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34.結婚式
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ジルとクリステルがお互いの気持ちを確かめ合ってから1ヶ月が経った。
冒険者としての依頼をこなしながら、隣国まで移動してきた2人は、今日ひっそりと結婚式を挙げる。
「クリス、綺麗だぜ」
「ありがと、ジルも素敵よ」
参列者の居ない結婚式に、美しい衣装を用意するものは珍しい。気がつくと美しい2人に惹かれるように街の住民が集まってきた。
「おねーちゃん、きれい! おひめさまみたい!」
「ホントに綺麗だねぇ。誰も参列者が居ないなんて勿体ない」
「オレは、冒険者ですからね。あちこち動き回ってるんで、呼べる家族は居ないんです」
「私は、父は居るけど……遠方で来れないの」
「そうなのかい。残念だねぇ。きっとお父さんも喜んでるよ。幸せにおなり。ほら、これうちの店の売れ残りなんだけどね、良かったら持っていきな」
「わぁ! 素敵なクッキー!」
クッキーの上に、砂糖で華やかな模様が描かれている。クリステルが貰ったのは、美しい薔薇の絵柄が描いてあった。
「注文してくれりゃあ、色んな形や絵柄を描くよ。また気が向いたら買いに来ておくれ。おめでとさん」
「ありがとう!」
「んじゃあ、せっかくだし俺もこれやるよ。色気はねぇが、確実に使うだろ? 旦那、奥さん大事にしろよ」
男はそう言って、干し肉を取り出した。冒険に必須の非常食で、男は何度か購入に来ていたジルとクリステルを覚えていた。
「ありがとう。それと、言われなくても妻は大事にしてる」
「だろうな。こーんな綺麗な奥さんじゃ目が離せねえやな」
「ちげぇねぇ。しっかし旦那も良い男だよな」
「本当に。まるでお貴族様みたいだよ」
「オレ達は単なる冒険者ですよ」
「そうだよねぇ、貴族様がこんなところで結婚式なんてありえないもの」
「いやぁ! それにしても良いもん見たぜ!」
「本当にね。おめでとう!」
見知らぬ人からもたくさんの祝福を受けて、ジルとクリステルは本当の夫婦になった。
「ふう……予想と違って賑やかな式になったな。ドレスを持ち歩けないのが勿体ないが……」
ドレスは、ジルが街の衣装店で借りてきたものだ。クリステルは衣装など要らない。持ち歩けないからと言うので、どうしてもクリステルのドレス姿が見たかったジルが借りる手配をした。
ドレスを見たクリステルは驚きつつも喜んだ。そして、ジルにも正装をするように頼んだ。クリステルの頼みを断らないジルは、自分の衣装も用意した。
「仕方ないわ。私達は宿屋暮らしだもの」
「いっそ家を借りるか?」
「定住しない方が良いんでしょ?」
「……そうだな……、結局アーテルさんと連絡はつかない。いつでも移動できるようにはしておいた方が良い」
「冒険にドレスは要らないわ! 着られただけでも嬉しい!」
「せっかくだからな。オレも見たかったし」
「ジルはとってもかっこよかったわ! すっごく似合ってた!」
そう言ってクリステルが褒めちぎるから、ジルは真っ赤な顔で俯いてしまった。そんな反応をするジルが可愛くなったクリステルは、更にジルを褒めちぎる。
恥ずかしさが頂点に達したジルがクリステルを押し倒すまでクリステルの褒め言葉は続いた。
冒険者としての依頼をこなしながら、隣国まで移動してきた2人は、今日ひっそりと結婚式を挙げる。
「クリス、綺麗だぜ」
「ありがと、ジルも素敵よ」
参列者の居ない結婚式に、美しい衣装を用意するものは珍しい。気がつくと美しい2人に惹かれるように街の住民が集まってきた。
「おねーちゃん、きれい! おひめさまみたい!」
「ホントに綺麗だねぇ。誰も参列者が居ないなんて勿体ない」
「オレは、冒険者ですからね。あちこち動き回ってるんで、呼べる家族は居ないんです」
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「わぁ! 素敵なクッキー!」
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「注文してくれりゃあ、色んな形や絵柄を描くよ。また気が向いたら買いに来ておくれ。おめでとさん」
「ありがとう!」
「んじゃあ、せっかくだし俺もこれやるよ。色気はねぇが、確実に使うだろ? 旦那、奥さん大事にしろよ」
男はそう言って、干し肉を取り出した。冒険に必須の非常食で、男は何度か購入に来ていたジルとクリステルを覚えていた。
「ありがとう。それと、言われなくても妻は大事にしてる」
「だろうな。こーんな綺麗な奥さんじゃ目が離せねえやな」
「ちげぇねぇ。しっかし旦那も良い男だよな」
「本当に。まるでお貴族様みたいだよ」
「オレ達は単なる冒険者ですよ」
「そうだよねぇ、貴族様がこんなところで結婚式なんてありえないもの」
「いやぁ! それにしても良いもん見たぜ!」
「本当にね。おめでとう!」
見知らぬ人からもたくさんの祝福を受けて、ジルとクリステルは本当の夫婦になった。
「ふう……予想と違って賑やかな式になったな。ドレスを持ち歩けないのが勿体ないが……」
ドレスは、ジルが街の衣装店で借りてきたものだ。クリステルは衣装など要らない。持ち歩けないからと言うので、どうしてもクリステルのドレス姿が見たかったジルが借りる手配をした。
ドレスを見たクリステルは驚きつつも喜んだ。そして、ジルにも正装をするように頼んだ。クリステルの頼みを断らないジルは、自分の衣装も用意した。
「仕方ないわ。私達は宿屋暮らしだもの」
「いっそ家を借りるか?」
「定住しない方が良いんでしょ?」
「……そうだな……、結局アーテルさんと連絡はつかない。いつでも移動できるようにはしておいた方が良い」
「冒険にドレスは要らないわ! 着られただけでも嬉しい!」
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「ジルはとってもかっこよかったわ! すっごく似合ってた!」
そう言ってクリステルが褒めちぎるから、ジルは真っ赤な顔で俯いてしまった。そんな反応をするジルが可愛くなったクリステルは、更にジルを褒めちぎる。
恥ずかしさが頂点に達したジルがクリステルを押し倒すまでクリステルの褒め言葉は続いた。
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