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第二十四話【フレッド視点】
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「シャーリーは、第三地区の商店街の近くに居ますわ! 高い建物です!」
エリザベス様からの通信で、場所はほぼ特定された。あそこにある高い建物は、マリエール男爵の経営する菓子店だった筈だ。
あまり騒ぐとシャーリーの名誉も傷つくから、捜査権のある騎士団に協力を頼み、オレも騎士に扮している。今会話をしている団長の服を借りた。
「よし、場所がほぼ特定されたなら踏み込んで構わない。マリエール男爵か……タチの悪い貴族に目をつけられたな」
「そんなに評判が悪いのか?」
「ああ、しょっちゅう妻が変わるし、離縁された妻は皆様子がおかしくなっていてな。マークしていた貴族のひとりだ。金のない貴族を狙って結納金だと言って金で妻を買っているようだとな。妻だと言われればなかなか手を出せなかったが、他人の妻を誘拐となれば、合法的に逮捕できる」
「その場でやるのはダメか?」
「ダメだ。大事な奥方に血を見せるつもりか?」
「……そうか、そうだな」
「それにしても、ケイリーのやつ、うまく誤魔化したな」
「……ああ、自分は知らないとさ。姉の相談にのっただけで、決めたのは姉だと」
「とんでもない男だな。姉もだいぶおかしいがな」
「姉も酷いもんだぞ。オレが贈ったドレスを、我が物顔で着ていた。田舎貴族でも金だけはあるのね。だとよ」
「わぁお、天下の辺境伯様に言うセリフじゃねぇなぁ。さ、着いたぞ。まず俺が話すからな」
団長が、中に踏み込む手続きを始めた。使用人は抵抗していたが、主人に誘拐の容疑がかかっている。誘拐したのは辺境伯の妻だと言えば震え上がって大人しくなった。
「シャーリー! シャーリー!」
怯えた使用人に案内させ、部屋に踏み込むと下品な男がシャーリーに近づこうとしていた。
「フレッド?! なんで騎士服着てるの?!」
「シャーリー、無事か?!」
「今のところはね。ギリギリセーフってとこかしら」
「貴様! 何をしている! 彼女は私の妻だ!」
「オレの妻だよ。正式な婚姻も彼女の両親と済ませてある。お前はただ金を置いて誘拐してきただけただろ? オレは辺境伯のフレッド・エル・ドゥイエだ。オレの妻を誘拐、監禁したんだ。タダで済むと思うなよ?」
「なっ……婚姻はしていないと……」
「そう言ったのは姉でしょう? わたくしはきちんと主張致しましたわ。昨日婚姻して、本日お迎えがくると。貴方は都合の良い言葉だけを聞いて、わたくしに薬を嗅がせて誘拐しただけですわ」
「証拠! 証拠はあるのか! 申し訳ありませんフレッド伯爵! 私は知らなかったんです。ただ、金のない貧乏伯爵家を、救うつもりだっただけなのです!」
「救うつもりで、こんな部屋に閉じ込めて足に鎖を付けるのか? すぐオレの妻を解放しろ」
「はい! ただ今!」
すぐに鎖が外される。念のためオレはすぐ側で睨んでいたので、シャーリーに何もされなかった。
「シャーリー、無事か? すまなかった……」
「フレッドが、助けてくれると思ってたから大丈夫よ」
「奥方様! 申し訳ありません! 私は本当に知らなかったんです」
ちっ……言い逃れする気か。しかし明確な証拠がないと逮捕も出来ん。団長も、首を振っている。
仕方ない、ここでやるか……。そう思っていたら、シャーリーが愛らしい声で笑った。
「嘘つき。コレが証拠よ」
なんと、シャーリーは記録玉を持っていたのか?!
