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第十一話

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「ああ、そういえばエリザベスが会いたがっていてね。ご両親のお相手は私がするから、少しだけエリザベスと会ってきて頂けないかな?」

「かしこまりました」

両親はすっかりクリストファー様に骨抜きにされている。クリストファー様、お話上手だしイケメンだものね。まぁ、わたくしはもう少し逞しい方が好きだけど。お母様なんて、ポーッとしちゃってるわ。本当に、ここに姉が居なくて良かったと思うわ。

「こちらです、エリザベス様方がお待ちです」

……ん? 複数人いるって事?

「エリザベス、来たわよ……」

「シャーリー! いらっしゃい! こちらはね……」

誰?! エリザベスの側に、背が高くて、逞しくて、髭! 髭まで生やした素敵な殿方が居るわ!!!

実はわたくしは、逞しい殿方が好きなのだ。だから夜会は壁の花で満足しているのも、警備をしている騎士様が拝めるからなのよね。

こちらの方は騎士団長様より逞しいわ。しかも、わたくし男性の整えられた髭も大好きなの!

背も高くて、完璧にわたくしの理想のタイプだわ。

目がハートになってるわたくしに気がついたのか、エリザベスが笑った。

「ふふっ、だから言ったでしょ」

エリザベス! こちらの理想の殿方はどなた?! 完全に惚れてしまいそうだわ。いけないわ、わたくしは、今からお見合いをする身なのに。

「こちらは、辺境伯のフレッド・エル・ドゥイエ様よ。貴方のお見合い相手」

……嘘でしょ?! こんなに素敵な殿方がわたくしのお見合い相手?!

「フレッド・エル・ドゥイエと申します。本日はよろしくお願いします」

ああ、なんて素敵なお声!

「シャーリー! シャーリー!」

気がつくとエリザベスに呼ばれていたわ。いけない、ぼんやりしていた。あまりに素敵だから、見惚れていたわ。

「失礼致しましたわ。シャーリー・デル・グラールと申します。フレッド様、お会いできて光栄ですわ。どうぞシャーリーとお呼び下さいませ」

先生の教え、その8。恋は待っていても来ない。はしたなくならない程度に積極的にいけ。

呼び捨てを乞うのは、仲良くなりたいとの遠回しなアピール。どうか、伝わって!

「なっ……いきなり呼び捨てですか……」

あ、あれ?! 先生! フレッド様が真っ赤なお顔でこちらを見つめておられますけれど。え、呼び捨てをお願いするのは最初のアプローチですわよね! 先生! わたくし、そんなにはしたない事をしてしまったかしら?
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