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第十二話

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「あの! わたくし何か失礼をしてしまいましたか?」

出会ってすぐ嫌われるなんて嫌よ!

「なにも失礼な事はないよシャーリー。私の事もフレッドと呼んでくれ」

呼び捨てしてもらえた上に、呼び捨てを許してもらえた?! 最高だわ! フレッドの声は低くて素敵だから、その声を聞くだけでぼうっとしてしまうわ。

「フレッド様、シャーリー様は素敵な方でしょう?」

「ああ、私には勿体ない程に可憐なお嬢さんだ」

可憐、可憐っておっしゃいました?! わたくし生まれてこのかた可憐なんて言われた事ないわよ! それをこんな理想の殿方に言われるなんて! 嬉しいわ! 最高だわ! えっと、どうやって答えれば良いの。この気持ちをそのまま言葉にしたら引かれるわよね。えっと、えっと……

「……その、光栄ですわ」

ああ、もっと気の利いた事を言わないと! 
エリザベス! ニヤニヤしてる場合ではないわ! なんとかこの場を収めてちょうだい! 必死でエリザベスに目で合図を送る。

何かもっと気の利いた事を言わなきゃと考えていたら先にフレッドが口を開いた。

「やはり私のようなおじさんではシャーリーと釣り合わないのではないか?」

そんな! わたくしでは大人の魅力が足りないの?! フレッドは年上よね?! わたくしみたいな、お子ちゃまはお呼びではないのかしら? 確かにわたくし背も低いし、痩せてるし、胸はないし……。だけど、それでもフレッドが好きなのに! 

そうか、わたくしフレッドが好きなのね。これが一目惚れって言うのかしら? 頭の中はフレッドでいっぱいなのに、フレッドに拒否されるなんて悲しすぎるわ。

「……そんな……わたくしではいけませんか……?」

せっかく素敵な方に会えたのに。嫌われてしまったかしら。思わず目に涙が浮かぶわ。でもダメよ! ちゃんとしないと! でも、悲しいわ……。

「フレッド様! ちゃんと誤解を解いてくださいませ! シャーリーは、明らかにフレッド様に好意を持っておりますわ!」

エリザベス?! ここで決定的に振られたら立ち直れないわ。

あら? フレッド様のお顔が赤いわ。赤い顔も素敵ね。ああ、このまま時間が止まれば良いのに。振られたくないわ。

……その時何故か、フレッド様がわたくしの手を握って優しく微笑まれた。

「誤解させてしまったようで申し訳ない。シャーリーは素敵な女性だと思う。私も、シャーリーに好意を持っている。今日は、見合いなのだから、ゆっくり話をしよう」

手にキスしながら優しく微笑んで下さったわ。手に、キス。ど、どうしましょう?! な、なにか返事をしないと!!

「はい……嬉しいですわ。どうぞよろしくお願いします。フレッド」
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