記録玉の映像は、シャーリーの姉が荷物を下品に漁っているところから始まっており、マリエール男爵のいる前できちんと婚姻した事を伝えている。
「証拠はあるな。マリエール男爵を誘拐の容疑で現行犯逮捕する」
「姉とのやりとりはいつも記録するの。動揺して途中からになってしまったけど、きちんと証拠が残っていて良かったわ。わたくし、従順でも弱くもないの。残念だったわね」
オレの妻は、輝くほどに美しく、強い女性のようだ。
エリザベス様からの通信で、場所はほぼ特定された。あそこにある高い建物は、マリエール男爵の経営する菓子店だった筈だ。
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「よし、場所がほぼ特定されたなら踏み込んで構わない。マリエール男爵か……タチの悪い貴族に目をつけられたな」
「そんなに評判が悪いのか?」
「ああ、しょっちゅう妻が変わるし、離縁された妻は皆様子がおかしくなっていてな。マークしていた貴族のひとりだ。金のない貴族を狙って結納金だと言って金で妻を買っているようだとな。妻だと言われればなかなか手を出せなかったが、他人の妻を誘拐となれば、合法的に逮捕できる」
「その場でやるのはダメか?」
「ダメだ。大事な奥方に血を見せるつもりか?」
「……そうか、そうだな」
「それにしても、ケイリーのやつ、うまく誤魔化したな」
「……ああ、自分は知らないとさ。姉の相談にのっただけで、決めたのは姉だと」
「とんでもない男だな。姉もだいぶおかしいがな」
「姉も酷いもんだぞ。オレが贈ったドレスを、我が物顔で着ていた。田舎貴族でも金だけはあるのね。だとよ」
「わぁお、天下の辺境伯様に言うセリフじゃねぇなぁ。さ、着いたぞ。まず俺が話すからな」
団長が、中に踏み込む手続きを始めた。使用人は抵抗していたが、主人に誘拐の容疑がかかっている。誘拐したのは辺境伯の妻だと言えば震え上がって大人しくなった。
「シャーリー! シャーリー!」
怯えた使用人に案内させ、部屋に踏み込むと下品な男がシャーリーに近づこうとしていた。
「フレッド?! なんで騎士服着てるの?!」
「シャーリー、無事か?!」
「今のところはね。ギリギリセーフってとこかしら」
「貴様! 何をしている! 彼女は私の妻だ!」
「オレの妻だよ。正式な婚姻も彼女の両親と済ませてある。お前はただ金を置いて誘拐してきただけただろ? オレは辺境伯のフレッド・エル・ドゥイエだ。オレの妻を誘拐、監禁したんだ。タダで済むと思うなよ?」
「なっ……婚姻はしていないと……」
「そう言ったのは姉でしょう? わたくしはきちんと主張致しましたわ。昨日婚姻して、本日お迎えがくると。貴方は都合の良い言葉だけを聞いて、わたくしに薬を嗅がせて誘拐しただけですわ」
「証拠! 証拠はあるのか! 申し訳ありませんフレッド伯爵! 私は知らなかったんです。ただ、金のない貧乏伯爵家を、救うつもりだっただけなのです!」
「救うつもりで、こんな部屋に閉じ込めて足に鎖を付けるのか? すぐオレの妻を解放しろ」
「はい! ただ今!」
すぐに鎖が外される。念のためオレはすぐ側で睨んでいたので、シャーリーに何もされなかった。
「シャーリー、無事か? すまなかった……」
「フレッドが、助けてくれると思ってたから大丈夫よ」
「奥方様! 申し訳ありません! 私は本当に知らなかったんです」
ちっ……言い逃れする気か。しかし明確な証拠がないと逮捕も出来ん。団長も、首を振っている。
仕方ない、ここでやるか……。そう思っていたら、シャーリーが愛らしい声で笑った。
「嘘つき。コレが証拠よ」
なんと、シャーリーは記録玉を持っていたのか?!
記録玉の映像は、シャーリーの姉が荷物を下品に漁っているところから始まっており、マリエール男爵のいる前できちんと婚姻した事を伝えている。
「証拠はあるな。マリエール男爵を誘拐の容疑で現行犯逮捕する」
「姉とのやりとりはいつも記録するの。動揺して途中からになってしまったけど、きちんと証拠が残っていて良かったわ。わたくし、従順でも弱くもないの。残念だったわね」
オレの妻は、輝くほどに美しく、強い女性のようだ。
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