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辺境伯夫人は頑張ります
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茶会を終えて、わたくし達はゲートで帰るハンス様を見送った。国同士の移動は、一旦中継地点になる場所に転移する。今回は、平和条約を結んだ後の交流だったのですんなり許可が下りたが、場合によっては拒否されて転移出来ない事もある。
中継地点では、公平を保つ為に常に録画されているので王妃様やエリザベスと一緒に中継地点まで行ってハンス様を見送った。
穏やかに別れを告げて、今後も平和に過ごしていく事を明言して貰う。ハンス様が国に帰られるのを見送って、わたくしもすぐに家を帰ろうと思ったんだけどエリザベスが少し2人で話したいと言うから時間を取った。エリザベスは、2人きりになった途端に笑いだした。
「シャーリー、最高だったわ! 見た? あの間抜けな顔!」
「もう! エリザベスったらさっきから笑い過ぎよ!」
「この部屋は魔法が効かないから、録画される心配はないわ!」
「相変わらず抜かりがないわね。それより、これで大丈夫なのよね? 本当に、平和になる?」
「しばらくはね。元々小競り合いが絶えなかったんだから、このまま仲良くしましょうねとはいかないわ。実際、シャーリーを狙ってたじゃない。でも見事に撃退したわね。さすがよ」
「フレッドがわたくしを大事にしてるのは有名なのにわたくしを狙ったりする?」
「だからよ。シャーリーはフレッド様の最大の弱点。シャーリーがハンス王子に靡けば良いと思ったんじゃないの? だからわざわざ、フレッド様が戻る前に見目麗しいと評判のハンス王子が訪れたのよ。辺境伯と今すぐ話したいなんて無茶を言ってね。そうすれば、フレッド様が不在の今はシャーリーが出てくるしかない」
「……だからあんなに馴れ馴れしかったのね。正直、距離が近過ぎて不快だったわ。ハンス様が人気がある理由が全く分からないわ」
「シャーリーは、フレッド様が好きなんだから邪魔しないで欲しいわよね。王家でも今後の対策を立てるわ。フレッド様にもご報告しておくわ。ごめんなさい、嫌な思いをさせて」
「気にしないで。これがわたくしの仕事だから。それより、ハンス王子の情報はある? 次にお会いする事があるなら、出来ればフレッドと一緒の時が良いわ。対策を立てておかないと、フレッドが不機嫌になってしまうもの」
「ハンス王子の情報はあまりないの。式典でたまにお見かけするくらいだったわ。元々、国同士の仲も良くなかったから情報が少なくて」
「お美しい容姿だし、きっと女性にモテるわよね」
「そうね。シャーリーが自分に靡くと信じきっていたもの。わたくしも以前口説かれたわ。聞こえないフリをして躱したけど。自分がモテると信じきってる所はあるわね」
「正直、ハンス様みたいな男性は苦手だわ。ケイリー様を思い出しちゃうもの」
「確かに似てるわね……。でも、あの人は今は塀の中よ」
「そうらしいわね。無事離婚が成立したって聞いたわ。まぁ、もうわたくしには関係ないけれど」
「そうね。シャーリー、今日は本当にお疲れ様。シャーリーのおかげで、うまくいったわ」
「わたくしは茶会をしていただけよ?」
「だけってよく言うわ。ハンス様はとても驚いていたわよ」
「なにか失礼な事をしたかしら?」
「逆よ! 完璧だったわ。影で辺境伯夫人とはこんなに賢いものなのかって呟いてたわよ」
「嘘?!」
「本当。ハンス様に付けていた密偵からの報告だし間違いないわ。あちらはシャーリーを舐めていたの。言葉通り平和を続けるつもりはない。シャーリーを足がかりに辺境をじわじわと潰すつもりだったのよ」
「わたくし、まだまだ甘いわね。喧嘩にならず、舐められないようにする事しか考えてなかったわ」
「それで良かったのよ。特に、フレッド様を侮辱されても怒らずに、でもはっきり不快感を示したでしょう? あれは、みんな褒めていたわ」
「……ああ、あれ? 内心腹は立っていたわ。けど、フレッドの積み上げてきたものをわたくしが壊す訳にいかないもの」
「素敵な夫婦ね。明日にはフレッド様が帰って来るんでしょう?」
「ええ、早く会いたいわ!」
「まだ色々不穏なところがあるから、面倒をかけるとは思うけど、しばらくは大丈夫だと思うからゆっくりしてね」
「ありがとう。ところで、基本的な事を聞いて申し訳ないんだけど、どうしてあちらは攻めて来たの?」
「どうやら、去年の不作が原因のようね」
「やっぱりそうなのね……、でも1年くらいならなんとかなるわよね? わざわざ侵略しようとする方がお金もかかるのに」
「うちの国は税金の使い道を公開するくらい透明性が高いけど、他国ではそんなことないのよ。備蓄が義務付けられてもいないし、報告によるとずいぶん痩せた兵だったそうだから、余裕がないのかもね」
「なるほどね……。だからうちの兵士の被害が少ないのね」
フレッドが帰って来たらすぐに伝えないと。
