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第十八話

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今日はいよいよフレッドが来てくれる。荷物はフレッドがくれたものだけ、着ているドレスもフレッドがくれたもの。

荷物に、この家で貰ったものは何一つない。全て置いていくわ。両親は、もうすぐ姉が帰って来るから姉の好きなケーキを買いに行くと出かけている。勝手に出て行け、なんならフレッドがくれたドレスも置いて行けと言い出したけど、紹介頂いた公爵家を敵に回しますの? って言ったら黙ったわ。

本当に、わたくしのことはどうでもいいのね。まぁいいわ。もうここはわたくしの家ではないもの。

玄関先でひとりで待っていたら、馬車の音がした。もうすぐ会えるわ。本当に嬉しい。

「ただいま! シャーリー! 貴方に良い話を持ってきたわ!」

……お姉様? 旅行に行っていたんじゃないの? まずい! この満面の笑みのお姉様はロクな事をしないわ!!!

「お姉様? 旅行に行かれていたんじゃ……」

「貴方の為に早く帰ってきたの! シャーリー、貴方に素敵な縁談を持ってきたわ!」

「待って! わたくしもうフレッド様と……」

姉が急に目を吊り上げた。

「シャーリー! 何よその上等なドレスは!」

「これは、フレッド様が贈って下さったわ」

「フレッド? ああ、あの田舎貴族ね。ふん、お金はあるのかしら。そこにある荷物はぜんぶそうなの?」

「お姉様! 勝手に開けないで!!!」

「黙りなさい! わたくしが全部貰うわ!」

「やめて! 今までお姉様に何を取られても我慢してきたけど、これだけはダメ! フレッドがわたくしに贈って下さったものは、ひとつも渡さないわ!!!」

「シャーリー、貴方、わたくしに逆らうの?」

「もうわたくしはこの家の者ではないわ! お姉様の言う事を聞く必要もないし、お母様に、お姉様優先よと言われて蔑ろにされることもない! お父様からわたくしだけ予算を減らされることもない! 旅行に置いて行ってご飯すら用意されてないなんて事もないわ! わたくしはこの家を出るの! ここにある荷物は全てフレッドがくれたものよ。我が家の予算で買ったものは全て置いて行くわ! お母様もそう言ってたしね。全部、いらないの。物だけじゃない。お姉様も、お父様も、お母様もね。勝手に3人で仲良く暮らせば良いでしょ! 今までみたいにね!」

「シャーリー……」

興奮していたわたくしは、お姉様の他に誰か居たことに気がつかなかったわ。

「アイリーン、何を騒いでるんだい?」
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