気弱ドワーフと転生エルフの産業革命

編端みどり

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第二章

3.冒険者に構ってる暇はありません

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「マリカさん! マリカさんいますか?!」

僕は、冒険者ギルドに急いで転移した。突然現れた僕にみんな驚いているが、構ってる暇なんてない。

「マイスさん、どうしました? 顔色、真っ青ですよ?」

「上級ポーション、売ってください! 今すぐ!」

僕の剣幕に、マリカさんはすぐにギルド職員として対応してくれる。

「分かりました! いくつ必要ですか?」

「いくつありますか?!」

「1000は常備してますし、いくつでも大丈夫ですよ。上級ポーションは滅多に出ませんけど、必ず常備するルールなのですぐ補充しますし、極端な話、マイスさんが100個購入されても問題ありません」

マリカさんの話を聞いて、僕は考えた。

レナさんはひとつで良いって言ってたけど、もし足りなかったら困る。1000もあるなら、僕が多少買っても困らないよね。それなら、多めに買わないと……。

この時、僕は確実に冷静さを失っていたんだと思う。

上級ポーションは、ひとつで瀕死の怪我が治るっていうのに、アオイさんを助けられる可能性が上がるなら、多めに買った方が良いと思った。買えるだけ、買わないと……。

「なら、100個下さい! これ! 金貨1000枚です!」

貯金はだいぶなくなるけど、アオイさんが助かるなら構わない。お金なんて、また稼げば良い。

滅多に見る事のない金貨を1000枚、ポンと出した事でざわめきが起きるが、構ってられない。

「分かりました! これ、上級ポーション100個です」

「ありがとうございます! それじゃ!」

急いでポーションをマジックバッグに詰めて、ギルドを出ようとしたら冒険者に絡まれた。

「お前、冒険者でもないくせにそんなに上級ポーション買ってどうすんだよ」

「そうだよ! 冒険者じゃねぇんだから」

「金持ってんなら俺らになんか奢ってくれよ」

「冒険者じゃねーならポーション100個も要らねえだろ」

普段の僕なら、怯えてごめんなさいって言ってる。

けど、今の僕にそんな余裕はない。冒険者達を冷たく睨みつけた。

「うるさいですよ。ちゃんと対価は払っています。貴方達に構ってる暇はありません。退いてください」

「ああ?! んだよ! お前いっつも良い思いしやがって! 女に守られてる癖に生意気なんだよ!」

「ちょっと! やめなさい!!!」

マリカさんが止めてくれるけど、興奮した冒険者達は止まらない。

けど、隙だらけだ。僕を舐めてるからなんだろうけど、レナさんは、もっと早い。

あっさり避けた僕に冒険者達は更にキレた。

ひとりが僕の頭を椅子で殴った。

頭から血が出る。でも、大した事はない。カナさんの拳はもっと重い。

「時間が無いんです。全員、邪魔です」

向かって来た冒険者の急所を攻撃する。全員、あっさり倒れたけど、まだピクピク動いてる。まぁ、僕の蹴りじゃこんなもんだよね。カナさんなら、全員気絶させられるんだろうけど……。

周りは、シーンとしてる。マリカさんが、怯えながら僕に声をかけてくれた。でも、これ以上時間を取りたくない。

「後でお詫びに来ます。今は急いでいるので失礼します」

マリカさんに頭を下げて、僕は自宅に転移した。
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