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ルビーのブローチを渡すまで逃しません
14.リアムの日常
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あの日から、カーラさんは今まで以上に努力していると聞いている。
以前は、領地に戻った時にはなにかと顔を合わせる機会があったけど……今はエリザベス様が領地に戻って来ても滅多に会う事はない。
カーラさんは、今はトムさんと一緒に御者の練習をしているらしい。エリザベス様は、領地に視察に来たイアンと仲良くやっている。
友人が幸せそうで嬉しいが、なんだか面白くない。私は、ソフィア程ではないがそれなりに勘が良い。
カーラさんは、私を好いていてくれたように思う。少しあからさまだったが、他の女性に比べたら控えめなアプローチは、なんだか心地良かった。
だけどあの日、子どもたちにお金を全て奪い取られてからカーラさんは変わった。元々かなり真面目に仕事をしている人だったが、更に仕事に邁進するようになった。休日はちゃんとあるのに、休日も訓練や勉強をしているらしい。
エリザベス様は、カーラさんをとても信頼しているようだ。侍女としてもすこぶる優秀なようで、エリザベス様の身だしなみを整えるのはほとんどカーラさんだ。他の侍女やメイドもいるが、リアさんから仕事を任されるのはほぼカーラさんらしい。
リアさんは、とても厳しい方だ。もちろん、リンゼイ子爵のように暴力を振るう事はないが、信頼出来る人にしか仕事を任せない。彼女に仕事を与えられるのは、認められた証らしい。
エリザベス様に付いていたリアさんが、今はカーラさんにほとんどの仕事を任せるようになったそうだ。
彼女のヘアメイクは、とても早いのに丁寧で美しいと評判で、彼女の指導でバルタチャ伯爵家の侍女の腕は上がった。他家に手伝いに行く時も評判が良く、バルタチャ伯爵家の利益に繋がっている。
カーラさんは、自分は不器用だから誰にでも出来る方法を考えたのだと謙遜していたが、苦手な事に取り組んで別のアプローチから解決策を考えるなんて、誰にでもできる事ではない。
カーラさんの指導で腕が上がった侍女達は、引き抜きをされそうになった者もいたらしい。だが、誰一人靡かなかったそうだ。バルタチャ伯爵家は、使用人の結束も固い。
カーラさんも、エリザベス様の為ならどんな努力も厭わないだろう。
彼女は、エリザベス様が結婚したらイアンが雇うと正式に決まった。そしたら、彼女と会う理由がなくなる。
「なぁ、リアム。なにかあったのか?」
愛しい恋人と過ごしていた筈の友人が、心配そうに執務室に入って来た。
「……なにもないよ。それより、エリザベス様はどうしたんだ?」
「明日ポールが領地に来るだろう? ポールの誕生日を祝いたいと使用人達と準備をしているよ」
「そうか。伯爵になった祝いも一緒にやろう。私も行ってくるよ」
そう言って部屋を出て行こうとした私の腕を、イアンが掴んだ。
「……そうやって誤魔化すのは、リアムの悪い癖だぞ。なにがあった? 何か困ってるんじゃないのか?」
心配そうに眉を曇らせるイアン。くそっ! なにも心配事なんてない!
そう言いたかったが、私の頭の中には一人の女性の笑顔がこびりついて離れなくなっている。それに、この友人は優しいが頑固だ。私の様子がおかしい事くらい分かっているし、理由を言わなければずっと私に張り付いているだろう。
「……いいか。誰にも言うなよ」
「約束する」
この男は、真面目で義理堅い。彼がそう言うのなら、本当に誰にも言わない。例え愛しい婚約者が泣いて頼んでも、決して言わない。そして、彼の愛する婚約者は……話したくない事を無理矢理聞き出そうとするような真似はしない。
子どもじみた悩みを言うのは憚られたが、モヤモヤしているのは確かだ。私は、優しい友人に相談する事にした。
以前は、領地に戻った時にはなにかと顔を合わせる機会があったけど……今はエリザベス様が領地に戻って来ても滅多に会う事はない。
カーラさんは、今はトムさんと一緒に御者の練習をしているらしい。エリザベス様は、領地に視察に来たイアンと仲良くやっている。
友人が幸せそうで嬉しいが、なんだか面白くない。私は、ソフィア程ではないがそれなりに勘が良い。
カーラさんは、私を好いていてくれたように思う。少しあからさまだったが、他の女性に比べたら控えめなアプローチは、なんだか心地良かった。
だけどあの日、子どもたちにお金を全て奪い取られてからカーラさんは変わった。元々かなり真面目に仕事をしている人だったが、更に仕事に邁進するようになった。休日はちゃんとあるのに、休日も訓練や勉強をしているらしい。
エリザベス様は、カーラさんをとても信頼しているようだ。侍女としてもすこぶる優秀なようで、エリザベス様の身だしなみを整えるのはほとんどカーラさんだ。他の侍女やメイドもいるが、リアさんから仕事を任されるのはほぼカーラさんらしい。
リアさんは、とても厳しい方だ。もちろん、リンゼイ子爵のように暴力を振るう事はないが、信頼出来る人にしか仕事を任せない。彼女に仕事を与えられるのは、認められた証らしい。
エリザベス様に付いていたリアさんが、今はカーラさんにほとんどの仕事を任せるようになったそうだ。
彼女のヘアメイクは、とても早いのに丁寧で美しいと評判で、彼女の指導でバルタチャ伯爵家の侍女の腕は上がった。他家に手伝いに行く時も評判が良く、バルタチャ伯爵家の利益に繋がっている。
カーラさんは、自分は不器用だから誰にでも出来る方法を考えたのだと謙遜していたが、苦手な事に取り組んで別のアプローチから解決策を考えるなんて、誰にでもできる事ではない。
カーラさんの指導で腕が上がった侍女達は、引き抜きをされそうになった者もいたらしい。だが、誰一人靡かなかったそうだ。バルタチャ伯爵家は、使用人の結束も固い。
カーラさんも、エリザベス様の為ならどんな努力も厭わないだろう。
彼女は、エリザベス様が結婚したらイアンが雇うと正式に決まった。そしたら、彼女と会う理由がなくなる。
「なぁ、リアム。なにかあったのか?」
愛しい恋人と過ごしていた筈の友人が、心配そうに執務室に入って来た。
「……なにもないよ。それより、エリザベス様はどうしたんだ?」
「明日ポールが領地に来るだろう? ポールの誕生日を祝いたいと使用人達と準備をしているよ」
「そうか。伯爵になった祝いも一緒にやろう。私も行ってくるよ」
そう言って部屋を出て行こうとした私の腕を、イアンが掴んだ。
「……そうやって誤魔化すのは、リアムの悪い癖だぞ。なにがあった? 何か困ってるんじゃないのか?」
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そう言いたかったが、私の頭の中には一人の女性の笑顔がこびりついて離れなくなっている。それに、この友人は優しいが頑固だ。私の様子がおかしい事くらい分かっているし、理由を言わなければずっと私に張り付いているだろう。
「……いいか。誰にも言うなよ」
「約束する」
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子どもじみた悩みを言うのは憚られたが、モヤモヤしているのは確かだ。私は、優しい友人に相談する事にした。
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