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5.辺境で暮らす覚悟
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「エイダ、どこもおかしなところはない?」
「はい。ございません。とてもお似合いですよ」
緑のワンピースは街で売っているもの。髪は三つ編みにして、街に溶けこめるようにした。
今日はロバート様と一緒に視察に行く日。
エイダから話を聞いた時、最初は驚いた。だけど、指南書に夫の仕事を知ることも必要だと書かれているし、ロバート様とお近づきになりたいので頑張る事にしたの。
それに、ロバート様から視察をしようと言ってくれたのよ。ずっと屋敷にいるのは退屈だろうって。なんて優しい方なのかしら。
「ロバート様からお誘い頂けるなんて本当に嬉しいわ」
侍女達が、そっと目を伏せた。あれ? なんだか気まずそう?
もしかして、旦那様は嫌々わたくしを誘って下さったのかしら?
ずっと屋敷から出ないなんて、いけないことだったの? でも、嫁いでしばらくは家の事を把握しろと指南書に書かれていたし……はっ、領地の事を知る為に街に出ないといけなかったのかしら?
わたくしの不安を感じ取ったのか、エイダが髪を整えながらフォローしてくれた。
「奥様の頑張りは旦那様をはじめ皆に伝わっておりますよ。ロバート様は照れ屋なので、奥様が積極的になれば戸惑うかもしれませんが、街で夫婦が歩く時に腕を組むくらい普通です。やってみて下さい。そうすれば旦那様はお喜びになります」
「……本当? 嫌がられたりしない?」
「今回の視察は、旦那様からのご提案です。旦那様は奥様と仲良くなりたいのです」
「本当なら嬉しいわ。可愛くしてくれてありがとう。みんな」
視察に行く事が決まって1週間。エイダをはじめとする侍女達が毎日全身を磨いてくれた。おかげでいつもより肌の調子がいいし、全身も少し締まってきたからコルセット無しでワンピースがピッタリ入る。
「美しいです。頑張って下さい奥様」
「旦那様は女性慣れしておられないだけで、いつも奥様の事を想っておられます。ご安心下さい」
「そうです。今日だって庭師のポールに新しい薔薇を仕入れるように命じておりましたもの。奥様が薔薇をお好きだからとおっしゃっていました。旦那様は、奥様が大好きなんです」
みんなが励ましてくれて、なんだか勇気が湧いてきた。その間にエイダがいつも読んでいる本を棚の一番上に片付けてしまった。
「良いですか。今日はあの本の教えを忘れて下さい。恋人同士のように腕を組み、奥様の気持ちを旦那様にお伝えするのです」
「そんな、はしたないわ」
頼りにしている本を取ろうとすると、エイダが止めた。
「あの本は奥様には不要です。本を参考にゆっくり距離を詰める時間はありません。辺境は揉め事が多いのです。旦那様がいつ戦場に行かれるか、分かりません」
「……あ」
そうだ。結婚式の日だって、終わったらすぐ使いが来て……。今の幸せを享受していたから忘れかけていた。ここは辺境。いつ何が起きるか分からない。
「不安にさせて申し訳ありませんが、奥様には今の時間を大切にして頂きたいのです。旦那様は奥手なので、奥様から積極的に動かれた方がよろしいかと」
「分かったわ。ありがとうエイダ。みんなも、ありがとう。わたくし、頑張るわ」
「奥様を蔑ろにしたら、いくら旦那様でも許しません。まぁ、そんな事にはならないと思いますけど」
「ええ、大丈夫です。ご安心下さい。我々は奥様の味方です」
「こんなに可愛い奥様に迫られたら、旦那様はイチコロです! 頑張って下さい奥様!」
「そうですよ! 奥様は凄いです。旦那様がお留守の時はお仕事をなさっていたし、こんなに可愛いし、美しいし、優しいですし。旦那様もお優しい良い人なんです。お似合いのご夫婦ですよ」
みんな優しい。こんなに褒めて貰えるなんて、ここに嫁いで来て良かったわ。
「はい。ございません。とてもお似合いですよ」
緑のワンピースは街で売っているもの。髪は三つ編みにして、街に溶けこめるようにした。
今日はロバート様と一緒に視察に行く日。
エイダから話を聞いた時、最初は驚いた。だけど、指南書に夫の仕事を知ることも必要だと書かれているし、ロバート様とお近づきになりたいので頑張る事にしたの。
それに、ロバート様から視察をしようと言ってくれたのよ。ずっと屋敷にいるのは退屈だろうって。なんて優しい方なのかしら。
「ロバート様からお誘い頂けるなんて本当に嬉しいわ」
侍女達が、そっと目を伏せた。あれ? なんだか気まずそう?
