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改稿版
24.変化の時
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「エルザ、エルザ居るか?!」
お姉様の結婚式が終わった直後、マックスから連絡がありました。今まで聞いた事がないくらい焦った声でマックスが叫んでいます。
「居るわ。どうしたの? そんなに慌てて」
「今すぐエルザを迎えに行く。準備しておけ。荷物はテレーズ様のブレスレットに入ってるよな?」
「ええ、持ち物は全てブレスレットに入れてるわ」
「俺が今すぐ現れても大丈夫な格好をしてるか?」
「え、ええ」
「なら、すぐ行く」
そう言って、マックスが姿を現しました。ジェラール様もご一緒です。
「ジェラール様? どうして……?」
「良かった。無事だね。マックス、急いで彼女の家に転移しよう。あそこはシモンも知らない筈だ」
「分かってるよ! エルザ、説明は後だ。とにかくここから逃げるぞ!」
扉の先で、大声で叫ぶ声が響き渡りました。忘れる訳ありません。シモン様の声です。必死で止めているお姉様の声もします。
「エルザの持ち物は、なんも残ってねえな?」
飲みかけていた紅茶と菓子をジェラール様が手に取りました。
「紅茶は僕が持つ。あとはないね?! マックス急げ!」
「おう!」
ドアを破ろうとするシモン様と、止めようとするお姉様の声……。部屋を転移しても、耳から離れません。
「なんで……! なんでシモン様が……!」
「落ち着いて。もう大丈夫だから」
「ジェラール、エルザは任せた! いざとなりゃ転移出来るだろ!」
「ああ、まだ覚えたてだが僕とエルザ嬢くらいなら転移出来る」
「ここは大丈夫だと思うが、俺が戻るまでエルザから離れるなよ! もしここもバレたら、安全なところにエルザを逃がしてくれ。ジェラールの魔力ならすぐ大人数を転移出来るようになる。けど、使う時は気をつけろよ。シモン様に見られたら終わりだ」
「分かってる。まさかシモンがあんな無礼な事をするなんて……」
「エルザの特殊能力を確信してるって事だ。テレーズ様が魔力検査されちまえばエルザが生きてる事がバレる。良いか、今のうちに例の話をエルザにしておけ。シモン様があんなアホな事をしても止められなかったって事は、国自体がヤベエ。場合によっちゃ、テレーズ様達も国外脱出した方が良いかもしれねぇ。そん時は頼むぞ」
「既に父上達に話はしてあるよ。契約があるから理由は説明してないが、僕が認めた人なら国に受け入れると承諾は貰ってある!」
「よっしゃ! 流石だぜ! 俺はジェラールが信じた人ならエルザの事を話してくれて構わねえ。これで魔法契約はクリアする筈だ! あとはエルザが許可すりゃあ良い。エルザ、ちゃんとジェラールの話を聞いて自分で決めろ! 俺はテレーズ様のとこに戻る。エルザが死ぬ前に、テレーズ様にヴェールを渡すよう頼まれたって事で納得させてみる! エルザ、なんか処分しても良い持ち物ねぇか?」
「これなら要らないわ」
わたくしが渡したのは、シモン様から頂いた髪飾りです。シモン様への未練が捨てきれず売れなかった物です。すっかり忘れておりましたが、こんなものもう要りません。
「これは……シモンが贈った髪飾りか。確かにこれなら納得するかもしれない。マックス、エルザ嬢が亡くなった事にしてある森で見つけた事にしろ。大切そうに付けていたから気になって持って来た。それでいこう」
「良いな。俺は報酬がもらえんじゃねえかと期待して訪ねて来たって事にすりゃあ良い。すぐ行く。あとは頼むぜ!」
「魔力検査だけはされないよう気をつけろ! マックスの魔力が判明したら君の命が危ない!」
「そんなヘマしねぇよ。エルザを頼むぜ、ジェラール」
「ああ! 任せろ!」
