上 下
19 / 57

第十九話

しおりを挟む
「ケイリー……シャーリーが……」

「ああ、シャーリー綺麗にしているね。もうお迎えが来たからね」

ケイリー様? 姉を送りに来たのかしら。お迎えってフレッドが来たの?

……いや、違う。そもそも旅行に出てた2人はわたくしの婚姻は知らない筈。普通の家なら旅行中の姉にもすぐ知らせるんだろうけど、うちに限ってはそんな事する訳ないわ。

ケイリー様のお顔も、なんだか悪どく見える。

「ケイリー様? お迎えとはどういうことですの?」

見知らぬおじさんがズカズカと寄ってきた。

「おお! 何と美しい! この間夜会でお会いして、なんとしても結婚したくてね! さ、これが結納金だ! さあ、参ろうか」

「どなたですか? わたくし既に結婚しておりますわ」

「シャーリー、何を言ってるの?! この子は独身ですわ!」

「昨日婚姻したの! お父様もお母様もご存知よ! 今からお迎えが来るのよ! 放っておいてちょうだい! お姉様なんて、大嫌いよ!!!」

「なっ……話が違うではないか!?」

ケイリー様が、笑顔で姉とわたくしに話しかける。ケイリー様の笑顔が、不気味過ぎるわ。

「アイリーン、シャーリーの婚姻はもう決定事項なのかい?」

「し、知らないわ……」

姉が怯えた様子で答えるけど、興奮したわたくしは大声で否定する。

「決定事項よ! だいたい、いきなり本人にも親にも話を通さず結納金だけ持って来るなんてロクな男じゃないわ! ケイリー様の仕込みですの?! さすが愛人が5人もいらっしゃる方は突飛な事を考えます事!」

「何を言っているんだい? 愛人は確かにいるが事情があるんだよ。5人なんて、そんな事ある訳ないじゃないか。アイリーンはもちろん僕を信じてくれるよね? ねぇ、アイリーン、シャーリーは結婚しているの?」

「わたくしは、ケイリーを信じるわ。シャーリーは、わたくしに嫉妬して結婚したなんて言ってるに過ぎないわ」

「そうか、シャーリーは仕方ない子だね。問題ありませんよ。お連れして下さい。アイリーン、少し向こうで話があるんだ。行こうか」

「え、ええ……。シャーリー、幸せにね」

「お姉様! 待って!」

嘘でしょ?! こんな知らないおじさんと2人にしないで! 使用人も誰もいないし、とにかく逃げないと!

だけど、姉はそのままケイリー様と行ってしまった。

「ふふっ……さあ、参りましょうか」

参ってたまるか! とにかく逃げるわ。もうすぐフレッドが来るはずだもの!

必死で逃げようとしたら、大きな影が見えた。フレッド?!

「おお! もうそいつは私のものだ。薬でも嗅がせて連れて行け」

違った。まずい……なに……こ……れ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いつの間にかの王太子妃候補

しろねこ。
恋愛
婚約者のいる王太子に恋をしてしまった。 遠くから見つめるだけ――それだけで良かったのに。 王太子の従者から渡されたのは、彼とのやり取りを行うための通信石。 「エリック様があなたとの意見交換をしたいそうです。誤解なさらずに、これは成績上位者だけと渡されるものです。ですがこの事は内密に……」 話す内容は他国の情勢や文化についてなど勉強についてだ。 話せるだけで十分幸せだった。 それなのに、いつの間にか王太子妃候補に上がってる。 あれ? わたくしが王太子妃候補? 婚約者は? こちらで書かれているキャラは他作品でも出ています(*´ω`*) アナザーワールド的に見てもらえれば嬉しいです。 短編です、ハピエンです(強調) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます。

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

伯爵令嬢の恋

アズやっこ
恋愛
落ち目の伯爵家の令嬢、それが私。 お兄様が伯爵家を継ぎ、私をどこかへ嫁がせようとお父様は必死になってる。 こんな落ち目伯爵家の令嬢を欲しがる家がどこにあるのよ! お父様が持ってくる縁談は問題ありの人ばかり…。だから今迄婚約者もいないのよ?分かってる? 私は私で探すから他っておいて!

愛しているのは王女でなくて幼馴染

岡暁舟
恋愛
下級貴族出身のロビンソンは国境の治安維持・警備を仕事としていた。そんなロビンソンの幼馴染であるメリーはロビンソンに淡い恋心を抱いていた。ある日、視察に訪れていた王女アンナが盗賊に襲われる事件が発生、駆け付けたロビンソンによって事件はすぐに解決した。アンナは命を救ってくれたロビンソンを婚約者と宣言して…メリーは突如として行方不明になってしまい…。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

幼馴染に奪われそうな王子と公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
「王子様、本当に愛しているのは誰ですか???」 「私が愛しているのは君だけだ……」 「そんなウソ……これ以上は通用しませんよ???」 背後には幼馴染……どうして???

処理中です...