もしかして、旦那様は嫌々わたくしを誘って下さったのかしら?
ずっと屋敷から出ないなんて、いけないことだったの? でも、嫁いでしばらくは家の事を把握しろと指南書に書かれていたし……はっ、領地の事を知る為に街に出ないといけなかったのかしら?
わたくしの不安を感じ取ったのか、エイダが髪を整えながらフォローしてくれた。
「奥様の頑張りは旦那様をはじめ皆に伝わっておりますよ。ロバート様は照れ屋なので、奥様が積極的になれば戸惑うかもしれませんが、街で夫婦が歩く時に腕を組むくらい普通です。やってみて下さい。そうすれば旦那様はお喜びになります」
「……本当? 嫌がられたりしない?」
「今回の視察は、旦那様からのご提案です。旦那様は奥様と仲良くなりたいのです」
「本当なら嬉しいわ。可愛くしてくれてありがとう。みんな」
視察に行く事が決まって1週間。エイダをはじめとする侍女達が毎日全身を磨いてくれた。おかげでいつもより肌の調子がいいし、全身も少し締まってきたからコルセット無しでワンピースがピッタリ入る。
「美しいです。頑張って下さい奥様」
「旦那様は女性慣れしておられないだけで、いつも奥様の事を想っておられます。ご安心下さい」
「そうです。今日だって庭師のポールに新しい薔薇を仕入れるように命じておりましたもの。奥様が薔薇をお好きだからとおっしゃっていました。旦那様は、奥様が大好きなんです」
みんなが励ましてくれて、なんだか勇気が湧いてきた。その間にエイダがいつも読んでいる本を棚の一番上に片付けてしまった。
「良いですか。今日はあの本の教えを忘れて下さい。恋人同士のように腕を組み、奥様の気持ちを旦那様にお伝えするのです」
「そんな、はしたないわ」
頼りにしている本を取ろうとすると、エイダが止めた。
「あの本は奥様には不要です。本を参考にゆっくり距離を詰める時間はありません。辺境は揉め事が多いのです。旦那様がいつ戦場に行かれるか、分かりません」
「……あ」
そうだ。結婚式の日だって、終わったらすぐ使いが来て……。今の幸せを享受していたから忘れかけていた。ここは辺境。いつ何が起きるか分からない。
「不安にさせて申し訳ありませんが、奥様には今の時間を大切にして頂きたいのです。旦那様は奥手なので、奥様から積極的に動かれた方がよろしいかと」
「分かったわ。ありがとうエイダ。みんなも、ありがとう。わたくし、頑張るわ」
「奥様を蔑ろにしたら、いくら旦那様でも許しません。まぁ、そんな事にはならないと思いますけど」
「ええ、大丈夫です。ご安心下さい。我々は奥様の味方です」
「こんなに可愛い奥様に迫られたら、旦那様はイチコロです! 頑張って下さい奥様!」
「そうですよ! 奥様は凄いです。旦那様がお留守の時はお仕事をなさっていたし、こんなに可愛いし、美しいし、優しいですし。旦那様もお優しい良い人なんです。お似合いのご夫婦ですよ」
みんな優しい。こんなに褒めて貰えるなんて、ここに嫁いで来て良かったわ。
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