すぐにマックスは消えて、部屋にはジェラール様とわたくしだけが取り残されました。
「なにが……起こってるのでしょうか……」
シモン様は、わたくしを探しに来たのでしょう。マックスがヴェールの話をしておりましたから、わたくしがお姉様に贈ったヴェールが原因で……わたくしが生きていると思われたという事でしょうか。
でも、それ以上考える事が出来ません。
シモン様の声が怖くて、思考が止まってしまいます。
「エルザ嬢、落ち着いて。ここは安全だ。ちゃんと説明する」
「……はい。よろしくお願いします。あの……」
「どうしたの?」
「お姉様は、無事なのでしょうか? マックスは……戻っても大丈夫なのでしょうか?」
「テレーズ様が本気になればシモンなんてひとたまりもない。マックスも強い。だから大丈夫」
「……けど! シモン様は王族です!」
「王族は何をしてもいい訳ではないんだ。あの屋敷をどれだけ探してもエルザ嬢は見つからない。そうなればシモンは筆頭公爵家に侵入し家を荒らした無礼者だ。しかも、理由は限りなく自己中心的。いくら王位継承者でもお咎め無しとはいかない。身を守る為にシモンを拘束するくらいは許される。テレーズ様も、マックスも人を傷つけず無力化する魔法をたくさん知っている。例えシモンが騎士団を率いて来ても大丈夫。あの2人が揃えば、1000人の騎士でも無力化出来る」
「せ、1000人ですか?!」
「そう。2人はそれくらい強いんだ。それも、エルザ嬢のおかげだけどね」
「そうだったのですね。それなら……良かった。でも! シモン様はきっと諦めません。魔力への執着は異常ですもの」
「マックスが誤魔化すと言ってたけど、きっといつかエルザ嬢が生きてる事に気付かれる。我々は出来る限りその期間を伸ばすつもりではあるけど、いずれエルザ嬢はもう一度シモンと会う事になる。だからね、君を守る為に2つの案を考えた。今から説明するからゆっくり聞いてくれ。もちろん、どちらの案も選ばないというのも有りだ。僕達は、エルザ嬢が幸せに生きていく為ならどんな事でもするよ」
お姉様の結婚式が終わった直後、マックスから連絡がありました。今まで聞いた事がないくらい焦った声でマックスが叫んでいます。
「居るわ。どうしたの? そんなに慌てて」
「今すぐエルザを迎えに行く。準備しておけ。荷物はテレーズ様のブレスレットに入ってるよな?」
「ええ、持ち物は全てブレスレットに入れてるわ」
「俺が今すぐ現れても大丈夫な格好をしてるか?」
「え、ええ」
「なら、すぐ行く」
そう言って、マックスが姿を現しました。ジェラール様もご一緒です。
「ジェラール様? どうして……?」
「良かった。無事だね。マックス、急いで彼女の家に転移しよう。あそこはシモンも知らない筈だ」
「分かってるよ! エルザ、説明は後だ。とにかくここから逃げるぞ!」
扉の先で、大声で叫ぶ声が響き渡りました。忘れる訳ありません。シモン様の声です。必死で止めているお姉様の声もします。
「エルザの持ち物は、なんも残ってねえな?」
飲みかけていた紅茶と菓子をジェラール様が手に取りました。
「紅茶は僕が持つ。あとはないね?! マックス急げ!」
「おう!」
ドアを破ろうとするシモン様と、止めようとするお姉様の声……。部屋を転移しても、耳から離れません。
「なんで……! なんでシモン様が……!」
「落ち着いて。もう大丈夫だから」
「ジェラール、エルザは任せた! いざとなりゃ転移出来るだろ!」
「ああ、まだ覚えたてだが僕とエルザ嬢くらいなら転移出来る」
「ここは大丈夫だと思うが、俺が戻るまでエルザから離れるなよ! もしここもバレたら、安全なところにエルザを逃がしてくれ。ジェラールの魔力ならすぐ大人数を転移出来るようになる。けど、使う時は気をつけろよ。シモン様に見られたら終わりだ」
「分かってる。まさかシモンがあんな無礼な事をするなんて……」
