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4.過去を悔いる【祖父視点】

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「お父様、ごめんなさい……助けて……」

嫁いだ娘から手紙が来た時、何故ワシはもっと調べなかったのだろう。
金が足りないのだろうと勝手に判断して、支援金を増やして済ませたのは何故だ。

答えは、ワシが愚かだったからだ。
我々が貴族として特権を享受しているのは、民を守るためだった筈なのに。

いつの間にか、民よりも自分たちの身分を守ることばかり考えてしまっていた。

あの頃のワシは、味方がおらず疑心暗鬼だった。

ワシの目の届かないところに、大事な娘を追いやってしまった。

娘の妊娠がバレないように。孫の出自がバレないように。そのことばかり考えていた。だから娘の手紙読んでも深く考えず、金で解決すれば良いと思ってしまった。

息子が……息子になった彼があの家に侵入して調査をして、命がけでワシに進言してくれなければ、大事な娘と孫は……。

「お父様、また泣いてるわ。どうしたの?」

愛しい娘が、ワシの涙を拭いてくれた。

事故に見せかけて死んだ事にして、ようやく娘を連れ戻せた。孫ももうすぐ息子と共に戻って来る。

ワシの身内は、娘と孫と新たに加わった息子だけ。孫は亡き妻に似て、賢くしたたかな子に育った。

「全て……全てに後悔している……」

「もう、いつまでも泣かないで。もうすぐルリィを連れてあの人が帰って来るわ。そしたら、みんな一緒に暮らしましょう」

「いいのか……ワシは……」

「いいの。ルリィを産めてとても幸せよ。でも、お父様に認めてもらう前に既成事実を作るべきではなかったわ」

「それに関しては、その通りだ。だが、そのくらい追い詰められていたのだろう。年頃なのに婚約は決まらず、周りに置いていかれ焦っていたのだろう?」

「ううん。わたくしは幼い頃からずっと彼が好きだったの。でも、身分が違うから諦めていた。だけど彼は諦めてなくて、お父様に認められる為に出世しようとしてくれたわ。だけど待てなくて……貴族としての価値が無くなれば、彼と結ばれると思ってしまった。彼を説得して、ルリィを授かった時は嬉しかった。けど、間違ってた。わたくしは政治を分かっていなかった」

「本当は結婚を認めたかったんだ。けど、無理だったんだ。すまない……」

「良いの。お父様の気持ちは分かってるから。彼に退職金まで出してくれたんですってね。おかげで、退職金を増やして彼がわたくしを訪ねて来てくれた。彼が来た後は毒を盛られずに済んだわ」

「毒なんて……許せない……」

「あの男はどのみち終わりよ。お父様からのお金がなくなれば破綻するわ。ルリィの幸せのためにも放置しましょ」

彼がいなければ、娘は生きていなかった。

報告を受けて、すぐに娘達を連れ戻そうとしたが彼に止められた。娘や孫を人質に取られたらたまらない。特にルリィは、あの男を慕っているようだからと。私は彼と相談して、娘と孫の受け入れ体制を整え、あの男から娘と孫を守る為に少しずつ使用人を入れ替えた。支援金を増やすと彼の予想通り、あの男は娘と孫に媚を売り始め以前よりも大事にするようになった。

心配だからと、彼は密かに屋敷に侵入して娘と孫を守ってくれた。

「ルリィは幸せになって欲しい。もう二度と、間違えたりしたくない……」

「お父様は、わたくしを事故にみせかけて殺すことも、閉じ込めておくことも出来たのにそうしなかった。どうして?」

「大事な娘にそんなことできるか! 遠くに嫁がせたのも……ワシのためでもあるが……噂話の餌食にしたくなかった。遠くの地で、幸せになって欲しかったんだ……」

「でしょ? お父様が毎月支援金を送ってあの男に圧をかけてくれたから、わたくし達は無事生きられたのよ。毒はすぐ効くものじゃなかった。ちょっとくらい大丈夫だったの。それにね、あの人が助けに来てくれた」

「だが……家に帰らずあんな女と……あんなクズに大事な娘を……」

「ま、そこは仕方ないわ。あの男にとって、わたくしは汚い妻だったんでしょうから。お父様はちゃんと話をして、受け入れたのはあの男なのに、金を餌に汚いものを押し付けられたと愚痴っているのを聞いちゃったのよね」

あっけらかんと笑う娘。
彼が訪れてくれなければ、今頃こんなふうに笑ってくれなかった筈だ。

一生かけて償うつもりだ。だから、ずっと一緒にいて欲しい。
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