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13.王位継承者は、隠す
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ヒューは、素早くジルの部屋に行き、依頼書を握りしめた。そこに、王妃を連れた国王一行が現れた。
「ヒュー、何をしておる。ここはクリステルを殺したジルの部屋だ。今から調査をする。無闇に物に触れるな。触った物は無いだろうな?」
「父上、僕も今来たところです。何も触れていません。ご安心下さい。クリステルとはほとんど話しませんでしたが、殺されるなんて残念です。だから……クリステルが何故死なないといけなかったのか知りたくて」
耳障りの良い言葉で誤魔化そうとするヒューだが、国王には通じなかった。
「だったら疑われるような行動は慎め。今からこの部屋を調査する。ヒュー、其方も同席せよ」
一刻も早く依頼書を処分したいヒューだったが、国王はヒューを離さなかった。
調査をしながら、クリステルを殺す事がどれほどの罪なのかを淡々と説明する国王に、恐怖を覚えたヒューは、依頼書を持っている事が怖くなった。
「王家の血筋は、今や私とヒューだけだ。ヒューよ、くれぐれも身体を大事にせよ。それから、今まで以上に自分を律するのじゃ。たとえ王族でも、犯罪を犯せば裁かれる。王位も剥奪じゃ。ヒューはそのような事は無いと思うが、万が一ヒューがクリステルの暗殺に関与していた場合、王位は継がせられぬ。まぁ、例え話じゃがな。私の子はもうヒューしかおらぬ。どうか、私にこれ以上子どもを失わせないでくれ」
「父上……心得ております。クリステルの為にも、僕は立派な王になります」
「そうか……おや? ヒューよ、何か手に握っておらぬか?」
「いえ、何も持っておりませんよ」
「あなた! あなた! ここになにか隠してあるわ!」
「何だと?!」
ヒューのピンチに、王妃が叫び声をあげた。ヒューは、国王一行が目を逸らした瞬間、目の前の暖炉に依頼書を放り投げた。
燃え尽きるまで……なんとか気が付かないでくれ……ヒューの祈りは通じ、しばらく国王達がヒューに視線を向ける事はなかった。
依頼書が灰になった事でホッとしている王妃とヒューは気がつかなかった。依頼書が偽物で、自分達に何人の影がついているのかを。
2人の行動は、複数の影が目撃しており、漏れなく国王に報告される。
「何も見つからぬな……。とにかくあの2人を取り調べよう。多少手荒な真似をしても構わぬ。そもそも、王族の暗殺は一族郎党死刑だからな」
「待って……あなた……あの2人はジルとは血縁関係はないの……」
「なんだと? では、ジルが私を謀ったという事か? しかし、王妃にジルと言う者は知っておるかと確認したであろう?」
「ジルは……拾われたの。だから、身内は居ないの」
「そうか……養子ではないのだな?」
「そんな手続きはしてないわ」
「ならば処刑は出来ぬな……。あいわかった。取り調べで無関係と分かれば解放しよう。ただし、影はクビだ。仕事をサボったのは事実だからな。それとも、奴らが出かけたのは大切な用事でもあったのか? 私に言えないような……」
国王は、そう言って王妃の目を射抜いた。王妃は、答える事が出来ず、ジルの父と兄は取り調べが済んだらすぐに解雇される事になった。
「ヒュー、何をしておる。ここはクリステルを殺したジルの部屋だ。今から調査をする。無闇に物に触れるな。触った物は無いだろうな?」
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「だったら疑われるような行動は慎め。今からこの部屋を調査する。ヒュー、其方も同席せよ」
一刻も早く依頼書を処分したいヒューだったが、国王はヒューを離さなかった。
調査をしながら、クリステルを殺す事がどれほどの罪なのかを淡々と説明する国王に、恐怖を覚えたヒューは、依頼書を持っている事が怖くなった。
「王家の血筋は、今や私とヒューだけだ。ヒューよ、くれぐれも身体を大事にせよ。それから、今まで以上に自分を律するのじゃ。たとえ王族でも、犯罪を犯せば裁かれる。王位も剥奪じゃ。ヒューはそのような事は無いと思うが、万が一ヒューがクリステルの暗殺に関与していた場合、王位は継がせられぬ。まぁ、例え話じゃがな。私の子はもうヒューしかおらぬ。どうか、私にこれ以上子どもを失わせないでくれ」
「父上……心得ております。クリステルの為にも、僕は立派な王になります」
「そうか……おや? ヒューよ、何か手に握っておらぬか?」
「いえ、何も持っておりませんよ」
「あなた! あなた! ここになにか隠してあるわ!」
「何だと?!」
ヒューのピンチに、王妃が叫び声をあげた。ヒューは、国王一行が目を逸らした瞬間、目の前の暖炉に依頼書を放り投げた。
燃え尽きるまで……なんとか気が付かないでくれ……ヒューの祈りは通じ、しばらく国王達がヒューに視線を向ける事はなかった。
依頼書が灰になった事でホッとしている王妃とヒューは気がつかなかった。依頼書が偽物で、自分達に何人の影がついているのかを。
2人の行動は、複数の影が目撃しており、漏れなく国王に報告される。
「何も見つからぬな……。とにかくあの2人を取り調べよう。多少手荒な真似をしても構わぬ。そもそも、王族の暗殺は一族郎党死刑だからな」
「待って……あなた……あの2人はジルとは血縁関係はないの……」
「なんだと? では、ジルが私を謀ったという事か? しかし、王妃にジルと言う者は知っておるかと確認したであろう?」
「ジルは……拾われたの。だから、身内は居ないの」
「そうか……養子ではないのだな?」
「そんな手続きはしてないわ」
「ならば処刑は出来ぬな……。あいわかった。取り調べで無関係と分かれば解放しよう。ただし、影はクビだ。仕事をサボったのは事実だからな。それとも、奴らが出かけたのは大切な用事でもあったのか? 私に言えないような……」
国王は、そう言って王妃の目を射抜いた。王妃は、答える事が出来ず、ジルの父と兄は取り調べが済んだらすぐに解雇される事になった。
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