「エルザの特殊能力を確信してるって事だ。テレーズ様が魔力検査されちまえばエルザが生きてる事がバレる。良いか、今のうちに例の話をエルザにしておけ。シモン様があんなアホな事をしても止められなかったって事は、国自体がヤベエ。場合によっちゃ、テレーズ様達も国外脱出した方が良いかもしれねぇ。そん時は頼むぞ」
「既に父上達に話はしてあるよ。契約があるから理由は説明してないが、僕が認めた人なら国に受け入れると承諾は貰ってある!」
「よっしゃ! 流石だぜ! 俺はジェラールが信じた人ならエルザの事を話してくれて構わねえ。これで魔法契約はクリアする筈だ! あとはエルザが許可すりゃあ良い。エルザ、ちゃんとジェラールの話を聞いて自分で決めろ! 俺はテレーズ様のとこに戻る。エルザが死ぬ前に、テレーズ様にヴェールを渡すよう頼まれたって事で納得させてみる! エルザ、なんか処分しても良い持ち物ねぇか?」
「これなら要らないわ」
わたくしが渡したのは、シモン様から頂いた髪飾りです。シモン様への未練が捨てきれず売れなかった物です。すっかり忘れておりましたが、こんなものもう要りません。
「これは……シモンが贈った髪飾りか。確かにこれなら納得するかもしれない。マックス、エルザ嬢が亡くなった事にしてある森で見つけた事にしろ。大切そうに付けていたから気になって持って来た。それでいこう」
「良いな。俺は報酬がもらえんじゃねえかと期待して訪ねて来たって事にすりゃあ良い。すぐ行く。あとは頼むぜ!」
「魔力検査だけはされないよう気をつけろ! マックスの魔力が判明したら君の命が危ない!」
「そんなヘマしねぇよ。エルザを頼むぜ、ジェラール」
「ああ! 任せろ!」
すぐにマックスは消えて、部屋にはジェラール様とわたくしだけが取り残されました。
「なにが……起こってるのでしょうか……」
シモン様は、わたくしを探しに来たのでしょう。マックスがヴェールの話をしておりましたから、わたくしがお姉様に贈ったヴェールが原因で……わたくしが生きていると思われたという事でしょうか。
でも、それ以上考える事が出来ません。
シモン様の声が怖くて、思考が止まってしまいます。
「エルザ嬢、落ち着いて。ここは安全だ。ちゃんと説明する」
「……はい。よろしくお願いします。あの……」
「どうしたの?」
「お姉様は、無事なのでしょうか? マックスは……戻っても大丈夫なのでしょうか?」
「テレーズ様が本気になればシモンなんてひとたまりもない。マックスも強い。だから大丈夫」
「……けど! シモン様は王族です!」
「王族は何をしてもいい訳ではないんだ。あの屋敷をどれだけ探してもエルザ嬢は見つからない。そうなればシモンは筆頭公爵家に侵入し家を荒らした無礼者だ。しかも、理由は限りなく自己中心的。いくら王位継承者でもお咎め無しとはいかない。身を守る為にシモンを拘束するくらいは許される。テレーズ様も、マックスも人を傷つけず無力化する魔法をたくさん知っている。例えシモンが騎士団を率いて来ても大丈夫。あの2人が揃えば、1000人の騎士でも無力化出来る」
「せ、1000人ですか?!」
「そう。2人はそれくらい強いんだ。それも、エルザ嬢のおかげだけどね」
「そうだったのですね。それなら……良かった。でも! シモン様はきっと諦めません。魔力への執着は異常ですもの」
「マックスが誤魔化すと言ってたけど、きっといつかエルザ嬢が生きてる事に気付かれる。我々は出来る限りその期間を伸ばすつもりではあるけど、いずれエルザ嬢はもう一度シモンと会う事になる。だからね、君を守る為に2つの案を考えた。今から説明するからゆっくり聞いてくれ。もちろん、どちらの案も選ばないというのも有りだ。僕達は、エルザ嬢が幸せに生きていく為ならどんな事でもするよ」
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