49 / 57
辺境伯夫人は頑張ります
12【フレッド視点】
しおりを挟む
「確認なんだが、シャーリーはオレが辺境伯でなくても妻でいてくれるか?」
「そんなの、当然じゃない。辺境伯だからフレッドを好きになった訳ではないわ!」
迷いなく、真っ直ぐオレを見つめながら言い切るシャーリー。
「シャーリー……そうか……そうだよな。シャーリーはオレと一緒なら岩穴に住んでも構わないんだったね」
「なっ! なんで知ってるのよ!!!」
可愛い妻の頬が真っ赤に染まる。
ああ、なんて可憐なんだろう。こんな表情を見せてくれるのはオレだけにして欲しい。いっそ、どこかに閉じ込めてしまいたい。
「エリザベス様が教えてくれたんだよ。シャーリーと結婚してすぐに攫われた事があっただろう? その時教えて貰った」
「もう! エリザベスってば! 確かに言ったけど、フレッドに知られるとは思わなかったわ」
「……今も、その気持ちは変わらない?」
辺境伯夫人になったシャーリーは、今までのように予算の計算をする必要もなく、大量のアクセサリーやドレスを所持している。オレが贈った物が大半だが、シャーリー自身も事業を行っており制作した試作品などを夜会に着て行く事も多い。
本当は、全てオレが贈る物でシャーリーを飾り立てたい。だけど、あまり束縛すると嫌われるとクリストファーが脅すから、我慢している。
結婚前と違い、たくさんのものを手に入れたシャーリー。それは、多くの人にとって手放し難いものの筈だ。オレが辺境伯だから、シャーリーがその妻だから……現在の地位を手放せば全て失ってしまうものだ。
今のシャーリーは、オレと岩穴に住んでも構わないと思うのだろうか。もし、嫌だと言うなら……ドロリとした独占欲が身体中を駆け巡る。あちこちからシャーリーを奪おうとする男達。
イライラしたオレは、自分勝手な気持ちに囚われていた。
いっそ、シャーリーを表に出さなければ良いじゃないか。オレの事を疑わない純粋な妻。心配だからと言えば素直に屋敷に篭ってくれるだろう。
そのまま、ずっと屋敷から出さなければ良い……。
そんな自分勝手な気持ちは、シャーリーが満面の笑みを浮かべてオレに抱きついて来たから、消え去った。
「当たり前でしょ! フレッドが辺境伯でなくても、平民になっても、罪人になったってついて行くわ! フレッドが平民になったらゼロから2人で商会をやるのも良いわね! フレッドが罪人になるなんて、絶対何かの陰謀なんだから拘束されたら助け出す方法を考えるし、それが無理で処刑される事になるならわたくしも一緒に処刑されるわ」
事もなげに言う妻にゾッとした。
シャーリーが……オレのせいで……死ぬ?
そんな未来、絶対に受け入れらない。
今までの物騒な考えを捨てる。
シャーリーに嫌われるかもしれないと渡せなかった物。今こそ渡しておくべきではないか?
大丈夫、シャーリーはオレを嫌ったりしない。
「シャーリー、今まで渡せなかった物があるんだ。嫌じゃなければ受け取ってくれないか? もちろん、嫌なら受け取らなくて良い」
「フレッドからの贈り物は、全て宝物よ!」
「……そう言ってくれるのは嬉しいんだが、クリストファーにはやめておけと言われた物なんだ……束縛しすぎだと叱られた」
「そうなの? 大丈夫よ! 嫌なら嫌って言うわ。フレッドは、わたくしが嫌だって言った事はしないもの。だから、安心して教えて? こんな事言ってくるって事は、必要だと思っているんでしょう?」
妻の信頼が重く、心地良い。
こんなシャーリーだから、オレは自信を持って歩いていける。愛しい妻を抱き締めて、溜まりに溜まった秘密の贈り物を打ち明けた。
「そんなの、当然じゃない。辺境伯だからフレッドを好きになった訳ではないわ!」
迷いなく、真っ直ぐオレを見つめながら言い切るシャーリー。
「シャーリー……そうか……そうだよな。シャーリーはオレと一緒なら岩穴に住んでも構わないんだったね」
「なっ! なんで知ってるのよ!!!」
可愛い妻の頬が真っ赤に染まる。
ああ、なんて可憐なんだろう。こんな表情を見せてくれるのはオレだけにして欲しい。いっそ、どこかに閉じ込めてしまいたい。
「エリザベス様が教えてくれたんだよ。シャーリーと結婚してすぐに攫われた事があっただろう? その時教えて貰った」
「もう! エリザベスってば! 確かに言ったけど、フレッドに知られるとは思わなかったわ」
「……今も、その気持ちは変わらない?」
辺境伯夫人になったシャーリーは、今までのように予算の計算をする必要もなく、大量のアクセサリーやドレスを所持している。オレが贈った物が大半だが、シャーリー自身も事業を行っており制作した試作品などを夜会に着て行く事も多い。
本当は、全てオレが贈る物でシャーリーを飾り立てたい。だけど、あまり束縛すると嫌われるとクリストファーが脅すから、我慢している。
結婚前と違い、たくさんのものを手に入れたシャーリー。それは、多くの人にとって手放し難いものの筈だ。オレが辺境伯だから、シャーリーがその妻だから……現在の地位を手放せば全て失ってしまうものだ。
今のシャーリーは、オレと岩穴に住んでも構わないと思うのだろうか。もし、嫌だと言うなら……ドロリとした独占欲が身体中を駆け巡る。あちこちからシャーリーを奪おうとする男達。
イライラしたオレは、自分勝手な気持ちに囚われていた。
いっそ、シャーリーを表に出さなければ良いじゃないか。オレの事を疑わない純粋な妻。心配だからと言えば素直に屋敷に篭ってくれるだろう。
そのまま、ずっと屋敷から出さなければ良い……。
そんな自分勝手な気持ちは、シャーリーが満面の笑みを浮かべてオレに抱きついて来たから、消え去った。
「当たり前でしょ! フレッドが辺境伯でなくても、平民になっても、罪人になったってついて行くわ! フレッドが平民になったらゼロから2人で商会をやるのも良いわね! フレッドが罪人になるなんて、絶対何かの陰謀なんだから拘束されたら助け出す方法を考えるし、それが無理で処刑される事になるならわたくしも一緒に処刑されるわ」
事もなげに言う妻にゾッとした。
シャーリーが……オレのせいで……死ぬ?
そんな未来、絶対に受け入れらない。
今までの物騒な考えを捨てる。
シャーリーに嫌われるかもしれないと渡せなかった物。今こそ渡しておくべきではないか?
大丈夫、シャーリーはオレを嫌ったりしない。
「シャーリー、今まで渡せなかった物があるんだ。嫌じゃなければ受け取ってくれないか? もちろん、嫌なら受け取らなくて良い」
「フレッドからの贈り物は、全て宝物よ!」
「……そう言ってくれるのは嬉しいんだが、クリストファーにはやめておけと言われた物なんだ……束縛しすぎだと叱られた」
「そうなの? 大丈夫よ! 嫌なら嫌って言うわ。フレッドは、わたくしが嫌だって言った事はしないもの。だから、安心して教えて? こんな事言ってくるって事は、必要だと思っているんでしょう?」
妻の信頼が重く、心地良い。
こんなシャーリーだから、オレは自信を持って歩いていける。愛しい妻を抱き締めて、溜まりに溜まった秘密の贈り物を打ち明けた。
9
お気に入りに追加
1,899
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない
春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。
願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。
そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。
※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる