベッドの上からすまないと言って僕に謝ってくれた。

僕も必死で謝って、ケーキも献上したら、みんな許してくれた。

「絡んだ俺らが悪いんだ。それなのに助けてくれて感謝してる」

「僕も事情を説明すればよかったんです。アオイさんのピンチだって言えば、絡んでくる人なんていなかった筈なのに……」

アオイさんが大怪我してるってなんで言わなかったんだろう。あの時は、ポーションを買う事しか頭になかった。

「確かにそれを聞いてりゃ邪魔なんてしなかった。けど、すまねぇ、俺らはマイスさんを舐めてたんだ」

「ああ、アオイ達に守られてるくせに、儲けた金でポーション買いあさって何すんだって思っちまって……あんだけ焦ってたんだから、事情があるって分かりそうなもんなのに」

「まさか、あんな蹴り喰らうなんて……」

「下半身が痺れて、まだ動けねぇんだ。マリカさんには自業自得だって叱られた」

「あん時のマイスさんはマジで怖かったです。でも、生きてるだけありがたいっす。本気で殺されるって思いました。すんませんっした!」

ど、どうしよう。下半身がまだ痺れてるって……。まさか本当にキュビさんが言ってたみたいに……。そ、そうだ!

「あの! これ使って下さい!」

僕は、さっき買い漁ったポーションを1人1本差し出した。僕に絡んできたのは5人。いつも一緒に冒険している仲間だそうだ。依頼を失敗して、生活費がカツカツで、どうしようって言ってる時に僕が来たらしい。そりゃ腹が立つよね。僕もお金ない時、お金持ってる人を羨んだりしたもん。

「いや、こんな高価なもん飲めねぇよ。勿体ない」

「僕のせいで後遺症とか残ったら困るし、アオイさんはもう治ったから、こんなにポーションは必要ないんです。だから、貰って下さい。アオイさんに使ったと思えば、お金も惜しくないんで。ポーションを返すわけにいかないし。お願いです。今すぐ飲んで下さい」

僕のせいで不能になるとか、責任持てない。

でも、誰も飲んでくれない。金貨10枚だもんね。躊躇する気持ちはものすごくわかる。

……仕方ない。あんまりやりたくないけど、こう言えば飲むよね。

「皆さんは、冒険者を続けたいですか?」

「そりゃ、もちろん続けたいぜ」

「将来、結婚したら子どもは欲しいですか?」

「まぁ、出会いがあるかは分かんねえけど……いつかは……なぁ」

「だったら、躊躇わず今すぐ飲んでください。痺れがまだ取れないんでしょう? 冒険者のお仕事出来ませんよ? 僕、冒険者の方みたいに戦う腕はないけど、力だけはあるんです。ひとりで家建てるくらいの筋力はあります。あの時は、手加減なんてしてませんでした。多分、すぐ治さないと不能になりますよ」

「「「「「飲みます!!!」」」」」

「ありがとうございます。皆さん飲みましたね? 痺れはどうですか?」

「すげぇ! これが上級ポーションか!」

「身体、動くぜ!」

「痺れもねぇ!」

「マイスさん、ありがとうございます!」

「あざっす! マイスの兄貴に一生ついて行くっす!」

「いや、ついて来られても困ります。僕、職人ですし。これからも冒険者のお仕事、頑張って下さい。これ、僕からのお詫びです。売っていただいても構いません。自由にして下さい。今回は本当に申し訳ありませんでした」

上級ポーションを10本渡して、改めてお詫びをした。ポーションを売れば生活費にもなるし、いくつか残しておけば保険にもなる。どう使うかはこの人達次第だ。これで、許して貰えるかな?

「いや、こんなに貰ねえよ。さっきも上級ポーションを飲んだばかりだ」

「それは、僕のせいですから。これは、お詫びです。お金はほとんど使っちゃったので、慰謝料代わりに受け取って下さい」

「すまねぇ、俺たちが悪いのに……」

「そのかわり、今後は誰にも絡まないで下さいね?」

「「「「「はいっ!」」」」」
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