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改稿版
19.友人
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グルグルと色んな事を考えている間にもマックスとジェラール様の会話は続きます。
ジェラール様はマックスの言葉をすぐには信用出来ないようです。それはそうですよね。でも、マックスは嘘を吐くような人ではありません。どう言えば、伝わるでしょうか。
悩んでいると、マックスがわたくしの腕を掴んでジェラール様を睨みつけました。
「だって、証明すんにはエルザが傷つく必要がありますからね。そんなの無理っすよ。俺は知ってる情報を提供するだけです。これ、俺のわかる範囲でエルザの特殊能力について書いてあります。大事なモンですけど、お渡しします。魔法についての知識がある人が読めば、正しいと判断してくれると思いますぜ。これが俺に出来る精一杯です。エルザが傷つくのに特殊能力の力を証明しろって言うなら、俺は今すぐエルザを攫って逃げます」
「……すまなかった。エルザ嬢が傷つくなどあってはならない。この資料はきちんと検証させて頂くよ。勿論、エルザ嬢を実験台にしたりしない。僕が今日お会いしたのはエルさんだ。エルザ嬢はお亡くなりになった」
「お、話が分かりますね。さすが魔力が下がらねぇ男は違いますね」
マックスはわたくしの腕から手を離し、人懐っこい笑みを浮かべます。出会った時は迫力がある方だと思っておりましたけど、マックスは人の懐に入るのがとても上手です。
「……なんだそれは」
「俺らはエルザの特殊能力のおかげで魔力が上がってるのは間違いありませんよね。だから、ジェラール様は私利私欲でエルザを利用しようとしない」
「そんなの、当たり前じゃないか。だが……マックス殿の言う通り、僕はエルザ嬢の力の恩恵を受けているな。魔力検査の時に僕の魔力が高かったのも、エルザ嬢のおかげだろう」
「あん時はシモン様が5000で、ジェラール様が1000でしたよね」
「いくらマックス殿が信用出来るからといっても、なんでもかんでも話し過ぎではないだろうか……」
え、わたくし何も言ってませんわよ!
「エルザから無理矢理聞き出したのは俺ですよ。時折婚約破棄の事を思い出すみたいで、泣いていたので」
え、わたくし泣いてませんわよ!
マックスとジェラール様の会話はポンポンと進み、口を挟む暇がない。
「何?! そ、それは申し訳なかった……!」
「嘘っす。エルザは一回も泣いてません。たくましく平民に馴染んで生きてますよ」
「なっ! マックス殿! 騙したのか?!」
えー……何やってんのよ、マックス。でも、なんだかふたりとも楽しそうだわ。
「いやー……マジでジェラール様は良い人っすね。ちなみに魔力検査の数値は新聞を見ました。エルザはなんも言ってねぇっす」
「くっ……確かに記事にされていたな……我が国ではそんな事はしないから失念していたよ……!」
「って訳で、俺らはエルザの味方だ。特殊能力の事を知っても魔力が下がらねぇんだから、ジェラール様は信じて大丈夫だぜ」
「僕を試したのか?!」
「ええ。試しましたよ。この部屋で起きた事はぜーんぶ、不敬にならねぇんでしょう? こんなチャンスありませんからね。見極めさせて貰いました」
「くっ……! いい性格をしているな」
「俺は、ジェラール様みてぇな善人じゃねぇんで」
「そんな事を言うが、マックス殿の魔力も下がっていないのだから、エルザ嬢を利用しようとする意図は無いのだろう」
「その前提、俺が勝手に言ってるだけっすよ。信じて良いんすか?」
「ああ。信じるよ。マックス殿は、エルザ嬢には嘘は吐かないだろう?」
ジェラール様の言葉に、マックスが悔しそうに顔を歪めます。でも、目の奥はなんだか楽しそうです。
「ジェラール様も結構いい性格してますよね。エルザが良い人だっていつも言ってるし、もっと聖人みてぇな人を想像してましたよ」
「僕は一応王太子だからね。それなりな教育を受けているよ」
「うへぇ、王族は嫌いっすよ」
「おや、僕も嫌いかい?」
「……いや。ジェラール様は嫌いじゃねぇっす。身分だけで人を判断するなんて、間違ってました。実際のジェラール様は俺らと変わらねぇ普通の人なのに。失礼な事を言って、申し訳ありませんでした」
「許すよ。だから、僕と友人になってくれ」
「は?! 俺は平民の冒険者ですぜ?!」
「おや? 身分で人を判断しないんじゃなかったのかい?」
「しませんよ! ジェラール様がいい人だってのは分かりましたよ!」
「いい人なら、友人になっても良いだろう?」
