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第一章

【ミクタ】終わりだ

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「ふざけんじゃねえ! 明日の午前中までに新商品なんて出来るわけねえだろ!」

まずい、まずい、まずい……。
除名は勘弁だと職人は全員集まった。だが、明日の午前までに新商品を作れと言った途端に、全員がキレだした。

マイスを隠してる奴も、これだけ騒げばマイスを連れてくると思っていた。

「おい! お前らマイスを隠してたら怒らねぇから今すぐ連れてこい!」

そう、何度も言った。

だが、誰もマイスの行方を知らないと言う。

遂には、マイスを匿ってるのは俺じゃねぇかと疑われた。そんな訳あるか! 今一番マイスが居なくて困ってんのは俺だよ!

そう叫んで、全員に新商品の開発を命じた。

そしたら、この状態だ。
新商品なんて、簡単に出来るかとみんながキレた。

どうしてだ、マイスなんてメシを奢ってる間に少なくともひとつ、多ければ3つは新商品を思いつくんだぞ。試作品だって徹夜させりゃ作れるし。こんだけ職人が居りゃあ、新商品のひとつくらいすぐに出来るだろ。

そう、俺は言った。

そしたら、キレた職人が暴れ出した。

「ふざけんな! 新商品なんてそんなポンポン出来るかよ! 普通は開発期間は1ヶ月は要るだろ」

「いや、1ヶ月じゃ少ねえ!」

「そうだそうだ!」

「明日までなんて無茶苦茶だ!」

全員めちゃくちゃ怒ってる。なんでだ。そんなに新商品は大変か?

「大体、マイスが居なくなったのはギルド長のせいじゃねぇのか!」

「そうだ! いつまでも見習いで、マイスもいい加減に嫌になっちまったんだ!」

「そうだよ! あんなに出来るやつ見習いのままで使い潰そうとしたから、逃げちまったんだ!」

どいつもこいつも勝手な事ばかり言いやがって。お前らだって笑いながらマイスを使ってただろ?! 手の平を返すんじゃねぇよ!

「そんなに言うなら、ギルド長が新商品作れよ!」

「そうだそうだ!」

……やべえ、俺も新商品なんて作った記憶がねぇ。だが、ここはギルド長の威厳を出さないと……。

「分かった、俺がやるからお前ら手伝え」

全員で徹夜して作った新商品だ! これなら領主様も気に入ってくれるはず……!

「なんだこれは?」

「……え? 新商品でございます」

領主様は、眉間に皺を寄せたまま言った。

「ふむ、今回は調子が悪かったのか。まぁ、仕方ない。次回の新商品に期待しているよ」

そう言って、領主様は帰って行った。次は2ヶ月後に来るそうだ。

「2ヶ月……お前らなんとか新商品を作れ」

「またかよ! なんでそんなに新商品がいるんだ!」

「新商品を作る事で、税を免除してもらってんだよ! だから、必ず作れ!」

焦っていた俺は、思わず叫んでしまった。

「はぁ?! 俺たちはちゃんと税金を払ってるだろ?! ギルド長がまとめて納税するって持って行ってるだろ! まさか……税を減免されたのに俺たちに返金してねえのかよ!!!」

そうだった。税金は、みんなから集めていた。すっかり自分の小遣いの気分でいたが、ありゃあ、手をつけちゃいけねぇ金だったんだ。

その日から、俺をギルド長と呼ぶ奴は居なくなった。
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