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7.違う、そうじゃない
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「……今日、は」
無言になるロバート様は、目をキョロキョロと動かして落ち着きがない。もしかして、急遽予定が変わったのかしら。
そうよ、結婚式の後だって急に……。
ロバート様の仕事は完璧だとみんなが言っていた。きっと、また何か緊急の用事ができたんだわ。
「あの、もしかして急遽予定が変わってしまったのですか?」
「い、いや、そんな事はない」
ロバート様はなんてお優しいのかしら。わたくしを気遣って下さったのね。でも……お仕事の邪魔は良くないわ。
「気にしないで下さい。わたくしがいない方が良ければ帰ります。残念ですけど、またチャンスはありますもの」
「ち、違うんだ。その……」
オロオロしているロバート様の元に、側仕えのジョージが現れた。そういえば、ロバート様とお話しする時はいつもジョージがいるわね。
「旦那様。お忘れ物でございます」
ジョージは一枚の紙と、お財布をロバート様に手渡した。紙を見たロバート様はすぐに紙を懐に仕舞った。
ジョージが来たのだからやっぱり緊急のお仕事があるんじゃないかしら。
そっとロバート様の腕から手を離し、ジョージとロバート様がゆっくり話せるように少し距離を取る。
ロバート様が悲しそうな顔をしていた。
今日の視察は中止かしらね。仕方ないわ。
「緊急のお仕事が入りましたか?」
わたくしの発言に、ロバート様は目を見開いた。ジョージがなにやら耳打ちをすると、ロバート様の表情が凛々しいものに変わった。先ほどの落ち着きがないご様子も新鮮だったけど、凛々しいロバート様も素敵だわ。
「今日の視察は、市場と商会だ。もしマリアが気に入った物があれば買おう」
「……え、ご予定は大丈夫なのですか?」
「問題ない」
いつの間にかジョージは消えていて、ロバート様の手には財布が握られていた。辺境は現金でのやりとりが多く、貴族でも街で買い物する時はツケ払いをしない。
そうか、視察なら買い物なんてしないものね。わたくしが付いてくれる事になったからなにか買うかもしれないと気を遣って下さったんだわ。
ああ、やっぱりロバート様は素敵な方……。
「ロバート様、大好きですわ!」
「こ……これはやっぱり都合のいい夢だ……」
ロバート様の呟きは小さくて、あまりよく聞こえなかった。
「申し訳ありません。よく聞こえなくて。もしかして腕を組むのはお嫌ですか?」
エイダは腕を組むように勧めてきたけど、失敗だったかしら?
「……夢、なら好きなように……いえ! とても嬉しいです! 街中は危険なので私の側から離れないで下さい!」
「はいっ!」
前半の呟きは聞こえなかったけど、ロバート様も喜んでいるのね。良かったわ。
嫌われていない事が嬉しくて、強くロバート様の腕に抱きつくとロバート様は固まってしまわれた。
無言になるロバート様は、目をキョロキョロと動かして落ち着きがない。もしかして、急遽予定が変わったのかしら。
そうよ、結婚式の後だって急に……。
ロバート様の仕事は完璧だとみんなが言っていた。きっと、また何か緊急の用事ができたんだわ。
「あの、もしかして急遽予定が変わってしまったのですか?」
「い、いや、そんな事はない」
ロバート様はなんてお優しいのかしら。わたくしを気遣って下さったのね。でも……お仕事の邪魔は良くないわ。
「気にしないで下さい。わたくしがいない方が良ければ帰ります。残念ですけど、またチャンスはありますもの」
「ち、違うんだ。その……」
オロオロしているロバート様の元に、側仕えのジョージが現れた。そういえば、ロバート様とお話しする時はいつもジョージがいるわね。
「旦那様。お忘れ物でございます」
ジョージは一枚の紙と、お財布をロバート様に手渡した。紙を見たロバート様はすぐに紙を懐に仕舞った。
ジョージが来たのだからやっぱり緊急のお仕事があるんじゃないかしら。
そっとロバート様の腕から手を離し、ジョージとロバート様がゆっくり話せるように少し距離を取る。
ロバート様が悲しそうな顔をしていた。
今日の視察は中止かしらね。仕方ないわ。
「緊急のお仕事が入りましたか?」
わたくしの発言に、ロバート様は目を見開いた。ジョージがなにやら耳打ちをすると、ロバート様の表情が凛々しいものに変わった。先ほどの落ち着きがないご様子も新鮮だったけど、凛々しいロバート様も素敵だわ。
「今日の視察は、市場と商会だ。もしマリアが気に入った物があれば買おう」
「……え、ご予定は大丈夫なのですか?」
「問題ない」
いつの間にかジョージは消えていて、ロバート様の手には財布が握られていた。辺境は現金でのやりとりが多く、貴族でも街で買い物する時はツケ払いをしない。
そうか、視察なら買い物なんてしないものね。わたくしが付いてくれる事になったからなにか買うかもしれないと気を遣って下さったんだわ。
ああ、やっぱりロバート様は素敵な方……。
「ロバート様、大好きですわ!」
「こ……これはやっぱり都合のいい夢だ……」
ロバート様の呟きは小さくて、あまりよく聞こえなかった。
「申し訳ありません。よく聞こえなくて。もしかして腕を組むのはお嫌ですか?」
エイダは腕を組むように勧めてきたけど、失敗だったかしら?
「……夢、なら好きなように……いえ! とても嬉しいです! 街中は危険なので私の側から離れないで下さい!」
「はいっ!」
前半の呟きは聞こえなかったけど、ロバート様も喜んでいるのね。良かったわ。
嫌われていない事が嬉しくて、強くロバート様の腕に抱きつくとロバート様は固まってしまわれた。
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