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第一章
43.疑惑の目
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「申請済んでるってどういう事だ?」
「冒険者ギルドから、ナビもナビ用の箱も販売申請が済んでいます。許可も下りているから、売って頂いて問題ありませんよ」
「……うそ」
「そ、そうなんですか?」
アオイさんは、断りをいれてから慌ててカナさんと通信を始めた。その姿を見て協会長さんがニコニコ笑っている。
「それがナビですね。道案内の魔道具に、通話の機能を付ける発想が素晴らしいです。私も研究用に買ったんですよ。金貨6枚となかなか高額でしたが、素晴らしいものですね。良い物を買いました」
結局、ナビは金貨6枚でギルドが売ってるらしい。僕たちは、金貨5枚で卸している。
「おう、ナビは俺も見たけどすげぇよな」
「さすがダンのお弟子さんですね」
「マイスは、自慢の弟子だからな。まだちょっとしか教えられてねえんだけど、これからもっと俺の技術を伝えていくつもりだ」
「人にも自分にも厳しいダンがそこまで褒めるなんて珍しいですね。まぁ、こんな物を作れる方なら納得しますけど」
「しかも、マイスは真面目なんだ。遅刻なんてした事ねぇし、仕事も丁寧、一度教えた事はちゃんと覚えるし、言動も柔らかいから客の評判も良い」
「優秀ですね」
「俺とは大違いだな」
「ダンは腕は確かでしたが、不真面目でしたからねぇ。しょっちゅうお客様と喧嘩していましたし」
「うっせぇ! 一回貴族に喧嘩売っちまって捕まりかけてから、めちゃくちゃ反省したっつうの!」
「たしかに、あれから遅刻もなくなって真面目になりましたから、得た物も大きかったですね」
「まぁな。で、結局ナビは冒険者ギルドが申請してくれてたのか?」
「ええ、そうです。製作者はマイスさんになってますよ。販売者は冒険者ギルドになってますけど、マイスさん本人であれば冒険者ギルド以外にナビを売る事も可能です」
「はぁ……良かった……」
僕はホッとして、床にへたりこんだ。
「良くない!」
「アオイさん?」
「今、冒険者ギルドに説明に行ったら、ギルド長に問題ないですって言われて追い返されたらしいわ! それより早くナビを納品しろって言われたそうよ。マリカさんは1週間前から留守のまま! 絶対おかしい!」
「何がおかしいんですか?!」
「販売者は、なんで冒険者ギルドになってるのよ! マイス本人なら他のとこにも売れるらしいけど、マイスは販売担当じゃないわ。売るのは私達よ。このままだと、ギルドにしかナビを売れない。もともと、面倒だし冒険者ギルドに販売を委託するつもりではいたけど、販売を独占させるなんて契約してないわ。私が知らずにナビを他の人に売ったら、私が捕まる」
「えっ?!」
「協会の申請は、大陸全土に広がる魔法契約なので違反すれば分かります。たしかに、販売を冒険者ギルドと限定しているのでマイスさん以外が商売として売れば捕まります」
複数個売るとか、条件はあるらしいけどアオイさん達が気がつかずに売れば確実に捕まる。僕は、発明者兼製作者だから、問題ないそうだ。
「普通は街単位の魔法契約だけど、協会なんて大きなところなら大陸全土の魔法契約ですものね」
魔法契約は、範囲が決まっている。親方や僕がした魔法契約は、契約した場所から半径50キロくらいに効果があるもの。だから親方は僕に事情を説明できた。ミクタから出てしまえば契約は関係ないからね。
大陸全土に効果がある物もあるけど、高価だし滅多に使わない。魔道具協会は、魔法契約の用紙を自分達で作ってるからふんだんに使うそうだけど。
「マイスさんが冒険者ギルドに販売を許可する形で申請したんじゃないんですか?」
「たしかに、冒険者ギルドがナビを売るとは聞いていました。でも、協会に申請までしたなんて聞いてません」
「そもそも、マイスは申請してねぇから慌てて謝罪に来たんだろ?」
「たしかにそうですね……これは、由々しき事態です。すぐに申請書類をお持ちします! 確認しましょう」
「親方……僕また騙されました?」
今までの嫌な事が、思い出されて涙が溢れてくる。
「落ち着け、ナビの発明者と製作者はマイスだ。マイスの権利は、かなり手厚く保証される。そもそも申請書類は、マイスが書かないと無効だ」
「私、色々思い出したんですけど、冒険者ギルドと魔法契約しましょって言ったら商品買うだけだし、その場で代金を全額渡すからそこまでしなくて良いって言われたんです。マリカさんは魔法契約を勧めてたんだけど、ギルド長は他の支部に書類を回すのが面倒だって、嫌がったの。無理矢理契約すれば良かった!」
「売るだけならそんなもんだ。魔法契約までしたりしねぇから、面倒がる奴ならギリギリ違和感がない申し出じゃねぇか?」
「みなさん! 書類がありました! 申請日は、3日前で書類を持ってきたのはマニチの冒険者ギルドの支部長です!」