国が違えば、常識も変わる。今まで領地や国内の事ばかり勉強していたけど、もう少し他国の事を勉強した方が良いわね。
帰る前に、エリザベスに頼んで少し勉強させて貰いましょう。
中継地点では、公平を保つ為に常に録画されているので王妃様やエリザベスと一緒に中継地点まで行ってハンス様を見送った。
穏やかに別れを告げて、今後も平和に過ごしていく事を明言して貰う。ハンス様が国に帰られるのを見送って、わたくしもすぐに家を帰ろうと思ったんだけどエリザベスが少し2人で話したいと言うから時間を取った。エリザベスは、2人きりになった途端に笑いだした。
「シャーリー、最高だったわ! 見た? あの間抜けな顔!」
「もう! エリザベスったらさっきから笑い過ぎよ!」
「この部屋は魔法が効かないから、録画される心配はないわ!」
「相変わらず抜かりがないわね。それより、これで大丈夫なのよね? 本当に、平和になる?」
「しばらくはね。元々小競り合いが絶えなかったんだから、このまま仲良くしましょうねとはいかないわ。実際、シャーリーを狙ってたじゃない。でも見事に撃退したわね。さすがよ」
「フレッドがわたくしを大事にしてるのは有名なのにわたくしを狙ったりする?」
「だからよ。シャーリーはフレッド様の最大の弱点。シャーリーがハンス王子に靡けば良いと思ったんじゃないの? だからわざわざ、フレッド様が戻る前に見目麗しいと評判のハンス王子が訪れたのよ。辺境伯と今すぐ話したいなんて無茶を言ってね。そうすれば、フレッド様が不在の今はシャーリーが出てくるしかない」
「……だからあんなに馴れ馴れしかったのね。正直、距離が近過ぎて不快だったわ。ハンス様が人気がある理由が全く分からないわ」
「シャーリーは、フレッド様が好きなんだから邪魔しないで欲しいわよね。王家でも今後の対策を立てるわ。フレッド様にもご報告しておくわ。ごめんなさい、嫌な思いをさせて」
「気にしないで。これがわたくしの仕事だから。それより、ハンス王子の情報はある? 次にお会いする事があるなら、出来ればフレッドと一緒の時が良いわ。対策を立てておかないと、フレッドが不機嫌になってしまうもの」
「ハンス王子の情報はあまりないの。式典でたまにお見かけするくらいだったわ。元々、国同士の仲も良くなかったから情報が少なくて」
「お美しい容姿だし、きっと女性にモテるわよね」
「そうね。シャーリーが自分に靡くと信じきっていたもの。わたくしも以前口説かれたわ。聞こえないフリをして躱したけど。自分がモテると信じきってる所はあるわね」
「正直、ハンス様みたいな男性は苦手だわ。ケイリー様を思い出しちゃうもの」
「確かに似てるわね……。でも、あの人は今は塀の中よ」
「そうらしいわね。無事離婚が成立したって聞いたわ。まぁ、もうわたくしには関係ないけれど」
「そうね。シャーリー、今日は本当にお疲れ様。シャーリーのおかげで、うまくいったわ」
「わたくしは茶会をしていただけよ?」
「だけってよく言うわ。ハンス様はとても驚いていたわよ」
「なにか失礼な事をしたかしら?」
「逆よ! 完璧だったわ。影で辺境伯夫人とはこんなに賢いものなのかって呟いてたわよ」
「嘘?!」
「本当。ハンス様に付けていた密偵からの報告だし間違いないわ。あちらはシャーリーを舐めていたの。言葉通り平和を続けるつもりはない。シャーリーを足がかりに辺境をじわじわと潰すつもりだったのよ」
「わたくし、まだまだ甘いわね。喧嘩にならず、舐められないようにする事しか考えてなかったわ」
「それで良かったのよ。特に、フレッド様を侮辱されても怒らずに、でもはっきり不快感を示したでしょう? あれは、みんな褒めていたわ」
「……ああ、あれ? 内心腹は立っていたわ。けど、フレッドの積み上げてきたものをわたくしが壊す訳にいかないもの」
「素敵な夫婦ね。明日にはフレッド様が帰って来るんでしょう?」
「ええ、早く会いたいわ!」
「まだ色々不穏なところがあるから、面倒をかけるとは思うけど、しばらくは大丈夫だと思うからゆっくりしてね」
「ありがとう。ところで、基本的な事を聞いて申し訳ないんだけど、どうしてあちらは攻めて来たの?」
「どうやら、去年の不作が原因のようね」
「やっぱりそうなのね……、でも1年くらいならなんとかなるわよね? わざわざ侵略しようとする方がお金もかかるのに」
「うちの国は税金の使い道を公開するくらい透明性が高いけど、他国ではそんなことないのよ。備蓄が義務付けられてもいないし、報告によるとずいぶん痩せた兵だったそうだから、余裕がないのかもね」
「なるほどね……。だからうちの兵士の被害が少ないのね」
フレッドが帰って来たらすぐに伝えないと。
国が違えば、常識も変わる。今まで領地や国内の事ばかり勉強していたけど、もう少し他国の事を勉強した方が良いわね。
帰る前に、エリザベスに頼んで少し勉強させて貰いましょう。
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