「あーもう! 分かったよ! けど、友人だって言うなら敬語なんて使わねぇぞ!」
「ああ、それでお願いするよ」
目の前で、固く握手をするジェラール様とマックス。全然ついていけませんわ。
だけど、楽しそうに笑うジェラール様とマックスを見て良かったなと思いました。久しぶりに、ジェラール様の心からの笑みを拝見致しましたわ。
ジェラール様はマックスの言葉をすぐには信用出来ないようです。それはそうですよね。でも、マックスは嘘を吐くような人ではありません。どう言えば、伝わるでしょうか。
悩んでいると、マックスがわたくしの腕を掴んでジェラール様を睨みつけました。
「だって、証明すんにはエルザが傷つく必要がありますからね。そんなの無理っすよ。俺は知ってる情報を提供するだけです。これ、俺のわかる範囲でエルザの特殊能力について書いてあります。大事なモンですけど、お渡しします。魔法についての知識がある人が読めば、正しいと判断してくれると思いますぜ。これが俺に出来る精一杯です。エルザが傷つくのに特殊能力の力を証明しろって言うなら、俺は今すぐエルザを攫って逃げます」
「……すまなかった。エルザ嬢が傷つくなどあってはならない。この資料はきちんと検証させて頂くよ。勿論、エルザ嬢を実験台にしたりしない。僕が今日お会いしたのはエルさんだ。エルザ嬢はお亡くなりになった」
「お、話が分かりますね。さすが魔力が下がらねぇ男は違いますね」
マックスはわたくしの腕から手を離し、人懐っこい笑みを浮かべます。出会った時は迫力がある方だと思っておりましたけど、マックスは人の懐に入るのがとても上手です。
「……なんだそれは」
「俺らはエルザの特殊能力のおかげで魔力が上がってるのは間違いありませんよね。だから、ジェラール様は私利私欲でエルザを利用しようとしない」
「そんなの、当たり前じゃないか。だが……マックス殿の言う通り、僕はエルザ嬢の力の恩恵を受けているな。魔力検査の時に僕の魔力が高かったのも、エルザ嬢のおかげだろう」
「あん時はシモン様が5000で、ジェラール様が1000でしたよね」
「いくらマックス殿が信用出来るからといっても、なんでもかんでも話し過ぎではないだろうか……」
え、わたくし何も言ってませんわよ!
「エルザから無理矢理聞き出したのは俺ですよ。時折婚約破棄の事を思い出すみたいで、泣いていたので」
え、わたくし泣いてませんわよ!
マックスとジェラール様の会話はポンポンと進み、口を挟む暇がない。
「何?! そ、それは申し訳なかった……!」
「嘘っす。エルザは一回も泣いてません。たくましく平民に馴染んで生きてますよ」
「なっ! マックス殿! 騙したのか?!」
えー……何やってんのよ、マックス。でも、なんだかふたりとも楽しそうだわ。
「いやー……マジでジェラール様は良い人っすね。ちなみに魔力検査の数値は新聞を見ました。エルザはなんも言ってねぇっす」
「くっ……確かに記事にされていたな……我が国ではそんな事はしないから失念していたよ……!」
「って訳で、俺らはエルザの味方だ。特殊能力の事を知っても魔力が下がらねぇんだから、ジェラール様は信じて大丈夫だぜ」
「僕を試したのか?!」
「ええ。試しましたよ。この部屋で起きた事はぜーんぶ、不敬にならねぇんでしょう? こんなチャンスありませんからね。見極めさせて貰いました」
「くっ……! いい性格をしているな」
「俺は、ジェラール様みてぇな善人じゃねぇんで」
「そんな事を言うが、マックス殿の魔力も下がっていないのだから、エルザ嬢を利用しようとする意図は無いのだろう」
「その前提、俺が勝手に言ってるだけっすよ。信じて良いんすか?」
「ああ。信じるよ。マックス殿は、エルザ嬢には嘘は吐かないだろう?」
ジェラール様の言葉に、マックスが悔しそうに顔を歪めます。でも、目の奥はなんだか楽しそうです。
「ジェラール様も結構いい性格してますよね。エルザが良い人だっていつも言ってるし、もっと聖人みてぇな人を想像してましたよ」
「僕は一応王太子だからね。それなりな教育を受けているよ」
「うへぇ、王族は嫌いっすよ」
「おや、僕も嫌いかい?」
「……いや。ジェラール様は嫌いじゃねぇっす。身分だけで人を判断するなんて、間違ってました。実際のジェラール様は俺らと変わらねぇ普通の人なのに。失礼な事を言って、申し訳ありませんでした」
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「あーもう! 分かったよ! けど、友人だって言うなら敬語なんて使わねぇぞ!」
「ああ、それでお願いするよ」
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