「3日前って……私たちがナビの追加注文受けた日……」
「冒険者ギルドから、ナビもナビ用の箱も販売申請が済んでいます。許可も下りているから、売って頂いて問題ありませんよ」
「……うそ」
「そ、そうなんですか?」
アオイさんは、断りをいれてから慌ててカナさんと通信を始めた。その姿を見て協会長さんがニコニコ笑っている。
「それがナビですね。道案内の魔道具に、通話の機能を付ける発想が素晴らしいです。私も研究用に買ったんですよ。金貨6枚となかなか高額でしたが、素晴らしいものですね。良い物を買いました」
結局、ナビは金貨6枚でギルドが売ってるらしい。僕たちは、金貨5枚で卸している。
「おう、ナビは俺も見たけどすげぇよな」
「さすがダンのお弟子さんですね」
「マイスは、自慢の弟子だからな。まだちょっとしか教えられてねえんだけど、これからもっと俺の技術を伝えていくつもりだ」
「人にも自分にも厳しいダンがそこまで褒めるなんて珍しいですね。まぁ、こんな物を作れる方なら納得しますけど」
「しかも、マイスは真面目なんだ。遅刻なんてした事ねぇし、仕事も丁寧、一度教えた事はちゃんと覚えるし、言動も柔らかいから客の評判も良い」
「優秀ですね」
「俺とは大違いだな」
「ダンは腕は確かでしたが、不真面目でしたからねぇ。しょっちゅうお客様と喧嘩していましたし」
「うっせぇ! 一回貴族に喧嘩売っちまって捕まりかけてから、めちゃくちゃ反省したっつうの!」
「たしかに、あれから遅刻もなくなって真面目になりましたから、得た物も大きかったですね」
「まぁな。で、結局ナビは冒険者ギルドが申請してくれてたのか?」
「ええ、そうです。製作者はマイスさんになってますよ。販売者は冒険者ギルドになってますけど、マイスさん本人であれば冒険者ギルド以外にナビを売る事も可能です」
「はぁ……良かった……」
僕はホッとして、床にへたりこんだ。
「良くない!」
「アオイさん?」
「今、冒険者ギルドに説明に行ったら、ギルド長に問題ないですって言われて追い返されたらしいわ! それより早くナビを納品しろって言われたそうよ。マリカさんは1週間前から留守のまま! 絶対おかしい!」
「何がおかしいんですか?!」
「販売者は、なんで冒険者ギルドになってるのよ! マイス本人なら他のとこにも売れるらしいけど、マイスは販売担当じゃないわ。売るのは私達よ。このままだと、ギルドにしかナビを売れない。もともと、面倒だし冒険者ギルドに販売を委託するつもりではいたけど、販売を独占させるなんて契約してないわ。私が知らずにナビを他の人に売ったら、私が捕まる」
「えっ?!」
「協会の申請は、大陸全土に広がる魔法契約なので違反すれば分かります。たしかに、販売を冒険者ギルドと限定しているのでマイスさん以外が商売として売れば捕まります」
複数個売るとか、条件はあるらしいけどアオイさん達が気がつかずに売れば確実に捕まる。僕は、発明者兼製作者だから、問題ないそうだ。
「普通は街単位の魔法契約だけど、協会なんて大きなところなら大陸全土の魔法契約ですものね」
魔法契約は、範囲が決まっている。親方や僕がした魔法契約は、契約した場所から半径50キロくらいに効果があるもの。だから親方は僕に事情を説明できた。ミクタから出てしまえば契約は関係ないからね。
大陸全土に効果がある物もあるけど、高価だし滅多に使わない。魔道具協会は、魔法契約の用紙を自分達で作ってるからふんだんに使うそうだけど。
「マイスさんが冒険者ギルドに販売を許可する形で申請したんじゃないんですか?」
「たしかに、冒険者ギルドがナビを売るとは聞いていました。でも、協会に申請までしたなんて聞いてません」
「そもそも、マイスは申請してねぇから慌てて謝罪に来たんだろ?」
「たしかにそうですね……これは、由々しき事態です。すぐに申請書類をお持ちします! 確認しましょう」
「親方……僕また騙されました?」
今までの嫌な事が、思い出されて涙が溢れてくる。
「落ち着け、ナビの発明者と製作者はマイスだ。マイスの権利は、かなり手厚く保証される。そもそも申請書類は、マイスが書かないと無効だ」
「私、色々思い出したんですけど、冒険者ギルドと魔法契約しましょって言ったら商品買うだけだし、その場で代金を全額渡すからそこまでしなくて良いって言われたんです。マリカさんは魔法契約を勧めてたんだけど、ギルド長は他の支部に書類を回すのが面倒だって、嫌がったの。無理矢理契約すれば良かった!」
「売るだけならそんなもんだ。魔法契約までしたりしねぇから、面倒がる奴ならギリギリ違和感がない申し出じゃねぇか?」
「みなさん! 書類がありました! 申請日は、3日前で書類を持ってきたのはマニチの冒険者ギルドの支部長です!」
「3日前って……私たちがナビの追加注文受けた日……」
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